やってまいりました、エコノミクスアワー。
おはようございます、お久しぶりのXレイでございます。
この時期の試験ブログといえば、当日はこうしましょう、これには気をつけましょう、これだけはやってはいけません、みたいなアドバイス特集が多いでしょうか。さらに進むと、本番を楽しんでこい!、周りのみんなに感謝しろ!、 ここまで学習を続けただけでも凄いぞ君は!、 のように「えっ?」と思うものまで出てきてしまうのが例年の試験ブログ。
いえいえ、この直前期こそ学習内容の解説でいくのがいいんです。とはいえ、いまさら頻出分野はさすがに皆さん習得済み。そこで狙うは若干マイナーなところ。しっかりと学習が及ばなかったあたり。もし出題されたとき「あれ?なんかブログで見たな」という展開を狙う。今日の話は、分からないところを理解しましょうというものではありません。「ここを覚えておいて」という箇所を中心に、何となく頭に残してくれればいいことあるかもといった感じです。まあ、早速いってみましょう。
1.物価指数
「ラスパイレス物価指数」と「パーシェ物価指数」。難しいところでもないのですが、ちょっと分かりづらい。例えば「基準年」「比較年」という言い回し。5年前と比べると今年はどのくらい物価が上下しているのか、という指標が「物価指数」ですが、ここでいう「5年前」が「基準年」で「今年」が「比較年」ということ。
まあそこで、「基準年」の数量(消費量)を使って計算しようというのが「ラスパイレス物価指数」。例えば「消費者物価指数(CPI)」や「企業物価指数(CGPI)」がありますが、基準年の数量はあらかじめ分かっているため、算出に割と時間がかからないのが特徴です。なお算出式はテキスト等で確認してください。
一方、「比較年」の数量(消費量)を使って計算しようというのが「パーシェ物価指数」。こちらの代表格は「GDPデフレーター」ですが、比較年の数量が必要なためデータ収集に時間がかかってしまいます。
簡単にはこんな感じですが、ここでは以下を覚えておいてください。
「一般的に、ラスパイレスよりパーシェの方が低く出る」
平成27年の第5問。私ならウと即答し、時間が余ったら検算します。もちろん可能性としてラスパイレス≦パーシェもなくはないのですが、識者が問題をつくる以上多分大丈夫と信じてみる。ここで時間は使いません。
2.債券市場
債券市場。平成25年の第6問をやりますが、この辺りの問題に取り組むとレベルがあがります。
問題文の最後「資産市場ではワルラス法則が成立している」というのは、「資産市場(=貨幣市場+債券市場)では超過需要の和がゼロになる」という意味。要するに、どちらかの市場(この場合は貨幣市場か債券市場)が超過供給となれば、もう一方は必ず超過需要になるというのがワルラス法則。繰り返し、その法則が成立しているのが当問題です。そこで(1)。
問題文に「貨幣供給量を増加させた場合」とあるので貨幣市場は超過供給。ならば「債券市場では、超過需要が発生」するので(1)は、aが正解。
次に(2)。
(1)より「利子率は低下する」と分かっているので「投資を行う際に必要な資金調達コストが低下するため、投資が促進される」。よってcが正解。ここは基本的なところでしょう。
このように本問題は、ワルラス法則とは何かが分かれば答えられるのですが、実はこの問題でおさえたいのはそこよりも、aの選択肢にある「債券価格が上昇することで、利子率が低下する」というところ。通常は独立変数を逆に捉えて「債券価格は市場利子率の減少関数」としますが、これを覚えておいてください。
市場利子率が上昇すると、“これから出回る”債券の利率が上昇する。すると、“すでに出回っている”債券の利率は当然それよりも低くなる。よって、“すでに出回っている”債券の需要は減少するので価格は下落する。という仕組みなのですが、こちらの説明がとても分かりやすいです。
3.労働市場
労働市場。古典派とケインズ派の違いについて、さらっとみておきましょう。
①古典派
古典派の労働市場。まずは労働需要ですが、企業は「実質賃金=労働の限界生産物」となるよう雇用量を決めるとしていて、この考え方は「古典派の第一公準」と呼ばれます。次に労働供給。こちらは、労働者は〔実質賃金の効用=労働の限界不効用〕となるように労働量を決めるとしていて、この考え方は「古典派の第二公準」と呼ばれます。そして各々をグラフにすると以下。
ここで労働者は実質賃金を認識できるため、常に「完全雇用」が実現するというのが古典派の考えです。
②ケインズ派
ケインズ派の労働市場。まずは労働需要ですが、基本的には古典派と同じです。つまり 、企業は「実質賃金=労働の限界生産物」となるよう雇用量を決めるとする「古典派の第一公準」を認めています。古典派と違うのは労働供給。ここでは労働者は名目賃金によって労働量を決め、名目賃金は下方硬直性を持つとしています。つまり「古典派の第二公準」は否定しています。そこでグラフにするとこんな感じ。
労働者の求める名目賃金が一定水準から下がらないため「非自発的失業」が発生する、というのがケインズ派の考えです。グラフで言うと「Lf-L1」が非自発的失業にあたりますが、もしそれを解消したければどのようにすればいいのか?
