合格体験記

【最新合格者座談会】今年の事例は傾向変化。ではその時どう解いた?

出題側が、ぜひ知りたい話題。

試験に関係するなら、どんなことでも最新ネタバレ。先日の「口述試験編」に続き、今日は「2次筆記編」です。

合格者Aさん:
50代前半。1~2次とも「完全独学」。過去問のパターンを追うより、体系化した「1次」知識に沿った回答を目指す。
合格者Bさん:
30代後半。「1次」通過に3年かける傍ら、合格前年に通信で受けたスクールの成果を生かし、「2次」を一発合格。
司会(ふうじん):
40代後半。「2次」は専門外で、むしろ教わる立場。

司会F:では今日の本題、「今年の事例は傾向が変化した。ではその時どう解いた?」の話に進みます。今年の「事例Ⅰ~Ⅲ」は、過去にないパターンの出題が多数あり、その結果合格者層の入れ替えが起きたとされます。実際に受験しどう解いたか。そこをぜひ教えてください。

「事例Ⅰ」やたらマーケ・生産っぽい。組織・人事でどう書き分ける?

F:端的に絞り、1事例につき1点ずつお尋ねします。まず「事例Ⅰ」製菓業の事例ですが、マーケ(Ⅱ)、生産(Ⅲ)に振れやすい解答要求でした。ここをどう扱いましたか?

A:第3問が生産より、第4問がマーケよりの解答要求でした。受験校の模範解答は別として、私はそれぞれ「生産」「マーケ」的な内容も織り込んでいます。

F:へぇ、すると「組織・人事」の加点要素が抜け落ちる心配はありませんでしたか?

A:全体として「解答の一貫性」、言い換えると「作問者が訊きたいこと」の全体像やストーリーを描くと、大きく外す不安はないと思います。具体的には、最終段落や第5問で、「第三の創業期」「戦友」という強い根拠がある。つまりA社の組織課題が、「成長」「組織学習」「人材育成」と先に想定すれば、第4問は「直営店の強化」、第3問は「正規と非正規の役割分担」となり、与件の根拠で十分マス目が埋まります。

B:同感です。「組織・人事」だけに縛られず、「経営戦略」の事例と考えれば、施策の前提になる根拠は明確なので、安定した解答が書けるでしょうね。

F:いやいや、それを80分で安定的に迷わず書くことが大変なのですが・・。特に第5問の150字は普通書ききれない筈ですが、案外そこで稼いだ方がいるのかも知れません。

「事例Ⅱ」やたら与件が長く、根拠が多い。どこを使ってどこを捨て?

F:「事例Ⅱ」は、例年の気宇壮大なスケール感と一転し、「商店街の寝具店」というやや地味なケースでした。その代り、与件が長く根拠も多い。編集に迷いやすかったでしょうか?

A:H27のB商店街の事例で、イメージはしやすかったです。

F:なるほど、「そっくりな事例」と警戒する方もいれば、率直にプラスと捉えても良いのですね。

B:今回の「事例Ⅱ」を「長文」とする意見を聞きます。でもMBAビジネススクールのケーススタディなら、A4で20~30枚になることはザラです。そう考えれば、事例の与件はある程度長文化しても支障はないでしょう。

F:なるほど、でも同じ80分で解く訳ですから、他にも点差になる要素があるでしょうか?

A:「井戸端会議」をメインにすれば、さほど迷わず回答を作れました。

B:その通りですね。このB社にはターゲット候補が複数ありますが、実は「工場勤務者」などは根拠を持ってターゲットから外せるはずです。

F:はい、ぜひ詳しく教えてください。

B:私が通ったスクールでは、「設問を解く前に、○社のドメインを再定義せよ」と教えます。このB社では、「シルバー世代の井戸端会議」を、娘の子育て世代に引き継ぐことがドメインになります。すると「工場勤務者」を解答候補から外せるので、余計な編集時間がかかりません。

F:なるほど、では私は詳しくないので、このB社における「井戸端会議」の位置づけを教えていただけますか?

A:寝具店には丁寧な接客が必要で、次のお客様を待たせてしまう。そこで待合スペースを作ったのが始まりです。(中略)この井戸端会議を娘世代に引き継ぎつつ、顧客データベースを活用した関係性マーケティングを進める。この点は「1次」知識の教科書通りになります。

「事例Ⅲ」出題構成が大きく変化。第1⇔2問をどう書き分ける?

