体験記のポールポジション
+ペースセッター
採点基準が再び進化し、合格者をガラリ入れ替えたと噂される当試験。最新の「筆記」合格体験記第1号は、受験中から情報を提供いただいたTA様に、無理を言ってお願いしました。
体験記のポールポジションを取ると、
それがペースセッターになる。
誰かが体験記を先に書くと周囲の参考になり、より優れた体験記が続き、薄いものは省かれる。つまり第1号ペースセッターが充実するほど、その年の体験記全体の質が高まります。
TA様は「1次」3回「2次」2回、独学+通学を両方こなした経験豊富な方で、注目は昨年の体験記平均をどれだけ超えてくるか。ではどうぞ。
【合格体験記】1次3回、2次2回。多年度化する「遠回りポイント」はこれ ~TA様
1. 診断士に挑戦した理由・きっかけ、年齢(任意)
39歳の会社員(IT営業)のTAです。
これまで2回(①2017年二次受験後、②2018年一次受験後)体験記を投稿しましたので、内容が一部重複しています。これらを踏まえつつ、今年の二次受験までをざっと振り返りたいと思います。
きっかけは、過去に2年ほど、ITとは異なる分野でコンサル業務に携わっていたことがあり、自由な発想で主体的に仕事を創り上げていく楽しさが忘れられず、またああいった仕事がしたい、と思っていました。
ふと思いつきで2015年に診断士試験を記念受験したところ、たまたま3科目(経営、財務、情報)合格したことから本格的に資格取得を目指すことを決意しました。
2. 学習開始時の知識・保有資格、得意科目・不得意科目、「1次」科目別点数(合格年)
いわゆる多年度生です。各年の状況を表に整理します。
科目 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
記念受験 | スクール 頼み | 法務中心 | 7科目 全合格 | |
経済 | 44 | 68 | - | 100 |
財務 | 60 | - | - | 60 |
経営 | 60 | - | - | 72 |
運営 | 52 | 70 | 64 | 69 |
法務 | 40 | 35 | 64 | 60+8 |
情報 | 60 | 68 | 76 | 88 |
中小 | 19 | 60 | - | 72 |
平均 | 47.9 | 60.2 ※法務 足切り | 68 | 75.6 |
科目 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
財務 | - | - | 簿記3級 | 簿記2級 BC2級(財務) |
経営 | - | - | - | BC2級(営業) |
法務 | - | - | ビジネス法務2級 知財検定3級、2級 BC2級 取引法務、 組織法務 | - |
情報 | - | - | - | 応用情報 |
IT営業が長いので、「情報」は広く浅く知識があります。一方で、学習開始時、受験に役立ちそうな資格は特にありませんでした。
学習を続ける中で、①学習継続の短期目標、②知識の定着、(③会社の資格取得報奨金)を目的に、上記の資格を取得しました。
得意科目
「運営」「情報」
不得意科目
「中小」
それでは、合格した今になって感じる「遠回りしたポイント」を整理し、年を追って説明します。
遠回りポイント①
必要な一次知識を備えていない
結局2018年に再受験するまで、知識が不足していたことになります
遠回りポイント②
学習姿勢が受け身。
自分にとって試験合格に必要な知識や能力がわかっていない、補えていない状態だったと思います
遠回りポイント③
ゴールが見えていない
当然、そのためのアプローチもわかっていない状態です
遠回りポイント④
力み過ぎ
上記①~③のとおり能力が不足していたことに加え、本番で本来の力を発揮するための準備が不十分でした
記念受験(対策なし)。
⇒「財務」「経営」「情報」合格(遠回りポイント①)。
スクールに通いました(「1次」、「2次」フルコース)。
スクールに頼りっきりで、スクール以外のことはほとんどしていません(遠回りポイント②)。直前に過去問に取り掛かるも十分に回転させることもできていませんでした。(遠回りポイント③)しかしそれで十分だと思っていましたので、合格する気だけは満々です。
⇒「法務」足切り。
独学で「法務」を中心に学習し、無事「1次」を通過しました。「2次」対策は資格や関連書籍(主にマーケ、財務)、計算問題など進められるところを並行して進めていました。
「2次」も独学中心でしたが、自分が正しい学習ができているか確認するため、スクールの一部のみ受講しました。
「今年受からないといけない」「必ず受かる」と、当日、強い気持ちで臨みました。ところが当日、与件や設問が全く頭に入ってこず、パニックになってしまいました。(遠回りポイント④)
⇒「2次」脱落。(42/53/72/70 計:237点)
2018年、「1次」を受けるか、「2次」に特化するか悩みました。
