99%のムダを捨てて1%の本質を捉え、周囲が驚く高パフォーマンスを叩き出す「エッセンシャル思考」。年明けの合格発表待ちのあなたも、これから試験対策を始める方も、ドッキドキで見逃せない大型連載(全5回)のスタートです。

H事例Ⅰ

【経験が邪魔をする(Ⅰ)】過去問で見覚えのある問題に出遭ったら

過去問と同じ問題がピタリ出題される可能性はどれ位?

30歳台をピークに、40、50と坂を転がり落ちる様に合格率が下がることで知られる当試験。あぁ、

経験則が邪魔をするんだね?

はい、実務経験がモノを言う実際のビジネスと違い、「診断知識」の「適応力」を診たいのが「2次」筆記。過去6年分の「Ⅰ」出題知識を抽象化ブロックシートNo.で分類すると、キレイにローテーションされています。

「Ⅰ」出題者はレイヤー×フレームを自在に操り、
その掛け合わせで自由自在に作問できる。
よって「過去問ピタリ」の出題可能性はまず無い。

ところが、合格努力・実力の高い経験者ほど、過去問で見覚えのある答えに飛びつきドボンする「事故」。これは過去問を1つ解いた時の「脳の動き」は以下2タイプあり、個人の向き不向きがあるためです。

【+】足し算型記憶【×】掛け算型記憶
過去問の出題パターン+知識を1つずつコツコツ暗記過去問の出題を知識×パターンに分解し素早く掛け算

【経験が邪魔をする(Ⅰ)】過去問で見覚えのある問題に出遭ったら

過去問と同じ問題の出題可能性はゼロだが、
問われる知識は数年単位でローテーション。
そこで知識+出題を足し算型に暗記するより、
知識×出題パターンを抽象化し、掛け算して使う。

ただ前述の通り、自分の「脳の動き」が足し算⇔掛け算型のいずれかは、「1次」対策から積み上げた向き不向きが。そこで「掛け算型の記憶」は自分に向くか?「Ⅰ」の設問+出題の趣旨分析で、チェックします。

具体例1⃣経営戦略策定のフレームワーク

成長戦略×ローテーション

「事例Ⅰ」の第1~2マス目では、A社の歴史や強み、失策を振り返りながら、次の成長戦略を目指すために企業ドメインを再定義。

そしてその成長戦略の切り口は、アンゾフの成長ベクトルに始まり多角化にPPM、はたまた競争戦略の5フォースと、「1次論点」のどれかを当然の様にローテーションです。

H25第1問(1)H26第3問H27第2問
❶成長戦略
❹5フォース
❸PPM
22新製品開発プロセス
❷多角化
❿シナジー
【抽象知識化】
新規商品、新規市場×のシバリから「市場浸透」戦略と腹を決め、5フォースて分析すると安定回答に。
同じ成長戦略でも、第3問では「組織面の課題」に。PPMは浮かばなくても、研究開発型→資金需要なら答えられそう。非関連多角化→「分社化して遠心力」の経営セオリーでズバリ。ここはサービス問題。
A社は、ここ数年で急速に事業を拡大させている。以下の設問に答えよ。
(設問1)
A社のこれまでの成長を支えた、健康食品の通信販売事業を長期的に継続させていくために必要な施策として、新商品の企画や新規顧客を開拓していくこと以外に、
2度のターニング・ポイントを経て、A社は安定的成長を確保することができるようになった。新しい事業の柱ができた結果、A社にとって組織管理上の新たな課題が生じた。A社は、当初、新しい分野のプラスチック成形事業を社内で行っていたが、その後、関連会社を設立し移管している。
どのような点に留意して事業を組み立てていくことが必要であるか。80字以内で答えよ。それは、どのような課題であると考えられるか。100字以内で答えよ。その理由として、どのようなことが考えられるか。120字以内で述べよ。
【出題の趣旨】
A社の主力事業である健康食品の通信販売事業を長期的に継続させていくための具体的施策について、現行の取扱商品や既存顧客との関係の点から、基本的理解力・分析力を問う問題である。
2度のターニングポイントを経て研究開発型企業へと成長を遂げてきたA社が、事業領域の拡大に伴って、いかなる組織管理上の課題に直面することになったのかに関する分析力・課題発見を問う問題である。従前、社内の一事業部門として運営してきたプラスチック成形事業を、関連会社に移管している理由について、分析力・課題発見力を問う問題である。

具体例2⃣ ドメイン再定義(先代社長のミスで業績悪化)

