H事例Ⅰ

【R5事例Ⅰ解答例】マシマシ与件短マス目はふぞ有利?不利? / KECと速さを競い生成AI利用で成長

例年だと15:00発表でKECと同着が精一杯だった、事例Ⅰモデル答案のスピード競争。今年R5は生成AIが本業講師を早くも上回る、メモリアルイヤーで確定しました。

事例Ⅱと紛らわしいⅠは、マシマシ根拠でコピペが可能
第1問 全社戦略・情報整理→30字×2のSWは最後に書く
第2問 全社戦略・期待効果→差別化と狙いを明確に示せるか
第3問 組織構造/行動・助言→買収先のX社は組織面がダメダメ
第4問(1) 組織行動・助言→ビジョンを示して離職防止へ

第4問(2) 全社戦略・助言→競争戦略を描き、食べ歩きがターゲット

R4の助言4つに慣れると、助言3問程度じゃ驚かない。ところが助言=フリー列挙の殴り書きでなく、書くべき根拠で全面的に埋まってしまう。そこが今年最大のトラップ候補な。

もし与件根拠のコピペで加点なら?
マシマシ根拠なR5事例Ⅰでは、ふぞろい十八番の【組織一体感醸成!】【士気向上!】を使うスキ間は1字もなく、与件の根拠だけでマス目が埋まる。あの間抜けなふぞろい勢がどうあたふたするか、先制パンチでからかいます。

第1問(20点) 全社戦略 情報整理

Q
統合前のA社における①強みと②弱みについて、それぞれ30字以内で述べよ。
A
①蕎麦に集中した高いサービスに加え、自ら問題解決できる組織風土。(30字)
②原材料高騰で収益が圧迫され、顧客高齢化が進み新規開拓が必要。(30字)
SWに使う根拠が多数ある中、統合直前のものほど加点可能性が高いと想定します。またSWOT要素のうち(T)脅威に近いものをA社の(W)弱みとしてよいかは、説が割れます。
※①の強みは、スクール解答を参考に組織風土の指摘に変更しました。

第2問(20点) 全社戦略 期待効果

Q
A社の現経営者は、先代経営者と比べてどのような戦略上の差別化を行ってきたか、かつその狙いは何か。100字以内で述べよ。
A
【構文】A社は、① し、②することで戦略上の差別化をし、③○○で××することを狙った。
【答案例】現経営者は、①出前をやめ来店に絞る他に負担の大きい宴会対応も見直し、②客層を地元ファミリーに絞り厳選材料のオリジナルメニューで競合と差別化し、③経営資源を蕎麦に集中させ商品とサービスの質の向上を狙った。(100字)
根拠が多数あるのでふぞろい流で詰め詰めすれば、よほどヘタクソで読みにくい答案で限り十分な点が狙えそうです。

第3問(20点) 組織構造/行動 助言

Q
A社経営者は、経営統合に先立って、X社のどのような点に留意するべきか。100字以内で助言せよ。
A
【構文】A社は、① ○○し、②××により、③△△で ある点に留意する。
【答案例】A社は、①駅付近での競争激化によりX社の客数や売上が減少し、②店内の担当を横断する意思疎通をX社経営者が担って横のつながりが少なく、③日々のルーティンにとどまる仕事のきつさから離職率が高い点に留意する。(100字)
1文3要素3センテンスの構文を使う時、与件根拠が多数あるので構成に迷う。ここでは組織構造・行動・競争環境に分散させ、あえて満点を狙わない安全答案にしました。またこの第3問は、第4問(1)の組織行動との対応づけの切り分けに要注意です。

第4問(40点) 組織人事/全社戦略 助言

Q
A社とX社の経営統合過程のマネジメントについて、以下の設問に答えよ。
(設問1)
どのように組織の統合を進めていくべきか。80字以内で助言せよ。
A
【構文】A社は、① し、② により、③ で になるよう進めていくべき。
【答案例】A社は、①X社を含む全社が目指す方向を示し、②A社接客リーダーを通じ自主的な問題提起や解決を図るよう促し、③X社従業員の退職への不安を和らげつつ統合を進めるべき。(80字)
助言3問の中で、第3問と第4問(1)はセットで考え、両者で使う根拠を切り分けることができます。ここではA社接客リーダーの自前の店を持ちたい意欲を評価し、X社の統合過程を任せて退職不安を和らげることを重視しました。
Q
(設問2)
今後、どのような事業を展開していくべきか。競争戦略や成長戦略の観点から100字以内で助言せよ。
A
【構文】A社は、①競争戦略上で し、②成長戦略上でし、 ③ で のような事業展開をするべき。
【答案例】A社は、①競争上はX社の競合との価格競争を避けて商品やサービスの差別化をし、②成長上はX社の仕入先を通じて地元産の高品質な原材料を確保し、③地域の食べ歩きを目的とする来訪者を取り込む事業展開をするべき。(100字)
このR5事例Ⅰはやたら事例Ⅱっぽい設定ですが、ラス問の第4問(設問1)は事例Ⅱの【ターゲット選定】+事例Ⅲによくある【自社課題解決】のミックスで解答できます。しかしこれだけミックスされると、何が何やらもうわかりません。