この年合格したスクール仲間から「診断士はゼネラリストだから、自分は7科目受験にこだわった。今年落ちていても7科目受験するつもりだった。」と聞きました。
ぼんやりと「自分にも「1次」7科目受験が必要ではないか」と考え、2018年は7科目受験に舵を切りました
3. 学習スタイルとそのメリット・デメリット
私の場合、独学で始めたものの、こなしきれないと考えてスクールに通学し、その後独学に戻りました。
スタイルごとのメリデメはありましたが、遠回りポイント同様、行き着くところは以下3点だと思います。※「As is/To be」のイメージです。
- ゴール(合格する姿)がイメージできているか
- 正しいアプローチ(勉強内容・方法)ができているか
- 学習習慣(推進力)が身に付いている
各年のスタイルと姿勢、メリデメ
<スタイル>
独学
<姿勢>
診断士への憧れ
<方法>
市販テキスト(ほとんど触らず)
<メリット>
意識も学習習慣もない自分にとってはメリットなし
<デメリット>
とにかく継続することが難しい
<スタイル>
スクール通学
<姿勢>
スクール頼り
<方法>
・レジュメと市販テキストを併用した講義
・答練なし(小テストがたまにあった程度)、インプット中心
<メリット>
①勉強習慣が身につく
「行く」と決めるだけで勉強でき、徐々に勉強習慣が身につけることができました。いきなり自分でペースを作るのは難しかったと思います。
②とりあえずカリキュラムに沿って走れば全体を学習できる
最後まで挫折せずに学習をやり遂げることができたことは大きなメリットでした。また学習計画や内容、方法の検討に割く時間を省くこともメリットですが、これは後述のデメリットの方が大きいと思います。
③学習仲間がいる
いろんなバックグラウンドを持つ、仕事以外の仲間ができることは、他にはないメリットだと思います。勉強継続にも良い影響があったと感じています。今でも交流があることはありがたいことだと思っています。
<デメリット>
①受け身になりがち
スクールの決めたスケジュールに沿って進むので、勉強をこなすだけになってしまい、完全に受け身でした。結果、過去問着手にも遅れ、ゴールが見ずに走っていました。
②コストがかかる
当たり前ですが費用がかかります。私の場合は30万ほどかかりました。負担は少なくないです。
<スタイル>
独学+一部スクール通学
<姿勢>
試験突破
<方法>
・関連書籍で知識を深め、理解促進
・関連資格で知識固め
・過去問演習
<メリット>
①低コスト
勉強習慣が定着して、「自分なりの合格イメージ」が立てられれば、費用が抑えられます。
②学習計画を自分で立て、主体的に取り組める
スクールでの受け身受講とは違い、「学習計画や方法を自分で考えて進める」ことで、理解も深まり、主体的で効率的に学習が進められます。
<デメリット>
①回り道する可能性
関連書籍を読んだり、他資格を取得しながら理解促進とモチベーション維持を図りましたが、資格取得だけを考えると不必要な勉強がありました。回り道してしまい、せっかくの学習時間が試験に直結せず、浪費してしまう恐れがあると思います。
また、「自分なりの合格イメージ」や「学習計画や方法を自分で考えて進める」のが正しければよいのですが、私の場合はこのときは若干ズレていたように思います。
<スタイル>
独学
<姿勢>
試験突破+能力開発
<方法>
・一次知識強化
・二次過去問演習(PDCAによる能力視点での修正)
・本サイトや他ブログ、勉強会による情報収集強化
<メリット>
①方向性が確認できる
本サイトや他ブログなどで情報収集を強化し、試験の本質や求められる能力を意識して実践してみることで、演習やその後のチェック方法が変わっていきました。
本サイト等を活用することで、正しい(であろう)方向性を、過去問⇔演習⇔情報収集で収斂していくことができたように思います。
<デメリット>
①情報が多く取捨選択が必要
役立つものや役立たないもの、単純に自分に合うもの合わないもの、さまざまな情報があるので、振り回されると時間を浪費してしまうと思います。
ただ、HAKS様やきゃっしい様の記事など、正しい方向に導いてくれる記事が多くあると感じていますので、デメリットはほとんどないように思います。
4. 2次筆記合格までの受験回数、学習時間とその作り方
【受験回数】
2回目(2017年、2018年)
【勉強時間(2次)】
2016年:211時間(ほぼスクール)
2017年:555時間(過去問演習+スッキリ1級他財務会計関連)
2018年:338時間(過去問演習+スッキリ1級)
【学習時間の作り方】
平日は通勤時間や移動時間、終業後に時間を確保しました。コワーキングスペースに寄って勉強し、勉強を継続することを意識していました。
休日はなるべく公民館の学習室に行き、半日程度勉強することが多かったです。
5. 2次筆記合格までの学習法
多年度のため少しずつ変わっていきましたが、最終的には次のようになりました。
