「事例Ⅳ」で必須とされたCVP分析は近年ダークモードと言われ、過去問をいくら解いても初見問題が次々出てくる。そこを解く光がエクセル利用です。
数年遅れのパクリで知られる隣のハズしっぷりは有名ですが、以下どちらの解説を好むかでも明暗が分かれます。
わざと難しく説明 | 誰にでもわかる説明 | |
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従来、試験問題は単一の方程式を用いることで容易に損益分岐点の解答が導かれる形式であったが、近年は経営現場の多様な実態を反映した、複数要素が絡むシナリオ問題への転換が見られる。出題傾向は、単一の数値計算を超えて、各製品や事業領域間の相互関係を考慮した解析が求められるようになっている。 | ①初見問題の多様化 | 以前の試験では損益分岐点などシンプルな計算問題が中心で、「この売上があれば利益が出る」といった一つの方程式で解ける内容ばかりでした。しかし、近年は実際のビジネスの現場を反映し、複数の商品や事業が絡む実践的な問題が出題されるようになっています。 |
単純な数式による解法が適用できる範囲では、紙上の計算で十分に対応できるが、問題が複雑化するにつれ、多数のパラメータと条件の組み合わせによる計算が必要となる。このような状況下では、エクセルを用いた動的なシミュレーションが計算の正確性と効率性を飛躍的に向上させるため、実務でも広く活用されている。 | ②複雑な計算はエクセルで | 問題が複雑になると、数字や条件が増えて計算ミスが起きやすくなります。そこで、エクセルを使うと、数字を入力するだけで自動的に計算結果が出るため、複数のパターンを簡単に試すことができます。実際の業務でもエクセルはよく使われるツールです。 |
しかしながら、エクセルに依存する前に、その根底にある数理モデル及び基本的な方程式の論理的構造を十分に把握しておくことが不可欠である。基礎的な方程式の理解があってこそ、エクセルを用いた複雑な計算においても、適切なモデル構築と誤差検証が可能となり、最適な解答が導出される。 | ③方程式でも備える | ただし、エクセルを使う前に、基本となる計算方法や方程式の考え方を理解しておくことが大切です。基礎的な計算方法をしっかり学ぶことで、エクセルで作業を行う際にも、正しい計算ができるかどうかを自分で確認できるようになります。 |
過去問RTA 財務②】Ⅳ第2問CVP15マーク / エクセル利用でイライラ不要
つまり年々多様化するCVP出題を、過去問と同じやり方で解こうとするから芽が出ない。CVPが年々闇になるとき、スラスラ解けるエクセルを使うと光が見えます。
基本論点:CVP分析
CVP分析は、売上高、固定費、変動費、そして限界利益の関係を明らかにし、損益分岐点や安全余裕度を求める手法です。これにより、販売数量の変化がどのように利益に影響を与えるかを定量的に分析でき、企業の収益性や経営戦略の立案に活用されます。
こうなると10点満点
固定費・変動費、限界利益、損益分岐点、安全余裕度の各概念を正確に定義し、数式や図で関係性を明示、前提条件と限界を論じた上で実務への具体的応用が示すことができる。
当社は、当期の実績に基づいて次期の利益計画を策定している。当期の実績データは資料の通りである。
(設問1)
損益分岐点売上高として、最も適切なものはどれか。なお、計算の結果が割り切れない場合には、小数第1位を四捨五入すること。
最大のマストであるSBEP(損益分岐点売上高)を求める超基本問題で、筆算の練習に最適です。
目標とする1個当たり営業利益150円を達成する販売量として、最も適切なものはどれか。なお、計算の結果が割り切れない場合には、小数第1位を四捨五入すること。
「財務」計算問題は簿記組が必ず当てるため、正答率Bとは他科目のCランクに相当し、ここが合否の決め手に。筆算すると混乱するので、エクセル利用でスパッと解きます。

(設問1)
×ア 13,333,333円
×イ 15,000,000円
○ウ 22,500,000円
×エ 27,000,000円
(設問2)
×ア 20,000個
×イ 22,500個
×ウ 30,000個
○エ 36,000個
パターンで解ける基礎問題で、最初に「限界利益率=60%」を出す。すると固定費1,200÷0.6を分数で筆算すれば、○ウ2,000万円一択に。