あまりに根拠マシマシすぎる事例は、スクール解答もピタリとおそろいになる。今年のR5Ⅰがふぞろい有利か、あるいはあのテンプレ決めつけ阻止か。これから採点基準がどう作られるかの動向に注目です。

本試験与件+設問別マーカー例

今年のR5Ⅰは、昔の本試験では想像もできない与件マシマシに。ふぞ有利か不利かはこれからの議論として、【設問別マーカー】の新しい技術を使った初学勢ほど有利になるのはガチでしょう。

以下は設問別マーカーをするサンプルです。

第1問
第2問
第3問
第4問(1)
第4問(2)

第1段落 先代がA社を創業(ダミー)

A社は、資本金1千万円、従業員15名(正社員5名、アルバイト10名)の蕎麦店である先代経営者は地方から上京し、都市部の老舗蕎麦店で修業し、1960年代後半にのれん分けして大都市近郊に分店として開業した。鉄道の最寄り駅からバスで20分ほど離れた県道沿いに立地し、当時はまだ農地の中に住宅が点在する閑散とした中での開業であった。

第2段落 まちの食堂として人気に(ダミー)

開業当初は小さな店舗を持ちながらも、蕎麦を自前で打っており、コシの強い蕎麦が人気を博した。出前中心の営業を展開し、地域住民を取り込むことで、リピート客を増やしていった。また、高度経済成長によって自家用車が普及する途上にあったことから、多少離れていてもマイカーで来店する顧客も年々増え始め、県道沿いの立地が功を奏した。付近には飲食店がほとんどなかったことから、地元で数少ない飲食店の一つとして顧客のニーズに応えるようになり、蕎麦店の範疇を超えるようになった。うどん、丼もの、カレー、ウナギ、豚カツ、オムライスなどもメニューに加え始め、まちの食堂的な役割を担うようになっていった。

第3段落 店舗や従業員数の業容が拡大(ダミー)

1980年代には、店舗周辺の宅地化が急速に進み、地域人口が増えるにしたがって、来店客、出前の件数ともに増加していった。1980年代末には売上高が1億円に達するようになった。客数の増加に伴い店舗規模を拡大し、駐車場の規模も拡大した。店舗の建て替えによって、収容客数は30席から80席にまで拡大し、厨房設備も拡張し、出前を担当する従業員の数もアルバイトを含めて20名にまで増加した。

第4段落 競合との競争と正社員の離職(ダミー)

しかしながら、1990年代半ばになると、近隣にファミリーレストランやうどんやラーメンなどのチェーン店、コンビニエンスストアなどの競合が多数現れるようになり、売上高の大半を占める昼食の顧客需要が奪われるようになった。バブル経済崩壊とも重なって、売上高が前年を下回るようになっていった。厨房を担当していた数名の正社員も独立するようになり、重要な役割を担う正社員の離職も相次いだため、一時的に従業員は家族とアルバイトだけになり、サービスの質の低下を招いていった。

第5段落 現経営者による立て直し集中戦略 →第2問

現経営者は先代の長男であり、先代による事業が低迷していた2000年代初頭に入社した。売上高が5千万円にまで低下していたことから、売上高拡大のためのさまざまな施策を行ってきた。2008年にかけて、メニューの変更を度々行い、先代が行っていた総花的なメニューを見直し、この店にとってはオペレーション効率の悪い丼もの、うどんなどのメニューを廃止し、出前を止めて来店のみの経営とし、元々の看板であった蕎麦に資源を集中した。

第6段落 続々見つかる問題点 →第2問

2005年までに売上高は7千万円にまで改善され設備更新の借り入れも完済したが、他方で従業員の業務負荷が高まり、その結果、離職率が高くなった。常に新規募集してアルバイトを採用しても、とりわけ宴会への対応においては仕事の負担が大きく、疲弊して辞めていく従業員が相次いだ。また、新規のメニューの開発力も弱く、効率重視で、接客サービスが粗雑なことが課題であった。

第7段落 現経営者がさらに施策 →第2問

2010年に先代が経営から離れ、現経営者に引き継がれると、経営方針を見直して、メインの客層を地元のファミリー層に絞り込んだ。店舗の改装を行い、席数を80から50へと変更し、個室やボックス席を中心としたことで家族や友人など複数で来店する顧客が増加した。使用する原材料も厳選して、以前よりも価格を引き上げた。また、看板となるオリジナルメニューを開発し、近隣の競合する外食店とは異なる、商品とサービスの質を高めることで、差別化を行った。ただ、近隣の原材料の仕入れ業者の高齢化によって、原材料の仕入れが不安定になり、新たな供給先の確保が必要となりつつある。