それは、需要曲線を右にシフトさせればいい。
こうなれば非自発的失業がなくなる。要するに、非自発的失業を無くしたければ根本的に必要な労働量が増えればよいのであって、それは言い換えると生産物の供給量(生産量)が増えればいいということになる。そして、財市場においてその供給量(生産量)を決めるものが需要量というのがケインズ派。これが有名な「有効需要の原理」です。つまり、非自発的失業の要因は労働市場ではなく財市場にあると言っているんですね。さておき、それではその需要量はどのように定まり、どのようにすれば増やしていけるのか、というのが皆さん習得済み45度線分析といったあたりの話になるんです。
少々踏み込みましたが、ここでは最低限「古典派の第一公準」だけは覚えておいてください。企業は「実質賃金=労働の限界生産物」となるよう雇用量を決める、というところ。ここは出題され続けます。
せっかくなので、ついでに失業率に関する事項もみておきましょう。
まずは「オークンの法則」。「失業率と経済成長率には負の相関がある」という法則です。
そして、「フィリップス曲線(物価版)」。
短期と長期があって、短期フィリップス曲線は「インフレ率と失業率に負の相関がある」とし、長期フィリップス曲線は「インフレ率と失業率は無関係」としています。ここでは以下の台詞を覚えておいてください。
「自然失業率仮説によると長期のフィリップス曲線は垂直となる」
このまま選択肢に使われてもいいくらいです。もちろんこの選択肢は〇。
4.国際収支統計
国際収支統計。ある期間において、ひとつの国・地域の居住者が、非居住者との間で行ったあらゆる対外経済取引を体系的に記録した統計。経常収支、資本移転等収支、金融収支の3つの収支と誤差脱漏から構成され
経常収支+資本移転等収支-金融収支+誤差脱漏=0 ・・・①
となる。まずはこの①式を覚えておいてください。
そして「金融収支」という項目をおさえておきます。これができたのは2014年からで、それ以前の「投資収支」と「外貨準備増減」を統合したものなのですが、少々見方が異なります。以前の「投資収支」などは「資金」に着目し、その流入をプラス、流出をマイナスとしていたのですが、「金融収支」は「資産・負債」に着目し、その増加をプラス、減少をマイナスとしています。つまり両者、なにが違うかというと「対外投資」をしたときの符号。「投資収支」では、対外投資は資金の流出となるのでマイナス。しかし「金融収支」では、それは資産の増加となるのでプラスとなるのです。ここで2014年以前の均衡式を示すと
経常収支+資本収支(投資収支+その他資本収支)+外貨準備増減+誤差脱漏=0 ・・・②
項目の説明は省きますが、①式と②式の符号の違いが分かると思います。このあたりの話はいずれ試験にでるはずです。
さて、この辺にしましょう。
本当はここから、投資の理論、経済成長理論、合理的期待形成仮説とリアルビジネスサイクル理論、といきたいのですが、さすがに長くなります。そして不安に・・・
冒頭に、今日は「若干マイナーなところ」「しっかりと学習が及ばなかったあたり」をやると言いましたが、それにしてもなんだか難しいなと思いましたか?
その通り!ふうじんさんから「経済学が難化するとどうなるか書いてくれ」と言われまして。真っ当な論点できてくれるなら、マクロは今日触れたあたりと触れたかったあたり。触れたかった辺り(上の太字)は本当に難しい。ちなみにミクロでは、費用最小化問題や一般均衡分析、そしてゲーム理論。まともでない論点では、いくらでも問題作り放題なのでよく分かりません。
さらにふうじんさんから「難化したときの対応法についても書いてくれ」と言われました。
頼りになるのは数学力と直感力。これまでの傾向として、見たこともない訳の分からないグラフや数式で惑わすことが多く、この場合、単純に数学力で解いてしまうというのが有効です。数学力といっても大したものではなく、高校入試レベルの関数や方程式でほぼ足りています。
そして直感力。「勘」ではなく「直感」です。要するに、当てずっぽうや「ウの正答率が高い」とかいう占いレベルの話でなく、これまで身につけた知識や経験にから「多分これは違う」「なんとなくこれかな」と選べる力のこと。十分な対策をしてきたという方ほど、この「多分これは違う」「なんとなくこれかな」を信じてみてはどうでしょう。思いのほか正答するはずです。
っていうか、一次試験全般において重要なのはこの「多分これは違う」「なんとなくこれかな」。結果500点ほどとる方も、絶対の自信をもって答えられた問題はそれほど多くはないと思います。これまで身につけた知識や経験から、いかに正答に近づけられるのか。そこなんです。そして、いまさらですが、過去問演習で正答率の低い問題はやらなくていいとか言うからなかなかその力が身につかない。AだかDだか知らないけれど、結果論をもとに最もらしい言い回しをして、そういう対策こそ正と説くから絶対評価の択一式でいつも8割落とされてしまう。多くの方が正解できなかった問題に真摯に取り組むからこそ、広く確かな知識が身につくと思っているんですけども。分からないことを調べているうちに、様々な事柄が目に留まるんです。もちろん合格という目的においては、かなりの時間を無駄にしているかもしれませんがね。まあまあ、多くの合格者には「何を言ってるんだ!」「効率が悪い!」と怒られてしまいますので、そろそろやめておきましょう。
さて、試験まであと少し。今日の話を何となく頭に残してくれれば、いいことがあるかもしれません。当ブログ読者の皆様のご健闘を心よりお祈りいたします。頑張ってください!
Xレイ
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