VRIO分析×ドメイン再定義

「Ⅰ」のドメイン再定義で最も活躍するのはVRIO分析。ただ当然ここも捻りや変化があるので、VRIO分析100%傾注は危険です。

H24第2問H26第2問H28第1問(2)
経営資源
❾ドメイン
❽VRIO分析
❾ドメイン
❿シナジー
❾ドメイン
【抽象知識化】
Y社には断ったのにX社の要請で海外進出を決めた。自社でなく要請先の経営資源を分析する、ちょっと捻ったパターン。
昔作った製品が持続しない時は、VRIOのどこかに問題ありと疑います。一番あり得るのは、「誰かにパクられた」。非関連多角化は良くある失敗の代表例。非シナジーに加え「経営資源の配分不足」に言及すれば尚可。
A社は、Y社の要請による海外進出を実現していないが、X社の要請に応じて、2002年に東南アジアの新興国S国に初めて生産拠点を設けている。Y社の要請によるA社の海外進出が実現しなかったのはなぜか。X社の状況を考慮に入れて、A社は、創業期、大学や企業の研究機関の依頼に応じて製品を提供してきた。しかし、当時の製品の多くがA社の主力製品に育たなかったのは、精密加工技術を用いた取引先の製品自体のライフサイクルが短かったこと以外に、(設問2)
1990年代後半になっても売上の大半を学校アルバム事業が占めており、A社の3代目社長が推し進めた新規事業が大きな成果を上げてきたとはいえない状況であった。
考えられる理由を100字以内で答えよ。どのような理由が考えられるか。100字以内で答えよ。その要因として、どのようなことが考えられるか。100字以内で述べよ。
A社の主要取引先であるY社の要請による海外進出に応諾することがなかった状況について、分析力を問う問題である。精密ガラス加工メーカーであるA社とA社をサプライヤーとして採用している取引先との関係に焦点をおいて、創業期からA社が長期間にわたって主力製品を確立することができなかった理由に関する基本的理解力・分析力を問う問題である。印刷事業関連以外の新規事業が大きな成果を上げることのできなかった要因を把握する能力を問う問題である。

具体例3⃣採用・雇用

人材確保×雇用形態

「組織・人事レイヤー」への配点減が続くとはいえ、外せないのが人事の知識。基本的に時事問題になるほか、単なる知識でマス目とスコアを稼げるチャンスです。

だがどっこい、H26、28の最終マス目が「雇用の知識で助言問題」であった反面、H29第4問「助言」を知識で埋めた方は相当な減点を食らったと専らの噂です。特に近年、経験則に頼った所を新採点基準で狙い撃ちする傾向が強いので気を付けて。

H25第2問H26第5問H28第3問
(※最終問題)
❼経営資源
㉜非正規雇用のメリデメ
㉞新卒採用のメリデメ
⑲モチベーション理論
㉝中途採用のメリデメ
㊵再雇用・高齢者雇用
【抽象知識化】
H25は、最近では珍しい「雇用・意欲向上」を主テーマにした事例。「非正規社員を経営資源に」のストーリーを頭に浮かべ、確実に加点を。
「助言」「中小企業診断士として」と要求されたら、相手が詳しくない前提で「1次知識を書いていいよ」のサイン。同じく「助言」「中小企業診断士として」なので、頭に浮かんだ1次知識で回答。ただあくまで「与件の根拠が見つからない」ことが前提。

A社の従業員の大半を占める非正規社員の管理について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
A社は、同業他社と比べて時給が多少高くても、勤務経験がある中高年層の主婦をオペレーターとして採用している。
A社は、若干名の博士号取得者や博士号取得見込者を採用している。採用した高度な専門知識をもつ人材を長期的に勤務させていくためには、業績低迷が続くA社が有能な人材を確保していくためには、どういった人事施策を導入することが有効であると考えられるか。
それには、どのような理由が考えられるか。80字以内で答えよ。どのような管理施策をとるべきか。中小企業診断士として100字以内で助言せよ。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。
A社が非正規社員を有効な戦力として活用する理由について、基本的理解力・分析力を問う問題である。研究開発型中小企業としての強みを強化するために採用した、専門性の高い研究職従業員のモラールおよびモチベーションを高め、継続的に雇用していくための方策に関する助言能力を問う問題である。業績低迷が続く地方都市の中小企業が、事業を継続していく上で必要となる人材をいかに確保していくかについて、適切な助言をする能力を問う問題である。

今日のまとめ

掛け算型の記憶とは、過去問の「設問」「出題の趣旨」から共通性、法則性を見つけることだね?

はい、だから本試験で過去問と全く同じ出題は200%ない。経験でそう知るスクールは、過去問で見覚えのある答えに飛びつかないよう、こう指導します。

解答骨子を作りなさい。
1次知識にまず抽象化して考えなさい。
複数解釈をして安全回答を選びなさい。

ところが昨年の様に、受験側の国語技術が急発展。旧式なスクールの指導を飛び越し、初学者が70~80点のハイスコアを叩き出すのが当試験です。手取り足取りの指導より、こっちの方が良いのでは?

「2次」筆記は経験則が邪魔をする。
そこで過去問で見覚えのある問題に出遭ったら、深呼吸して別の答えを考える。

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