事例のクロスオーバー化
今回は季節と思い出を彩る花、桜のイラストを特集しました。美しい桜のイラストを見ながら、新たな出会いや別れに思いを馳せてみませんか?
出典:pixivision
- さて事例Ⅰ⇔Ⅱの出題ケースが年々似てきて、対策しにくい。良いノウハウはありますか?
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こらこら、最新事例の共通題意は、猫が見ても「事業多角化」。そしてワンマン社長の手に負えなくなるステージで、戦略+組織×マーケ×生産×財務の多面で評価。それがこれからの診断士の存在価値だ。
多角化する企業群の多面評価法【Balanced Case Study:口述想定問答集(Ⅰ)】
BSC:Balanced Score Card
BCS:Balanced Case Study
バランスド・スコア・カード | BCS:「2次」4事例 |
(Ⅰ)顧客の視点 | (Ⅰ)全社戦略+組織人事 |
(Ⅱ)学習・成長の視点 | (Ⅱ)マーケ+売上成長 |
(Ⅲ)業務プロセスの視点 | (Ⅲ)生産プロセス |
(Ⅳ)財務の視点 | (Ⅳ)財務会計 |
ほう。ヨコに並べると、BSCと「2次」4事例はおっどろくほど共通です。
- そう。企業やビジネスを分析すると、そのフレームワークは必ず似てくる
- そこに気づかずひたすら事例別に答えを暗記するのがふぞ、共通点に注目して暗記を減らすのがまとめです。
受験同期の想定問答集(オープンソース、利用・改良・再配布全てOK)
ちな、最新の口述想定問答集、イコール来年再試験を目指す時のベストのテキストだ。
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事例Ⅰ:グループ後継を運命づけられたA社長の、経営修行と人事設計
レイヤー1:全社戦略
質問 | 回答 |
A社をSWOT分析してください。 | S=強みは、200年を超える老舗ブランド、優秀な人材 W=弱みは、伝統的な家族主義的経営や祖父の経験や勘による前近代的な人事管理 O=機会は、A社地元地域へのインバウンドの増加 T=脅威は、2000年代以降日本酒国内消費量の大幅減少 |
一族経営のメリットとデメリットを教えてください。 | (メリット) ①組織文化が浸透しやすい ②後継者育成が可能になる (デメリット) ①過去の成功体験に依存 ②経営へのガバナンスが機能しない |
M&A(買収)の理由は?(一次知識による回答) | ①売上・市場シェア拡大 ②人材の獲得 ③技術ノウハウの獲得 ④後継者不在企業の救済 ⑤シナジー効果 |
A社長の祖父はグループの経営ビジョンをA社買収により実現させようとしましたが、一般的に買収を行う際のメリットとデメリットを教えてください。 | はい。メリットは大きく3点あります。①買収先企業の優秀な人材やノウハウを獲得できる事、②既存企業との生産や販売における相乗効果が期待できる事、③雇用維持により地域社会に貢献できる事などです。 一方デメリットは大きく2点あります。①事前に入手できる情報が少ないため、買収後に想定しない問題が発生する可能性がある事、②既存企業との組織文化や制度等の違いによりコンフリクトが発生する事です。 |
買収のリスクは? | (財務)偶発債務や取引トラブルの発生 (経営)労務管理問題(残業代未払い、有給休暇の未消化)の発覚 (人材)優秀な人材の外部流出 |
A社長の祖父は、旧家が営むA社を買収しました。一般的に友好的な買収を進める際の留意点を教えてください。 | ・旧家の組織文化を理解し、スムーズに融合されるように、社員同士のコミュニケーションの活性化を図る。 ・人事制度の整備の際には、公平で公正な評価基準を設けるようにする。 |
(ベテラン)従業員を引き受けた場合の留意すべき点は? | 異なる組織文化を理解し、良い点は継承し、悪い点に関しては配慮しつつ改善。従業員の士気低下を避けるためにコミュニケーションを図り、権限委譲などを行う。 |
A社長の祖父は前経営者との経営顧問契約やベテラン従業員の引き受けを行いましたが、仮にこれら契約や雇用維持を行わなかった場合、どのような状況が発生したと考えられますか? | はい。円滑な事業承継や既存企業との連携が進まず、早期の事業再建が難しい状況になったと考えられます。具体的には①長年で培った経営顧問からの酒造事業の経営ノウハウや、ベテラン蔵人からの伝統的な酒造りに関する技術の承継が難しくなり、A社の強みの維持ができなくなると考えられ、②既存企業との相乗効果の発揮も見込めなくなると考えられます。 |
