○代目社長の活躍
画像:TBS日曜劇場「陸王」
今すぐドラマ化してもおかしくない。試験とほぼ同時期に放映されたドラマ「陸王」を先取りして話題になった、H29「事例Ⅲ」若専務が送り出す期待のCNC木工加工機。
国家試験問題の作風がなぜ前年から急変したか、なぜまたエラくドラマティックになったのか。その謎を紐解きます。
【難化パターン】H29「Ⅲ」生産管理⇔〃業務トラップおさらい
具体例1⃣ SWOT
H29を除くH28まで、なぜ第1問は10点配点のSWOTだったか。要求知識ごとにタテ解きすると、こんな仮定が得られます。
- まず分析能力を試したい。
- ここで抜いたSWが、第2問以降の回答制約に。
- 製造現場は原則内向き。自分のSに気づきにくい。
H28第1問 | H27第1問(1) | H27第1問(2) |
❻SWOT ⑫生産計画 | ❻SWOT ⑪工程管理 | ❻SWOT ❿シナジー |
カット野菜業界におけるC 社の a 強みと b 弱みを、それぞれ40 字以内で述べよ | C 社では、現在取引している産業機械部品メーカーから新規に自動車部品の生産依頼があり、新規受注の獲得に向けて検討している。この計画について以下の設問に答えよ。 (設問1) C 社が自動車部品分野に参入する場合、強みとなる点を2つあげ、それぞれ40字以内で述べよ。 | 自動車部品の受注獲得は、C 社にとってどのようなメリットがあるのか 100 字以内で述べよ。 |
【出題の趣旨】 X農業法人時代の事業経過、およびC社の現在の事業内容を把握し、カット野菜業界におけるC社の強みと弱みを分析する能力を問う問題である。 | 鋳物工場として創業したC社の事業変遷、事業内容を把握し、自動車部品生産への新規参入の検討に際して考慮すべきC社の強みを分析する能力を問う問題である。 | C社の事業内容を把握し、自動車部品生産への新規参入によって得られるC社のメリットを分析する能力を問う問題である。 |
H26第1問 | H25第1問(1) | H24第1問 |
❻SWOT ❿シナジー | ❻SWOT ❺競争戦略 | ❻SWOT ⑥多品種少量・少量多品種生産 |
C 社の創業からの事業変遷を理解した上で、精密小型部品加工業界におけるC 社の強みと弱みを 60 字以内で述べよ。 | C 社では、横ばいで推移している業績を改善するため X 社のシェアが高い首都圏市場への参入を目指している。この課題について、以下の設問に答えよ。 (設問1) C 社が首都圏市場への参入で活用すべき競争優位性は何か、60 字以内で述べよ。 | X 社から加工部門を分離して創業したC 社の成長要因は何か、100 字以内で述べよ。 |
X社からの受注を拡大してきたC社の事業の変遷を把握し、C社の強みと弱みを分析する能力を問う問題である。 | C社と競合する企業の現状を把握し、その市場に参入するために必要な競争優位性を分析する能力を問う問題である。 | 食品スーパーの加工部門から独立して現在に至るC社の創業からの事業変遷を把握し、成長要因を分析する能力を問う問題である。 |
H24~H28まで、「Ⅲ」の第1マス目は必ず自社の強みSを抜いて配点10点。そのSが第2マス目以降の解決提案の方向性に。そのパターンが大きく崩れたのがH29です。
具体例2⃣生産管理
生産を管理・統制するにはまず計画が欠かせない。「Ⅲ」過去問では、日程(H24)、調達(H26)、工程(H27)の様にバランスよく出題されています。
H29第1問 | H28第2問 | H27第2問 |
⑫生産計画 ⑮生産管理の緩衝機能 | ⑯生産体制 ⑰材料費の低減 | ⑪工程管理 ⑫生産計画 |
CNC木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題と対応策を140字以内で述べよ | 現在 C 社が抱えている最大の経営課題は、収益改善を早急に図ることである。生産管理面での対応策を 160 字以内で述べよ。 | C 社の設備投資は、鋳造工程が優先されてきた。これによって生産工程に生じている問題点と、その改善策を 100 字以内で述べよ。 |
【出題の趣旨】 新規事業であるCNC木工加工機の生産販売を進めるために必要な生産管理上の課題を把握し、解決する能力を問う問題である。 | C社が収益改善を図るために必要な生産管理面での対応策を提案する能力を問う問題である。 | 現在まで行ってきた設備投資によって生じているC社の生産工程に関する課題を把握し、解決する能力を問う問題である。 |
H26第3問(2) | H24第2問 |
⑫生産計画 ⑱資材所要量計画 | ⑫生産計画 ⑩需要予測 |
X 社からの業務の移管に対応するためには、C 社の生産計画や資材調達計画を今後どのように改革していくことが必要となるのか、160 字以内で述べよ。 | C 社は創業から 20 年以上が経過して、顧客や新製品の増加によってさらに変革が必要となっている。図 1 〜図3なども参考に、C 社が直面している課題とその具体的改善策を 140 字以内で述べよ。 |
X社からの在庫管理業務および発送業務の移管に対応するために必要となるC社の生産計画や資材調達計画の課題を把握し、解決する能力を問う問題である。 | 食品スーパーから外食チェーンへと顧客数が増大し、さらに製品品目が増加しているなかで生じているC社の課題を把握し、そのための問題を解決する能力を問う問題である。 |
備考1. 具体的には,所定の品質 Q (quality) ・原価 C (cost) ・数量及び納期 D (delivery, due date) で生産するため,又は Q・C・Dに関する最適化を図るため,人,物,金,情報を駆使して,需要予測,生産計画,生産実施,生産統制を行う手続き及びその活動。