第8段落 組織面の整備がA社の強みに →第4問(1)

社内に関しては、正社員を増やして育成を行い、仕事を任せていった。経営者の下に接客、厨房、管理の3部体制とし、それぞれに専業できるリーダーを配置してアルバイトを統括させた。接客リーダーは、全体を統括する役割を担い、A社経営者からの信任も厚く、将来は自分の店を持ちたいと思っていた。他方で、先代経営者の下で働いていたベテランの厨房責任者が厨房リーダーを務め、厨房担当の若手従業員を育成する役割を果たした。管理リーダーは、A社の経営者の妻が務め、会社の財務関係全般、計数管理を行い、給与や売上高の計算などを担った。A社経営者は、接客リーダーとともに会社として目指す方向性を明確にし、目的意識の共有や意思の統一を図るチームづくりを行った。その結果、チームとして相互に助け合う土壌が生まれ、従業員が定着するようになった。とりわけ接客においては、自主的に問題点を提起し解決するような風土が醸成されていた。現経営者に引き継がれてから5年間は前年度の売上高を上回るようになり、2015年以降、安定的に利益を確保できる体制となった。

第9段落 原材料高騰や顧客高齢化が今後の課題 →第4問(2)

コロナ禍においては、営業自粛期間に開発した持ち帰り専用の半調理製品の販売などでしのいだが、店舗営業の再開後も、主に地域住民の需要に支えられて客足が絶えることはなく、逆に売上高を伸ばすことができた。ただ、原材料の高騰がA社の収益を圧迫する要因となっていた。さらに、常連である地元の顧客も高齢化し、新たな顧客層の取り込みがますます重要となっていった。

第10段落 X社からの事業譲渡で成長へ →第4問(2)

そのような状況の中で、かつて同じ蕎麦店からのれん分けした近隣の蕎麦店X店の経営者が、自信の高齢と後継者不在のために店舗の閉鎖を検討していた。A社経営者に経営権の引継ぎが打診されたため、2023年より事業を譲り受けることとなった。A社の経営者は、X社との経営統合による新たな展開によって、これまで以上の売上高を期待できるという見通しを持っていた。

第11段落 組織の強みが真逆なX社 →第3問、第4問(2)

X社はA社から3kmほどの距離に位置し、資本金1千万円、従業員12名(正社員4名、アルバイト8名)の体制で経営していた。店舗は50席で一見の駅利用客や通勤客をターゲットとしており、A社よりは客単価を抑えて顧客回転率を高めるオペレーションであったため、接客やサービスは省力化されてきた。原材料の調達については、X社経営者の個人的なつながりがある中堅の食品卸売業者より仕入れていた。この食品卸売業者は、地元産の高品質な原材料をも扱う生産者と直接取引をしていた。社内従業員の業務に関しては、厨房、接客、管理の担当制がありX社経営者が定めた業務ルーティンで運営されていた。厨房、接客、管理の従業員は担当業務に専念するのみで横のつながりが少なく、淡々と日々のルーティンをこなしている状況であった。店舗レイアウトやメニューの変更などの担当を横断する意思疎通が必要な場合、X社経営者がそれを補っていた。

第12段落 X社の競争環境と従業員の処遇悪化 →第3問、第4問(2)

10年前に駅の構内に建設された商業ビル内にファーストフード店やチェーン経営の蕎麦店が進出して競合するようになり、駅前に立地しながらも急速に客足が鈍くなり売上高も減少し始めていた。この頃から、X社では価格を下げて対応を始めるととおに、朝昼から深夜までの終日営業に変更した。ただ、駅構内に出店した大手外食チェーンとの価格競争は難しく、商品やサービスの差別化が必要であった。営業時間が、早朝から夜遅くまでであったことから、アルバイト従業員のシフト制を敷いて対応していたが、コロナ禍の影響でさらに来店客が減少し、営業時間を大幅に短縮し、アルバイトの数を16名から8名に減らしてシフト制を廃止していた。ただ、営業時間内は厨房も接客もオペレーションに忙殺されることから、仕事がきついことを理由に離職率も高く、常にアルバイトを募集する必要があった。

第13段落 X社統合に伴う機会+脅威で経営相談 →第4問(1)(2)

近年では、地域の食べ歩きを目的とした外国人観光客や若者が増え始めた。とりわけSNSの口コミやグルメアプリを頼りに、公共交通機関を利用する来訪者が目立つようになった。X社を買収後の経営統合にともなって、不安になったX社の正社員やアルバイトから退職に関わる相談が出てきている。A社ではどのように経営統合を進めていくべきか、中小企業診断士に相談することにした。

身近な蕎麦屋が扱われ、一見なんでもアイデア解答を書けてしまうR5事例Ⅰ。ところがこれだけ根拠でマス目が埋まると、実際どう採点するかはすべて採点係の専権事項に。そしてD友館が余計なお痛をぶっこくほど、そこへの配点が下がるでしょう。

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