G社の前期と当期の損益計算書は以下のように要約される。下記の設問に答えよ。 |
(設問1 ) 当期の損益分岐点売上高として、最も適切なものはどれか。 |

×ア 1,600 万円 ×イ 1,800 万円 ○ウ 2,000 万円 ×エ 3,000 万円 |
イエは×上昇→○下降、ウエは×改善→○悪化です。
(設問2) G社の収益性に関する記述として、最も適切なものはどれか |
○ア 損益分岐点比率が前期よりも悪化したのは、売上の減少による。 ×イ 損益分岐点比率が前期よりも悪化したのは、変動費率の上昇による。 ×ウ 損益分岐点比率が前期よりも改善されたのは、固定費の増加による。 ×エ 損益分岐点比率が前期よりも改善されたのは、変動費率の上昇による。 |
解き方は下図エクセル参照。150,000円と出してしまった場合は、生産数1,000個でなく販売数800個を使います。

当工場では、単一製品Xを製造・販売している。以下の資料に基づいて、下記の設問に答えよ。 |
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(設問1 ) 直接原価計算を採用した場合の営業利益として、最も適切なものはどれか。 |
×ア △ 30,000 円 ×イ 0 円 ○ウ 70,000 円 ×エ 110,000 円 |
固定費250,000円、限界利益率40%から求める。方程式0.4S=250,000円よりも、固定費÷限界利益率でエクセルします。
(設問2 ) 損益分岐点売上高として、最も適切なものはどれか。 |
×ア 400,000 円 ×イ 500,000 円 ○ウ 625,000 円 ×エ 800,000 円 |
ド定番CVPの知識問題です。やや細かいひっかけなので、誤答しても間違い箇所を覚え直せばOK。
× | →○ | |
×ア | 損益分岐点比率の逆数 | 1-損益分岐点比率 |
×イ | 変動費率 | 限界利益率 |
×エ | 損益分岐点売上高に目標利益を加算 | (固定費+目標利益)を限界利益率で除算 |
損益分岐点分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。 |
×ア 安全余裕率は、損益分岐点比率の逆数(→○)である。 ×イ 損益分岐点売上高は、固定費を変動費率(→○)で除して求められる。 ○ウ 損益分岐点比率は小さいほど赤字になるリスクが低い。 ×エ 目標利益達成のための売上高は、損益分岐点売上高に目標利益を加算(→○)して求められる。 |
基礎知識①:個別+総合原価計算
個別原価計算は、各製品ごとに発生する費用を追跡する方法で、特に少量多品種生産に適しています。一方、総合原価計算は、同質の大量生産品に対して平均的なコストを計算する手法であり、全体のコスト管理に活用されます。両者の違いや適用場面、計算の流れを理解することが、正確な原価管理や意思決定に直結します。
こうなると10点満点
個別原価計算と総合原価計算の定義、適用例、計算手法の違いを明確に示し、それぞれのメリット・デメリットが論理的に説明することができる。
以下の資料に基づき、原価に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

これが正答率Bになる? のは完全に簿記2級の問題だから。簿記未修の方にはC~Dランクに相当し、割り切って捨てないと「事例Ⅳ」が泥沼化します。
×ア 8 月に増加した売上原価は1,070,000(→○1,570,000)円である。
×イ 8 月末の仕掛品は760,000(→○360,000)円である。
○ウ 8 月末の製品は400,000円である。
×エ 9月に増加した売上原価は550,000(→○950,000)円である。

