H事例Ⅰ

【「Ⅰ」89点答案座談会】採点基準の進化とは

89点答案が見つかると、合格者を総入れ替え。

平均60点で受かるのに、開示89点(+29点ボーナス)とはどんな答案? ①他が平均50点でも合格させたい採点者のお気に入り ②どうせ合格ならいっそ見せ筋ハイスコア。きっと①⇔②のどちらか、あるいはその両方ってトコでしょう。

②見せ筋説に立てば。出題側の狙いは、その再現答案をネットに流出させ、合格者層(答案作成スタイル)を総入れ替えすることにあるのでは。ではさっそくどうぞ。

H30「事例Ⅰ」開示89点再現答案(Tochiro様)

※本人のご好意による提供です。お手数でなければ「もらっていくよ」「参考になった」「俺の答案の方がマシ」。賛否を問わず、ぜひ一言コメントをお願いいたします。

【「Ⅰ」89点答案座談会】採点基準進化と合格者の総入れ替え

さて「89点答案」を前に腕まくり。「事例Ⅰ」の旬な話題を、新旧4名の診断士による座談会形式でどうぞ。

【前半の部】「事例Ⅰ」を得意化する事前準備

1⃣自己紹介

司会F:診断士試験の合否を最初に占う「事例Ⅰ」を、最初に得意化できないか。そこで今日は開示89点答案を題材に、まず自己紹介からお願いします。

きゃっしい(C):診断士試験合格後に書いた「一発合格まとめシート」を、こちらのサイトで紹介いただいたご縁があり、今日の座談会を企画しました。産休明け後の職場では、副業可の就業形態とし、診断士活動にも力を注ぐ予定です。

Tochiro(T):受験回数は「1次」4回、「2次」3回で、「2次」スコアは238点、239点、271点の順でした。「2次」2回不合格の原因は、「事例Ⅳ」が39→41→64点の順だったことで、逆に「事例Ⅰ」は70→70→89点の稼ぎ頭になりました。

ぱおーん(P):私は5年以上の受験歴です。合格した今年はLECに通い、スコアは72、64、65、54の計255点です。

F:実務補習を終えると、いよいよ診断実務です。診断士になって変わったことを教えてください。

T:本業では商業不動産の立地診断をしています。実務補習を通じて、診断士には噂通り優秀な方、何事にも意欲的な方が多いと感じました。

P:リース会社の経理職、新規事業開発に携わってきました。一番変わったのは、土日のスケジュールが診断士関係でほとんど埋まってしまうことです。

2⃣試験対策の進め方とそのメリット・デメリット

国語派、知識派どちらでも240点なら届く。国語+知識を両立すれば260点に届く。

F:試験対策の進め方と、そのメリ・デメを教えてください。

C:TAC通学のストレート合格です。おカネと時間がかかるのがデメリット。色々な方と会えることでモチベーションを上げたり、講師に生質問できることがメリットです。

T:全て独学で、1回目H27年の「1次」はTACスピテキだけで450点で合格。その年は「2次」を受けず、H28~H30までの3年間は、独学で「2次」対策を続けました。

独学でも、今はスタプラを使って学習ペースを保てます。また「2次」答案にスクールの色を出さない。つまり採点者の印象が悪い見飽きたテンプレ答案を避けるメリットがあると考えました。独学のデメリットは、自分の答案を客観的に評価してもらえる機会が少ないことです。

P:・・・・・。
※当サイト注:ここでPさんPCがトラブり、音声を送信できず。TV会議のチャット機能で発言いただきましたが、残念、メモに残せませんでした。

F:Tさんの238→239→271点合格には、周囲の関心が高そうです。「2次」への取り組み方を教えてください。

T:「2次」の1年目(238点)は国語スキル重視、2年目(239点)は知識重視、3年目(271点)は国語と知識のバランスを重視しました。1年目に基本にした参考書は「2次試験 事例攻略のセオリー」で、ネットのマンガ講座も参考にしました。2年目はその真逆で、レイヤーで知識の枠を先に固め、「1次」知識を都度書き込む「知識シート」の自作に注力しました。

