H事例Ⅰ

【5年25題収録】事例が複数解になる最新事情 / 事例ⅠでもⅢでもマーケ寄り

ホンモノ試験は、ふぞが決めつける採点基準やノウハウの真逆に動く。その前提で、複数解があり得る事例Ⅰ~Ⅲの最終まとめに入ります。

Q
少し気を利かせてネットを漁れば、試験情報は好き放題に手に入る時代。お受験サークル=情報を自ら取捨選択すらできない情弱の隔離専用とはよく言った?
A

そして最新R5の事例Ⅰはまさかの蕎麦屋のマーケ事例に。かなりの作問変化に関わらずそれなりに解けたとされる理由を、生成AI視点で3つ説明します。

①第2問~第4問(1)は実務PMIの知識で正解

第2問~第4問(1)において、PMIに関する実務知識をそのまま応用できたことが挙げられます。これは受験者が習得していた実践的な経営統合の手法や問題解決のアプローチが、問題解決に直結しやすかったと考えられ、最近は試験より世間と言われるように、試験が現実のビジネス状況に追いつこうとすることが今年の解きやすさに寄与した可能性があります。

②第4問(2)は食べ歩きのマーケ解答で正解

最後の事業展開への助言問題がターゲット+HOW要素のダナドコ解法で解けたことも、当てやすさにつながったとされています。これは、受験者が事例ⅠやⅡのクロスオーバーを予め意識することで、過去問で得られた答に限らず解答できるようになったことを示唆しています。問題の設定が実務に即しており、必ずしも人事施策の列挙を求めることがなくなったため、より実践的な経験を持つ方が得点しやすくなった好事例になっています。

③第4問(1)PMIの実行者は経営者⇔接客リーダーどちらも可

第4問(設問1)では、経営者と現場責任者のどちらがPMIを主導すべきかを問われましたが、この場合は両方とも正解になります。これは、経営統合の成功には経営者と現場責任者の連携が不可欠であり、主導権が一方にあると決めつけるより、両者の柔軟な協力体制が有効になっていることを示しています。ここでスクール独特の決めつけ解答でなく、受験者の実務感覚をそのまま活かせる出題がされた好事例と言えるでしょう。

【5年25題収録】事例が複数解になる最新事情 / 事例ⅠでもⅢでもマーケ寄り

コロナ禍のR3以降は、事例Ⅰの助言問題が目立って増えた? その最大の理由は、①環境変化がさらに加速する上、②デジタルネットワークで瞬時に社内情報が共有されるようになり、③ワンマンな中小企業経営者への依存度がおっきく下がるためです。

R5Ⅰ第4問(1)PMI実行者はどちらも正解
①当問の意図は「受験者がどう書くか」の調査にあり、②こぞって経営者を挙げるスクール解答に対し上位5%は接客リーダーを選び、③両者の違いを確かめてR6はより意欲的な作問になる。(100字)

コロナ禍前と異なり、デジタルな情報発信が進む現代は、あらゆる経営トレンドが猫でもわかる。診断士受験の中核を占めるミドル層の願いは、「頼むからワンマン社長は黙って座っていて欲しい」です。