2. 狭義には,生産工程における生産統制を意味し,工程管理ともいう。
「生産管理」って何なのさ? それは受験参考書ではなく、JIS定義にズバリの答えが書いてあります。
つまり、営業活動・製品開発を終えたら、さあ生産開始!の前に「生産管理」を。ブロックシート⑫を使うと、計画~統制までタテヨコのマスにピタリと収まります。
対象 | 計画 Plan | 手配 Do | 統制 See |
日程 | 日程計画 | 順序指示 | 進度管理 |
物 | 調達計画 | 移動指示 | 現品管理 |
工数 | 工数計画 | 作業指示 | 余力管理 |
※ニチ子と重代
あれ、覚えてないな。そんな時は当試験名物の「語呂合わせ」で乗り切ります。
ニ:にってい計画 チ:ちょうたつ計画 子:こうすう計画 | シ:進度管理 ゲ:現品管理 ヨ:余力管理 |
具体例3⃣ Q品質管理
Q品質悪化の設問では必ずどこかに原因があり、その指摘+具体的改善策で加点されます。
もっとも診断士が指摘できるレベルの品質問題を起こすC社では話にならず、品質知識を過度に深追いする必要はないはず。
H28第3問 | H28第4問 | H26第2問 |
㉓品質管理 ㊽特性要因図 | ⑩需要予測 ㉓品質管理 | ㉓品質管理 ㉚設備保全 |
C 社では、クレームを削減する改善活動を計画している。このクレーム改善活動を最も効果的に実施するために、着目するクレーム内容、それを解決するための具体的対応策を 120 字以内で述べよ。 | C 社社長は、経営体質の強化を目指し、今後カット野菜の新事業による収益拡大を狙っている。またその内容は、顧客からの新たな取引の要望、および C 社の生産管理レベルや経営資源などを勘案して計画しようとしている。この計画について、中小企業診断士としてどのような新事業を提案するか、その理由、その事業を成功に導くために必要な社内対応策とともに 160 字以内で述べよ。 | C 社の切削工程で問題視されている加工不良率の増加について、その改善を図るために必要な具体的対応策を 100 字以内で述べよ。 |
【出題の趣旨】 C社の生産現場の課題を把握し、クレームを削減する改善活動を最も効果的に実施する方法として、着目するクレーム内容とその解決策を提案する能力を問う問題である。 | C社の顧客動向など外部環境を把握し、今後野菜の加工事業を強化して収益拡大を図るために必要な戦略について、助言する能力を問う問題である。 | C社の切削工程の作業方法や設備メンテナンス方法の課題を把握し、問題視されている加工不良率を解決する能力を問う問題である。 |
生産業務(オペレーション)レベルの課題の切り口ならまずQ・C・D。3つ全てが同時に悪化したら手に負えないので、通常はD(短納期)、Q(品質)のどちらかが出題されます。
具体例4⃣ D納期管理
【メモ】
一口に「納期管理」といえど、⓵自動車メーカーからズバリ要求(H27) ②生産情報システム面からムダを改善(H25) ③QCDの一つとしてしれっと加える(H24)など、いくつかパターンがあります。
これを本番中にいちいち考えずに済む様、事前にパターン化しておく。それが「事例の外段取り化」です。
H27第1問(3) | H25第2問(1) | H25第2問(2) | H24第3問(2) |
㊱トヨタ生産方式の改善手段 ㊺納期管理の考え方 | ㊲生産情報システム ㊺納期管理の考え方 | ㊲生産情報システム ㊺納期管理の考え方 | ㊺納期管理の考え方 ㊲生産情報システム |
自動車部品の受注獲得には、自動車業界で要求される短納期に対応する必要がある。そのためにはどのような改善策が必要なのか、100 字以内で述べよ。 | C 社では、顧客からの問い合わせに迅速に対応するため、また、短納期化に対応するため、技術部内の情報の共有化や業務の効率化を図る計画がある。この計画について、以下の設問に答えよ。 (設問1) 技術部内で共有化が必要と考える具体的情報名を 80 字以内であげよ。 | 技術部内の業務効率化を図るために必要な具体的改善内容を 120 字以内で述べよ。 | Y 社から要求されているセントラルキッチンとしての機能を果たすためには、C社の日常業務上どのような情報が必要になるか、100 字以内で挙げよ。 |
短納期を要求される自動車部品生産への新規参入の検討を行っているC社の生産体制に関する課題を把握し、その改善策を提案する能力を問う問題である。 | C社の技術部内での課題を把握し、顧客問い合わせに対する迅速化と短納期化に対応するために、技術部内で共有化が必要な情報を分析する能力を問う問題である。 | C社の技術部内での課題を把握し、顧客問い合わせに対する迅速化と短納期化を目的に業務効率化を図るための改善方法を分析・提案する能力を問う問題である。 | Y社から要請されているセントラルキッチン業務を円滑に推進するために、C社に求められる生産や管理に必要な情報を分析する能力と提案する能力を問う問題である。 |
短納期対応が、「事例 Ⅲ」ではなぜ大事?意外と忘れがちですが、自動車メーカーを筆頭とする顧客が要求するため、Q品質・Cコストに加え「短納期対応」が企業としての競争力になるからです。
今日のまとめ
困ったな、こんな記事が出てくると、「2年目上級生」の先発優位など形無しです。
それは個性で異なる「解答プロセス」ではなく、客観性のある「国語表現」の基準を教えてくれるから。こんな記事なら、標準化が大好きな「Ⅲ」出題者も歓迎でしょう。
いや待て、この「国語表現」をフルにやっても時間が足りない。そこで80分に間に合わせる短納期化と、そのための文章処理能力強化の勝負が、今から始まる。10月にやることは、まだたっぷり残っています。
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