口頭試問が始まったら、まず訊かれた事例×レイヤーを想起。次に①問われた知識を一度整理し、 ②与件文に散りばめられたキーワードを思い出しながら、③最後に知識と効果で締めます。
レイヤー2:組織構造・行動
A社長は情報システム化を進めた若い女性社員を評価し責任者に抜擢しましたが、この情報システム化は、A社の経営にどのようなメリットがあったと考えられますか。 | ・複雑な事務作業や取引先との商売を誰よりも掌握していたベテランの女性事務員の知識やノウハウといった暗黙知を、情報システム化によって見える化したことで、総務・経理担当従業員の育成・世代交代を進めて組織を活性化させると共に、不正行為のリスクの回避が図れるようになったメリットが挙げられます。 ・また、勤怠管理等人事情報のシステム化によって人事評価がしやすくなったほか、売上や在庫状況の情報システム化によって、経営分析や適正な在庫管理、営業上のエビデンスなどに貢献するメリットがあったものと考えられます。 |
A社の女性社員がベテラン事務員の仕事の情報システム化を進める際に取り組んだ、ナレッジマネジメントについて説明してください。 | ・まずは、ベテラン事務員と一緒に働くことで、個人が蓄積してきた暗黙知を言語などによる形式知化を図ることで、知識を共有しやすくしました。 ・そして、形式知化された知識の標準化やマニュアル化を図ることで、組織全体で活用できるよう情報システム化を図りました。 |
ルートセールスのデメリット(または問題点)を説明してください。 | はい、ルートセールスのデメリットは2つあると考えます。 1つ目は、ルートセールスの販売先から収集する顧客ニーズは、必ずしも顧客ニーズであるとは限らないことです。実は、問屋や卸が売りたいまたは売れると考えている販売先ニーズかもしれません。したがって、販売先から収集する顧客ニーズへの対応は問屋や卸のための商品開発となり、結果として消費者ニーズの変化へ迅速に対応できないおそれがあると考えられます。 2つ目は、ルートセールスは販売先の経営や意向に依存することです。例えば取引先が廃業しそうな場合は取引条件の見直しが提示された場合は販売チャネルを失うこともあり、結果として売上が減少するおそれがあると考えられます。 |
執行役員が部下の営業担当者に期待したことを説明してください。 | はい、執行役員は部下の営業担当者に対して2つのことを期待したと考えられます。 1つ目は、新規事業の開発です。A社は日本酒バーやレストラン事業など自社で日本酒を販売できるチャネルという強みを持っています。そこで営業担当者が自社の販売チャネルの現場にたち、顧客との直接的なコミュニケーションを通じて顧客が日本酒にもとめているニーズを収集し、杜氏や蔵人へ顧客ニーズを伝えて新規商品の開発に役立ててもらうことを期待したと考えられます。 2つ目は、既存商品の拡販です。顧客とのコミュニケーションを通じて、既存の日本酒の売り方についての改善点に気づくことがあるかもしれません。そうした場合には、日本酒バーやグループ内の事業へ既存の日本酒の販売促進を提案し、自社の販売チャネルを通じた日本酒の売上増加へ貢献することを期待したと考えられます。例えば、レストラン事業では日本酒とあうメニューを提供、土産品事業では日本酒とのあわせ買いを提案するPOPの作成などです。 |
A社が売上げを伸ばした直販方式は、どのようなものであったと考えられますか。 | ・インバウンドの追い風に乗って売上を伸ばしたことから、蔵元での試飲や併設の土産物・バー・レストラン、さらにグループの旅館等での外国人観光客向けの販売促進活動を積極的に行ったと推測されます。外国人をあえて雇用したのは、おそらくそのためです。 ・また、有能な執行役員を筆頭とする営業チームに、東京等大消費地での販促イベントや小売業者・飲食店等への営業を積極的に行わせたのではないかと考えられます。 |
直販方式のデメリットがあれば教えてください。 | はい、A社は直販チャネルはリアルのみとして回答します。 この場合のデメリットは、直販のみではA社がアクセスできる顧客が限られることです。日本酒市場全体をみた場合、A社がまだアクセスできていない顧客、あるいはA社を知っていたも日本酒を購入できない顧客がいることが考えられます。そのような潜在顧客へアクセスできれば、A社はまだ売上を伸ばす余地があると考えられます。 改善策としては、1つ目はルートセールの拡大、2つ目はインターネット販売の展開が考えられます。 1つ目のルートセールス拡大の留意点は、短期的な売上拡大を追い求めるのではなく、販売先にA社の商品を理解してもらい、顧客へA社の商品を紹介してくれるような友好的な販売先を開拓し、長期的に売上拡大を目指すことが望ましいと考えます。2つ目のインターネット販売の展開の留意点は、受発注や在庫管理などの業務増加にともない人件費が増加するおそれがあります。売上が伸びても利益が出ないという状況にならないよう、業務のシステム化にもあわせて取り組む必要があると考えます。 |