※中小企業からのし上がったワンマン社長がダメダメ経営を繰り返す事例は、いきなりステーキに限らず動画にダダ溢れしています。

そして事例Ⅰはマス目の書き方=構文を先に決めてしまえば解答しやすい。2015年得点開示以降の進化を設問タイプ別に読み解きます。

第1問の王道 全社戦略×情報整理

Q
(R1第1問)A社長がトップに就任する以前のA社は、苦境を打破するために、自社製品のメンテナンスの事業化に取り組んできた。それが結果的にビジネスとして成功しなかった最大の理由は何か。100字以内で答えよ。
(R2第1問(1))以下は、老舗蔵元A社を買収する段階で、企業グループを経営する地元の有力実業家であるA社長の祖父に関する設問である。各設問に答えよ。A社の経営権を獲得する際に、A社長の祖父はどのような経営ビジョンを描いていたと考えられるか。100字以内で答えよ。
(R3第1問)2代目経営者は、なぜ印刷工場を持たないファブレス化を行ったと考えられるか。100字以内で述べよ。
(R3第3問)A社は、現経営者である3代目が、印刷業から広告制作業へと事業ドメインを拡大させていった。これは、同社にどのような利点と欠点をもたらしたと考えられるか、100字以内で述べよ。
(R4第1問)A社が株式会社化(法人化)する以前において、同社の強みと弱みを100字以内で分析せよ。
(R5第1問)統合前のA社における①強みと②弱みについて、それぞれ30字以内で述べよ。
A

(R5第1問解答例)
①蕎麦に集中した高いサービスに加え、自ら問題解決できる組織風土。(30字)
②原材料高騰で収益が圧迫され、顧客高齢化が進み新規開拓が必要。(30字)

事例Ⅰ第1問で、「理由は」「利点は」一点張りで解答できたのは昔の話。R3の作問者交代以降年々マーケ寄りになり、スピード勝負が求められます。

組織構造⇔行動のどこかが変?:組織×情報整理

Q
(R1第2問)A社長を中心とした新経営陣が改革に取り組むことになった高コスト体質の要因は、古い営業体質にあった。その背景にあるA社の企業風土とは、どのようなものであるか。100字以内で答えよ。
(R1第5問)A社長は、今回、組織再編を経営コンサルタントの助言を熟考した上で見送ることとした。その最大の理由として、どのようなことが考えられるか。100字以内で答えよ。
(R2第1問(2))A社長の祖父がA社の買収に当たって、前の経営者と経営顧問契約を結んだり、ベテラン従業員を引き受けたりした理由は何か。100字以内で答えよ。
(R2第2問)A社では、情報システム化を進めた若い女性社員を評価し責任者とした。ベテラン事務員の仕事を引き継いだ女性社員は、どのような手順を踏んで情報システム化を進めたと考えられるか。100字以内で答えよ。
(R3第2問)2代目経営者は、なぜA社での経験のなかった3代目にデザイン部門の統括を任せたと考えられるか、100字以内で述べよ。
(R5第3問)A社経営者は、経営統合に先立って、X社のどのような点に留意するべきか。100字以内で助言せよ。
A

(R5第3問解答例)A社は、①駅付近での競争激化によりX社の客数や売上が減少し、②店内の担当を横断する意思疎通をX社経営者が担って横のつながりが少なく、③日々のルーティンにとどまる仕事のきつさから離職率が高い点に留意する。(100字)

当問は「どのような点」に注目すれば情報整理に、「助言せよ」にひっかかると助言になってしまう。設問文の言い回しでひっかけてくる初級のトラップです。

★コロナ禍後の新傾向★=全社戦略×助言

Q
【期待効果】
(R1第3問)A社は、新規事業のアイデアを収集する目的でHPを立ち上げ、試験乾燥のサービスを展開することによって市場開拓に成功した。自社製品やサービスの宣伝効果などHPに期待する目的・機能とは異なる点に焦点を当てたと考えられる。その成功の背景にどのような要因があったか。100字以内で答えよ。100字以内で述べよ。
(R5第2問)A社の現経営者は、先代経営者と比べてどのような戦略上の差別化を行ってきたか、かつその狙いは何か。
【助言】
(R4第3問)A社は大手中食業者とどのような取引関係を築いていくべきか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
(R5第4問(1))今後、どのような事業を展開していくべきか。競争戦略や成長戦略の観点から100字以内で助言せよ。
A

(R5第4問(1)解答例)A社は、①競争上はX社の競合との価格競争を避けて商品やサービスの差別化をし、②成長上はX社の仕入先を通じて地元産の高品質な原材料を確保し、③地域の食べ歩きを目的とする来訪者を取り込む事業展開をするべき。(100字)

「どのような○○」を聞く時、それが過去なら「期待効果」で、ミライが対象なら「助言」。近年全社戦略の助言を求めるようになったのは、アフターコロナにおける出題側の手探り感も考えられるな。