【1次】
本サイトの記事にもあるように、過去問を使ってインプットしました。診断士として正しい知識を備え、考え方や思考の方向性を身につけることもできたのではないかと思います。
過去問と使ったインプット学習では、4~5つある選択肢の知識を、以下の点を意識して1問で4~5回ほど味わいながら覚えていきます。
- 何が問われているのか
- 正しいものはどれか
- 間違っているものはどこが、
- どのように間違っているのか(何の知識をひっかけようとしているのか)
徐々に7科目の知識や考え方を横断的に使えるようになり、クロスオーバー×インターリーブや本サイトの過去の記事で示された下の図のように、7科目の関連知識や能力が横断的につながっていったような感覚があります。
参考:「経済」の過去問対策
ちなみに個人的に今年の経済の点が良かったのですが、グラフの読み方や前提条件(テーマや論点、例えば問われているのは財市場なのか貨幣市場なのか労働市場なのか等)、因果関係(事象の結果、どのようなことが起こるのか)を強く意識するだけで選択肢の絞り込みがしやすくなり、点が伸びました。これは「2次」の与件や設問解釈、記述にも役立ったように感じています。
【2次】~過去問演習+解釈練習
①過去問演習 ②チェック・振り返り ③過去問演習の繰り返し
昨年も今年も、文字にするとやっていることは同じですが、昨年は「できなかったこと」を中心に改善していきましたが、今年は「できていないこと(足りていないもの)」ができるように意識しました。※学習姿勢の「能力開発」部分にあたります。
昨年は以下を事例単位、設問単位で確認し、修正していました。
設問を正しく解釈できた、できなかった
正しい一次知識を使えた、使えなかった
論理的に書けた、書けなかった
今年はそこから一歩踏み込み、以下を考えて必要な能力やスキルを備えるよう取り組みました。
なぜ解釈できなかったのか
なぜ知識が使えなかったのか
なぜ論理的でないのか、読みづらいのか
100点を目指す試験ではないものの、点を取らなければ合格しないので、得点の最大化を意識した結果、取り組み方もこのように変化しました。
【2次】~学習ツールやシート
ファイナルペーパーは昨年と違うものになりました。また「要求分類シート」と「一発合格もくじシート」を活用したことが大きかったと思います。
①「要求分類シート」に、自分の答案を振り返るため、次のような記入欄を設ける。
「重要度(スコアへの影響度)」「スキル(R:読み、T:考える、W:書く)」「問題点」「改善点」
②事例やレイヤー、解答要求、能力別、上記の追加記入欄をフィルターでカチャカチャ分類してみる。
これで事例別、レイヤー別、要求別の弱点だけでなく、「2次」全体で自分が足りていないものが見えてきました。
(自分の場合は、①高得点を狙うあまり、読む、考えるに時間をかけ過ぎて、書く時間が取れないことで逆に点が低くなっている、②高得点を狙うあまり、いろんな要素を盛り込もうとして論点がぼやけている、などです。結局「80分でできる処理量を越えて、欲張りなっていた」ということです。)
追加箇所のサンプル
事例別の集約サンプル
また、レイヤーの捉え方や知識の補充、波及論点の把握に手元の「一発合格もくじシート」と「ブロックシート」を使うと確認の手間が省け、その先の論点全体を意識する効果がありました。
今年、レイヤーずれを起こさずに済んだのは、このシートのおかげでした。(なんだか通販っぽいコメントですが・・・)
6. 学習時・試験当日のエピソード
昨年の「2次」でパニックになったこともあり、当日本来の力を発揮できるように注意しました。「難関試験に一発合格する人の本番力」という本を読んで、直前に特に意識した節は「人生は思いどおりにいかない、と考えておくこと」でした。
この試験ですでに2回経験したことで、骨身にしみていましたが、遠回りポイント④のとおり、力みすぎないことは「得点を最大化させる」上で重要なことだと肝に銘じました。その結果、ほど良い緊張感で臨むことができました。
席も一番前で見通しがよかったことも良い影響があったかもしれません。
7. これから合格を目指す方へのアドバイス
アドバイスなどおこがましいですが、いろんなキャリアやバックグラウンドを持っている人が多いので、月並みですが、自分に合った方法を見つけるしかないと思います。
- ゴール(合格する姿)がイメージできているか
- 正しいアプローチ(勉強内容・方法)ができているか
- 学習習慣(推進力)が身に付いているか
初めから見通しを立てられ、ストレート合格できる人もいらっしゃいますが、私はやりながら視野を広げていくしかできませんでした。私にとっては成長に結びつける必要な期間だったと考えていますが、もしかしたら短縮できたかもしれません。
もしこの体験記の一部でも役に立ち、3年が2年、2年が1年と、少しでもどなたかの短縮につながれば幸いです。
■■ここからテンプレ■■