つまり、国語重視⇔知識重視のどちらでも、240点前後のスコアは取れて合格できる。そして両者を上手にバランスさせると、確実ハイスコアに手が届くのだと考えます。

F:スコアの伸びから見て、説得力のある意見です。一方で点が伸び悩んだ「Ⅳ」はいかがでしたか。

T:「Ⅳ」に不得意感はありませんが、捉え違いをしたり、H29は連結で唖然としたりと、相性の悪さがありました。

F:「Ⅳ」は今後も計算から記述へのシフト、つまり理論重視が続くと思われ、ここは通学に比べ独学が不利な点です。

3⃣診断士合格に必要なスキル・スペック

学歴信仰都市伝説の背景は、どうやら知識(1次)+国語(2次)の両立性。

F:「2次」出題傾向と採点基準の進化で合格者が入れ替わったことから、従来の「メソッド」「ノウハウ」が急に廃れ、「国語の試験」「地頭やセンスの勝負」などの見方が広まっています。ここで先入観を一旦離れ、客観的な視点で診断士合格に必要なスキル・スペックを挙げてください。

C:何を聞いているか不明な設問が無くなる一方、設問の構成をわざと変えたり、根拠の選び方で答えが割れるような作問技術が進み、事前準備だけでは通用しにくい試験になっています。そこで誰かに教わるのでなく、自分で読み方・書き方を組み立てる、「国語の素養」がある方が有利になります。

国語力とは、特定のやり方で伸ばすのではなく、その方が蓄積してきた素養です。特に初学者の方は、挑戦初年度の「2次」対策では、国語力を伸ばす時間は足りないと認識しておく方が良いでしょう。

T:「2次」は学習時間とスコアが相関しないと言われます。でもそれは「2次」に限った話で、「1次」対策で知識をつける時間はスコアに比例します。私の1年目のように知識軽視でも「1次」420点はクリアできますが、そこで手抜きをした分、「2次」で受かりにくくなる覚悟が必要です。

C:学歴信仰の話が最近よく出るのは、「大学入試センター試験」のように6~7科目を万遍なく鍛える必要性と考えると、納得がいく点はあります。

F:同じマーク試験でも、センター試験は教科書通り、診断士「1次」は幅広いビジネス実務を扱う差があります。だから大学入試ノリのテキスト暗記をすると知識がパンクしてドボン。取扱い科目が広がるほど、暗記の仕方で差がつきます。

T:「国語」と「知識」の両方を60点にすると、合格実力です。両方70点にすると、確実合格実力でしょう。国語力を具体的に言えば、「イノベーション」と言われたら、反対語「保守的」、類義語「リノベーション」をすぐ挙げるような、「語彙力」があります。

また「知識」をテストに例えると、「外段取り化」「ECRS」など。自分の「2次」解答手順を「1次」知識で裏付けておくと、ブレにくくなります。

4⃣H30「2次」で起きたイノベーション

セカンドインパクト:アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」劇中での架空の大災害

F:診断士試験の合格者層をガラリと入れ替えた。ご本人の前ですが、だいまつの【永久保存版】きゃっしいの解法実況の2つがそう評されるのは、「わかりやすい文章で、誰でも使える」点が大きいと聞きます。実際の受験者からの反応はいかがでしたか?

C:2人で競い合うことで(笑)、1人ではとてもできなかった内容をブログのこんな記事にできました↓。

「あの記事がきっかけで合格しました」と声を掛けられると、こちらも嬉しくなります。

T:既に合格実力をつけた方には、これら一連の記事はセカンドインパクト級の衝撃でした。 つまり①開示高得点答案とは読みやすく、②それを書く力の鍛え方が紹介され ③採用したらホントにスコアが伸びた。

「2次」対策メソッドといえば、わかりにくく難解なほど珍重されるものと思っていましたが、自分の思考手順をスッキリ単純化し、誰でも習得できる様にした。これは本当に驚きです。

F:ヒトの思考は難しいのですが、一度文章にすると誰でも採用・工夫・改善できる。その影響度を考えると、ラディカル・イノベーションよりセカンドインパクトの方が上手な例えですね。