F:では今回点差がつき、受験関係者の間で良問との評価の高い「事例Ⅲ」です。定番であった強み弱み(S・W)の出題が消え、第1⇔2問の切り分けが難しい事例でした。

B:設問を解く順番の工夫で対応できたのではないでしょうか。具体的には第2問を「現場寄り」「現在」の出題として解き、第1問が「マネジメント寄り」「将来」で後に解く順番で。

F:冷静になるとその通りですね。でも第1問で「将来」を最初に聞くパターンは、「事例Ⅰ~Ⅲ」を通じ過去5年でほとんどないのです。受験校の解答も解答速報レベルでは、時制で切り分けたのはT社ぐらいで、見たこともないような知識解答を並べるパターンだらけでした。

B:第2問で「余力管理」を聞いていますね。第2問と第1問がつながっているのは明らかですから、出題とは逆順になりますが、第1問を後回しにする判断はできるはずです。

A:同感です。ただ私は、「第1問でS・Wがない代わりに、ビジネスモデル」=戦略レベルの出題。「第2問は業務プロセスの変更」=戦術レベルの出題と捉えて回答しました。

F:なるほど、回答のアプローチは異なりますが、結果として第1~2問ともに「現状の問題点の指摘・改善からスタート」できる。無理に切り分けて知識解答をしたケースに比べ、点差が開いた可能性がありそうです。

「事例Ⅳ」取替投資 ~診断士「Ⅳ」で出すにはあまりに難問。

F:最後は「事例Ⅳ」です。これは当サイトで何度も取り上げましたが、「取替投資」は診断士で問うには難しい。具体的には、原価計算から意思決定会計を体系的に学ばないと解けない論点ですよね。試験委員の工夫は認めますが、基礎を知らない診断士受験者に「取替投資」を出題することは疑問です。

A:差額CFですよね。私は「証券アナリスト」資格があり、これは得意だとニヤリとしました。ただ計算結果は当たらず、すぐ後で落ち込みましたが。

F:あの計算を当てるのは無理です。旧機械の処分損TSの扱いは講師レベルでも難しく、1年ズレるだけでNPVの計算結果は狂います。「計算結果は当たらないもの」と想定して解かれましたか?

A:いえ、計算結果を当てに行きました(苦笑)。

B:計算難度は別として、第2問CVPを含め、論点自体はオーソドックスと思います。CFの計算欄が穴埋めになっているので、最後のNPVを当てるより、確実に部分点を取ることを意識しました。

F:「Ⅳ」はつい高得点を狙いたくなり、事実そのハイスコアで合格するケースもありますが。ただ診断士試験の性格から見ても、「高得点ゾーンには何か罠がある」。ハイリスクは避け、周囲が当てる部分点を取る方が正しそうです。

B:いえいえ、実は最後の見直しで、「経営分析」指標で「自己資本比率」と書くところを「自己資本利益率」と書いたのに気付き、とても慌てました。

F:貴重なご意見ありがとうございました。初学ストレート生が高度な解き方をする訳でなく、詳しい方が見れば「え、そんなレベルで良いの」と感じる点があるでしょう。でも過去の経験則に縛られず、受験側がどんな「現場対応」をしているか。出題側がそこを知ると、来年はもっと努力・実力通りに点がつく良い事例を出題してくれる。そんな期待ができそうです。

(座談会つづく)

今日のまとめ

「2次」筆記とは、「合格した方」にとっては簡単。
ついでに、合格さえすりゃいい放題。

当座談会、「合格した年の体験談」を伺っているため。何か立派に・偉そうに読めてしまう懸念がありますが、そうでなくって。

スト合格とは、「たまたま」ですから。

具体的には、合格実力者の8割を落とすべく試験委員が罠を仕掛けて待ち構える時。

  1. 仕掛けた罠に気付かない →20%たまスト
  2. 仕掛けた罠を見抜いて避ける →50%計画たまスト

80分では解けない試験だから、「当日の相性」「体調」「最後の2択の咄嗟の判断」。偶然性に左右されるし、「自分より努力・実力のある不合格者が多数いる」。

その謙虚さが次のイノベーションを起こし、合格枠を押し広げる。当サイトはそう考えますが、読み手各位のご見解はいかがでしょうか。

そうだ、「1次」で3年、「2次」を一発合格したBさんが、こう仰っていました。

「事例」って、80分では解けない試験ですよね。
事前の段取りを現場に持ち込む力を問うているのでは。

では明日の最終回、「2次を想定した1次対策」に続きます。

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