簿記2級・個別原価計算の基本問題です。「Ⅳ」では出ないので、苦手な方はパスしてOK。

以下の資料は、工場の2020 年8 月分のデータである。このとき、製造指図書#11の製造原価として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 |
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×ア 220,000 円 ×イ 228,000 円 ○ウ 270,000 円 ×エ 337,000 円 |
費用収益対応の原則により、完成して売上計上するまでは仕掛品参入するので、PL科目のアイウは×です。
建築物の設計・監理を請け負っている当社では、顧客から依頼のあった案件について建物の設計を行っている途中で、給料100,000 円および出張旅費30,000 円が当該案件のために費やされた。 この取引を仕訳する場合、借方科目として、最も適切なものはどれか。 |
×ア 役務原価 (←これはPL科目)
×イ 役務収益 (←これはPL科目)
×ウ 仕入 (←これはPL科目)
×エ 仕掛品 (←○BS科目を選ぶのが正しい)
誤答×アに誘導されやすいですが、一呼吸して落ち着き、営業外費用である○エを選びます。
原価計算における非原価項目として、最も適切なものはどれか。ただし、すべて正常なものであるとする。 |
×ア 売上債権に対する貸倒引当金繰入 (←盲点であるが一般販管費に含まれ、原価算入) ×イ 減価償却費 (←原価に算入) ×ウ 仕損、減損、棚卸減耗損 (←原価に算入) ○エ 支払利息 (←○営業外費用として原価算入しない) |
加工進捗度? 減損? 度外視法? 簿記の専門ワードが出てきた時は、苦手な方はスルーで構いません。
当工場の以下の資料に基づき、平均法による月末仕掛品原価として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、材料は工程の始点ですべて投入されており、減損は工程の終点で発生している。また、月末仕掛品原価の計算は度外視法によるものとする。 |
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×ア 70,400円 ×イ 81,000円 ×ウ 85,500円 〇エ 108,000円 |
基礎知識②:標準原価計算
標準原価計算は、あらかじめ設定された基準原価と実際に発生した原価との差を分析する手法です。これにより、企業は予算の策定や実績管理、コスト管理を効果的に行い、効率的な経営管理を実現します。予算編成のプロセスと連動し、経営改善のための差異原因分析を行う点が特徴です。
こうなると10点満点
標準原価の設定方法、実際原価との比較、差異分析を具体例とともに正確に説明し、予算編成および経営管理への応用が明確に示すことができる。
同じく工業簿記→標準原価計算→差異分析(労務費)の出題で、直接作業時間1,100時間を使う理由が説明できればバッチリです。

以下の資料に基づき、当月の直接労務費の金額として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、予定賃率を用いて賃金消費額を計算している。 |
【資 料】 1 .本年度の直接工の予定就業時間は 12,000 時間、直接工賃金予算額は14,400,000 円である。 2 .当月の直接工の直接作業時間は 1,100 時間、間接作業時間は 100 時間、手待時間は 200 時間であった。 |
×ア 1,200,000 円 ○イ 1,320,000 円 ×ウ 1,440,000 円 ×エ 1,680,000 円 |
標準原価計算の差異分析の出題は、R1材料費→R2労務費→R3売上高と連続出題されました。売上高は分析ボックスの描き方が少し変わります。

ある製品の販売予算が以下のとおり編成されており、第3 四半期(Q3)の実際販売量が1,600 個、実際販売価格が98,000 円であった。予算実績差異を販売数量差異と販売価格差異に分割する場合、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。 |
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×ア 販売数量差異1,000 万円(不利差異)と販売価格差異300 万円(不利差異) ×イ 販売数量差異1,000 万円(不利差異)と販売価格差異320 万円(不利差異) ×ウ 販売数量差異1,000 万円(有利差異)と販売価格差異300 万円(不利差異) ○エ 販売数量差異1,000 万円(有利差異)と販売価格差異320 万円(不利差異) |
簿記2級総合原価計算→標準原価計算(差異分析)の問題です。受験1年目の方はスルーで可、2年目の方は簿記2級を受けましょう。

当工場は標準原価計算を採用している。以下の資料に基づき、作業時間差異として最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、直接材料は工程の始点で全量投入している。 |
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×ア 不利差異: 8,400 円 ○イ 不利差異: 8,500 円 ×ウ 不利差異:109,200 円 ×エ 不利差異:110,500 円 |
応用論点:直接原価計算+簿記1級意思決定
直接原価計算は、変動費を中心に計算し、製品ごとの限界利益を明確にする手法です。これにより、経営判断に必要な情報が得られ、製品採否や投資判断といった意思決定が迅速かつ合理的に行えます。また、簿記1級業務的意思決定会計としては、直接原価計算に加え、標準原価や差異分析などの各会計手法を統合して、実際の経営判断に結びつけることが求められます。
こうなると10点満点
直接原価計算の計算方法と限界利益の導出、及び簿記1級業務的意思決定会計として各原価計算手法の統合とその意思決定への具体的な結びつけが論理的に説明できる。
当社では、製品の製造に当たり必要な部品Xを1 か月に300 個自製しているが、A工業から当該部品を1 個当たり19 千円で販売したいという提案があった。自製の場合と購入の場合ではどちらがいくら有利であるか。次月の予算に関する以下の資料に基づき、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