5⃣「与件のコピペ解答」の誤解を無くす

国語の「読み書き」のうち、もう「書く」では差がつかない。与件文を「読む」⇔「探す」の違いが点数差。

F:前半最後のテーマは、「与件のコピペ解答」を誤解なく表現するには?です。つまり①与件表現を言い換えず使う方が採点ブレのリスクが少ないとわかっていても、②マス目が足りず勝手な言い換えやキーワード解答に走ってドボン。それをどう回避するかです。

C:「与件コピペ」の必要性や考え方はこちらに詳しく書きました。

点数が入りやすい「与件コピペ回答」には、コピペ対象の言い回しを選んだり、不要な根拠を外す絞り込みが前提です。そこで与件文とは「読む」のでなく「探す」。つまりこの設問要求ならこんな根拠や言い回しが「ある筈」と先に推定し、それを与件で探します。

逆に「国語の試験」を「読解力」と捉え、知識のシバリを入れず、与件文を国語読みするスタイルもあります。すると試験時間が足りないうえ、使いたい根拠だらけで絞れない状況になりがちです。

T:書き出し(主語)をコピペし、結論(述語)に知識を使います。字数感覚を掴めば、100字中コピペに何字使うかも事前に決まります。コピペ箇所の優先度は、設問文から抽象化した「1次」知識で判断できます。「切り口集」「フレーズ集」を使いたい方は、帰納的にひたすらかき集める他に、演繹的な手段→効果のつながりで体系化しておくと、根拠の選び方が安定します。

P:仮説力でどうでしょうか。受験経験が増え要求解釈や設問分析のスキルが高まると、これもやはり設問文を読んだ時点で、使いたい根拠が浮かびます。それを与件で「拾う」手順にしました。

F:ありがとうございます。読み書きの「書く」がコピペ+知識の述語で安定すると、争点は「読む」に絞れます。このとき①知識・レイヤー・抽象化で根拠を「探す」か、②単に与件を「国語読み」するかの違いと考える。すると後で出てくる「80分では間に合わない」につながります。

T:根拠の選び方では、マーカーの使い方でも差がつきます。1年目に「国語読み」する時は、第1~5問に分けて5色のマーカー塗りをしましたが、2年目で知識重視に変えた時は2色ボールペン使用に戻しました。これは「事例Ⅰ」では、環境分析→ドメイン設定までが重要と考えた時、設問別の塗分けが邪魔に感じたためです。

高得点答案ほど読みやすい。だから誰でも真似できる。

昨年起きた合格者総入れ替えの「セカンドインパクト」。その原因はどうやら「目を瞑っても再現できる、ハイスコアの高再現性答案」でした。ところが早くもそれを上回ったのが、「アドリブ感のブレを意図した、再現性6~7割のハイスコア答案」。

H30「事例Ⅰ」開示89点再現答案(Tochiro様)

↑お手数でなければ、「もらっていくよ」「俺の答案の方がマシ」。ぜひご感想をお聞かせください。その一言が、今年の試験を変える・・かも?

【後半の部】「事例Ⅰ」の本番対応

では昨年の「Ⅰ」79点ホルダーと今年の89点ホルダーが対談するとどうなる? 少し意外な展開が待っていました。

日時:2019年3月7日(木)20:00~
場所:TV会議
パネラー:Tochiro氏(トチロー、T)、ぱおーん氏(P)
ゲスト:きゃっしい氏(C)、司会:ふうじん(F)

6⃣「事例Ⅰ」の再現答案、再現度、開示スコア

再現答案の再現性って、どうなのさ?