A社のように経営資源が制約のある中小企業が販売チャネルを構築する際の留意点を説明してください。 | 1次知識を使って回答する。経営資源の分散回避、強みを活かすなど |
これまで直販方式の導入により酒造事業の売上を伸長させてきましたが、更なる売上発展を図るためには、営業担当者に対してどのような人事制度を検討すれば良いと考えますか? | はい。検討すべき人事制度は、①更に新規事業の橋渡し役を担うために、ジョブローテーションによる他業務や他事業とのコミュニケーション強化、②求める能力や業務を実践する担当者を積極的に評価する等、能力主義による評価・報酬の推進、③顧客ニーズの収集やコミュニケーションに関する能力開発支援、等が考えられます。 |
組織構造・行動をスラスラ答えるには、事例を相当読み込む必要が。最悪、「例えば〇〇業界では・・」と全く事例と無関係なたとえ話でも、苦笑いで2分は持つぞ。
レイヤー3:人事施策
将来、A社長は企業グループの総帥となる事が見込まれていますが、このような同族企業による経営におけるメリット、デメリットを教えてください。 | はい。メリットは株主が同族内で少数のため、経営上の意思疎通が計られやすく、意思決定が早い事などです。一方デメリットは2点考えられます。①評価が恣意的になりやすく、人事が不透明になりがちな事、②同族以外が役員になりにくく、人事配置面でのモチベーション向上が図りにくい事などです。A社についても人事配置上のデメリットが想定される状況ですので、血縁関係に関わらず優秀な人材を重要なポストに配置するなどの制度設計が必要と考えられます。 |
A社がこれまでの年功序列型制度に加え、成果主義的要素を取り組む事を考えています。その際に考えられるリスクを説明してください。 | ・短期的思考に陥り、長期的視点での取り組みが疎かになる。 ・組織構成員間の協力が妨げられる。 ・内発的動機づけが損なわれる。 |
A社が多様性を重視した経営を行う目的は何か?また、留意すべき点としてどんなアドバイスをするか? | A社が多様性を重視した経営を行う目的は、インバウンド需要に対応しながら地域活性化に貢献する上で、多様な人材を活かし、社員が最大限の能力を発揮できるようにする必要があるためである。 留意点としては、①経営ビジョンや経営戦略とマッチした、長期的な方針を立てて実行すること、②多様な社員の能力を適切に見極め、適材適所な配置を行いながら、客観的な評価を行い、モチベーション向上につなげること、③社員個々の多様な価値観を尊重し、自律的な提案などを受け入れるオープンな社風や文化を醸成すること、などである。 |
成果主義的賃金制度を取り入れる目的は何か?また、留意すべき点としてどんなアドバイスをするか? | A社が、成果主義的賃金制度を取りいれる目的は、地域活性化を継続的に担う企業として事業拡大をする上で、①若手社員のモラール・モチベーション向上、②人件費の変動費化、③優秀な人材の流出防止等を図り、継続的な成長を図るためである。 留意点としては、①短期志向にならず、長期的視点で評価する、②公平公正な評価制度とする、③部門間連携を重視する、④納得感・社員動機付けを行う、等にて組織の活性化を図っていくことである。 |
今回の「Ⅰ」の目玉は、この人事施策と同族企業。面接係の手元にありそうな答えを予め暗記し、ここぞと立て板に水の2分で話し倒します。
今日のまとめ
でもこんな答えの、全部暗記は無理だろ?
そこで筆記⇔口述問わず、①クライアントの相談をまず傾聴し、②4事例のどのレイヤーに当てはまるかを判断の上、③(因)与件表現を引用しながら→(果)知識セオリーにまとめることを通じ、相手を納得+安心させる。(100字)
- そう。事例がクロスオーバーする時代には、口述問答集が診断士を目指すベストのテキストに
- そのセオリーを正しく受け止めたのか、そうでないのか。この後10:00に発表される試験の当落とその一喜一憂より、もっちろんそちらの方が大事です。
さらにA社の有巣社長に、もっと喜んでもらうには? それには与えられた10分間で、①しどろもどろに相手がムッとしたり苦笑い(ふぞ)⇔②立て板の水に深く頷きGoサイン(まとめ)。その違いを最初に意識することです。
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