収録対象のR2より前の問題ですが、その3年後の「事例Ⅳ」第3問の出題で点差を分けました。「Ⅳ」で突如出題する前に、1次「財務」で必ず出題する掟があるので、簿記履修済の方は押さえておきます。

×ア 購入の方が200 千円有利
×イ 購入の方が1,100 千円有利
○ウ 自製の方が300 千円有利
×エ 自製の方が1,200 千円有利
ABCは計算出題ができるので、理論の土台も押さえます。
活動基準原価計算(ABC)に関する記述として、最も適切なものはどれか。 |
×ア ABC がいわゆる伝統的原価計算と大きく異なる点は、ABC が製造直接費(→○製造間接費)に焦点を当てていることである。 ×イ ABC で用いられる「活動」は、コスト・ドライバー(→○コスト・プール)と呼ばれる。 ×ウ ABC は、少品種大量生産型(→○多品種少量)の製造業に適した原価計算である。 ○エ ABC を意識した経営管理手法を活動基準経営管理(ABM)という。 |
当問の「機会原価」「埋没原価」「関連原価」は簿記1級の差額原価で学ぶ理論問題です。診断士向けのヘタクソ解説本で間違って覚えると痛い目に遭うので、これも初年度はスルーします。
A | B | C | |
×ア | 機会原価 | 固定原価 | 変動原価 |
〇イ | 機会原価 | 埋没原価 | 関連原価 |
×ウ | 限界原価 | 固定原価 | 変動原価 |
×エ | 限界原価 | 埋没原価 | 関連原価 |
次の文章の空欄A~Cに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 |
100万円のコストで製造した機械装置1 台に対して、G社とH社の2 社から、これを購入したい旨の引き合いがあった。G社は120万円、H社は130万円の価格を提示している。どちらかに販売すると他方を断らなければならないため、【A】はG社に販売したときは130万円、H社に販売したときは120万円である。100万円の支出原価は、どちらを選択しても変化しないため、【B】と呼ばれる。それに対して、【A】はどちらを選ぶかによって変化するため、【C】と呼ばれる。 |
当問はR4Ⅳ第2問(2)で問われた線形計画法(2条件セールスミックス)ですが、更に一ひねりした難問です。解き方として、複雑すぎる×エを後回しにしてアイウの改善(破線青・赤・緑)をするとマルA・B・Cの組み合わせでx、yを作ることができ、一番儲かるのがB→○イです。

ある工場では、3 台の機械を用いて2 種類の製品X、Yの生産が可能である。下表には、製品を1 単位生産するのに必要な各機械の工数と製品を1 単位生産して得られる単位利益、および現状で使用可能な各機械の工数が示されている。また、下図は、下表に示した各機械における使用可能工数の制約を図示したものである。 総利益が最も高くなる方策として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 |

×ア 機械Aの使用可能工数を現状から4 引き上げて6 とする。 ○イ 機械Bの使用可能工数を現状から4 引き上げて12 とする。 ×ウ 機械Cの使用可能工数を現状から4 引き上げて16 とする。 ×エ 機械Bの使用可能工数を現状から2 引き上げて10、機械Cの使用可能工数を現状から2 引き上げて14 とする。 |
以前から事例Ⅳで「出る」「出る」とされた線形計画法(LP)が、ついにR4第2問で出題されました。するとおベテがムキになって暗記するので、それをからかうように当面出ません。
ある工場では、4 台の機械設備を用いて2 種類の製品X、Yを生産することができる。下表には、製品を1 単位生産するのに必要な各機械の工数と製品を1 単位生産して得られる単位利益、および現状で使用可能な各機械の工数が示されている。また、参考として、下表に示した各機械における使用可能工数の制約を次ページに図示している。 総利益を最も高くする方策として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 |
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×ア 機械Aの使用可能工数を現状から4 引き上げて12 とする。 ×イ 機械Bの使用可能工数を現状から3 引き上げて21 とする。 ○ウ 機械Cの使用可能工数を現状から4 引き上げて28 とする。 ×エ 機械Dの使用可能工数を現状から4 引き上げて28 とする。 |
今日のまとめ
多様化する「Ⅳ」対策で過去問ばかり追いかけると、虫食い知識だらけになって使いにくい。そこで簿記2で基本を学び、1級意思決定会計を眺めておこうと決めるあなたが大好きです。