ゆで蛙な組織に行動助言:組織構造/行動×助言

Q
(R3第4問)2代目経営者は、プロジェクトごとに社内と外部の協力企業とが連携する形で事業を展開してきたが、3代目は、2代目が構築してきた外部企業との関係をいかに発展させていくことが求められるか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
(R4第4問(1))A社の今後の戦略展開にあたって、以下の設問に答えよ。A社は今後の事業展開にあたり、どのような組織構造を構築すべきか、中小企業診断士として50字以内で助言せよ。
(R4第4問(2))現経営者は、今後5年程度の期間で、後継者を中心とした組織体制にすることを検討している。その際、どのように権限移譲や人員配置を行っていくべきか、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
(R5第4問(1))A社とX社の経営統合過程のマネジメントについて、以下の設問に答えよ。どのように組織の統合を進めていくべきか。80字以内で助言せよ。
A

(R5第4問(1)解答例)A社は、①X社を含む全社が目指す方向を示し、②A社接客リーダーを通じ自主的な問題提起や解決を図るよう促し、③X社従業員の退職への不安を和らげつつ統合を進めるべき。(80字)

コロナ禍後はこれまでの組織の見直しがマスト? R3以降、目立って増えた設問パターンです。

古典的な人事施策×助言は、「幸の日も」

Q
【期待効果】
(R1第4問)新経営陣が事業領域を明確にした結果、古い営業体質を引きずっていたA社の営業社員が、新規事業の拡大に積極的に取り組むようになった。その要因としてどのようなことが考えられるか。100字以内で答えよ。
(R2第3問)現在、A社長の右腕である執行役員は、従来のルートセールスに加えて直販方式を取り入れ売上成長に貢献してきた。その時、部下の営業担当者に対してどのような能力を伸ばすことを求めたか。100字以内で答えよ。
【助言】
(R2第4問)将来、祖父の立ち上げた企業グループの総帥となるA社長が、グループ全体の人事制度を確立していくためには、どのような点に留意すべきか。中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
(R3第5問)新規事業であるデザイン部門を担う3代目が、印刷業を含めた全社の経営を引き継ぎ、これから事業を存続させていく上での長期的な課題とその解決策について100字以内で述べよ。
(R4第2問)A社が新規就農者を獲得し定着させるために必要な施策について、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
A

(R4第2問解答例)A社は、①人と環境にやさしい農業のコンセプトを掲げて新規就農者を獲得し、②繁閑差がある農業と加工事業との関連多角化に加え、③従業員マニュアルや役割分担を明確にして働きやすい環境を整え、人材の定着を図る。(100字)

人事助言と言えば、(サ)採用配置・(チ)賃金・(ノ)能力育成・(ヒ)評価・(モ)モチベを並列列挙するのがR2までのド定番。それが徐々に根拠引用にとって代わられ、R5はついに出なくなったな。

今日のまとめ

Q
モチベ!切り口!キーワード!と大はしゃぎのふぞろい勢がR5作問変化で一掃されると、与件の変化をクールに眺める評論勢が真価を発揮。それは必ずしも悪くない?
A

事例Ⅰ~Ⅲがクロスオーバーし、与件を解くなら古い年から
①ふぞろい勢と逆にR1→R5の順に解くと事例の変化が良くわかり、②事例ⅠやⅢがマーケ寄りになる他に助言が増加し、③事例の正解も1つではなく複数解になる。(100字)

事例をクールに眺める評論力を持つのが上位の5%。R5第4問(1)で社長ワンマンにこだわるスクールに対し、いや接客リーダーへの積極的な権限移譲と、より新しい知見を試験に持ち込みます。

※事例Ⅰ~Ⅲを通じ、その正解はベテ専スクールがこだわる決めつけではなく複数解が成立しうる。その理由は、あえて答えが割れる複数解にして【最新の考え方を主催者側がリサーチしようとする】ためです。

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