司会F:座談会後半は、開示89点、72点の再現答案をベースに、加点された箇所、失点した箇所を明らかにします。

T:今回示した再現答案の再現度は、60~70%。それはいかにもプロ感漂うテンプレ解答は採点者に嫌われると考え、アドリブ感を出すために意図的にブレ幅のある解答を書いたためです。第1~4問を通じそこそこ加点される内容ですが、89点になると、実力以上のスコアです。そこで、個々の設問の実得点以外に、「全体の一貫性」などの、特殊な加点要素があるのではと考えます。

P:第1~3問までの4マスは、8~9割の安定した出来と再現性です。難問の第4問はスコアも再現性も5割程度です。

7⃣易問 第2問(1)(2)の具体的処理

80分で解けない試験では、5問全てに全力投球するとドボン。最初にやるのが得点期待値順。

F:80分では間に合わない試験であり、得点期待値の高い易問から解くことがセオリーとされます。H30「事例Ⅰ」については、第2問(1)(2)が易、第1、3問が勝負所、第4問が難問と考えて良いでしょうか。

C、T、P:はい。

T:第2問は(1)(2)ともコピペで処理できます。(設問1)はファブレス企業が最終消費者向け製品の販売に人手は割けないことを考えれば、技術者中心の社員構成、研究開発の重視など、根拠を使って編集するだけです。同じく(設問2)も製品売切り⇔消耗品継続のコピペ以外になく、後は編集するだけです。

F:ここで時間をロスせずスッと書くことも、ハイスコアへのコツですね。

8⃣勝負所 第1問、第3問の具体的処理

この問題は勝負所。そこで要求解釈をもう一段丁寧にし、根拠のコピペ+「1次」知識で結ぶ。

T:第1問は「競争戦略の視点から」とシバリがあるので、「大手との競争回避」「ニッチ市場」を使い、A社が現在まで成長してきた理由を「1次」知識を使って示せば合格点です。

逆に第3問「組織改編の目的」は、機能別組織とチーム制の違いを混同して、やや失点気味です。人材育成の視点から「コア人材」を挙げましたが、スクール模範解答のような「事業承継」「後継者育成」の点には、試験中は気がつきませんでした。

9⃣難問~確実合格への勝負所 第4問の具体的処理

難問第4問の理想はスクール解答。現実的には浮かべた根拠の乱れ打ち?

F:最後はしばしば難問になる、最終マス目の第4問です。初学者はここは捨て問とし、「根拠を適当に殴り書きして解いたフリ」がセオリーですが、実力十分経験者は他の設問で時間を浮かし、ここで勝負を賭けるそうです。

T:第1~3問までの解答時間を削る基本は、手順の外段取り化です。やり方は人により異なってきますが、使う知識を事前に体系化することで、知識選びの判断に時間をかけたりミスを減らすのは、誰でもやることでしょう。

F:この点はスクールの解答技術が進んでいて、この記事で紹介したスクールA解答速報は、独創性・チャレンジ精神の2ワードをコピペしながら、組織学習の「1次」知識に適切に紐付けしており、ぜひ自分も書いてみたいと思わせる完成度です。

C:独創性から「高次学習」を引き出す所には感心します。また誰が解いても時間が足りない点で、外段取り化を進めることは同感です。きゃしいの解法実況中継では、与件の言い回しをコピペ乱打するやり方を紹介しましたが、幸の日も毛深い猫の様なフレームワークを用意しておくと、短時間で使える言い回しを拾いやすくなります。

🔟結び

F:ありがとうございました。最後にまとめと、今年受験する方へのメッセージをお願いします。

C:「事例」の出題傾向や採点基準は年々進化しますが、特に「事例Ⅰ」が求める本質的な点は変わりません。つまり経営戦略から企業ドメインを再定義し、全社戦略に基づく組織設計と組織学習を進めていくストーリーを頭に置けば、「事例Ⅰ」への対応力はすぐ上がります。ぜひ「事例Ⅰ」を最初に得意化してください。

T:「思いは手法の上にある」と考えます。特に受験期間が長引くと手法に意識が傾きがちですが、なぜ学習を続けるかの意欲が先にないと、結果は出しにくいでしょう。「2次」試験には3年掛けましたが、1年目は国語重視、2年目は知識重視、3年目はその両方と意識を変えた所、その通りのスコアになったと考えます。

事前準備と外段取り化は有利な武器ですが、手法だけに捉われず、本試験当日にはフラットな気持ちで事例に向かうような心構えを、ぜひお願いします。

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