J事例Ⅲ

【R6Ⅲ搬送機器製造業】加点基準は気配り答案? / サンプル答案を4つ作ってAに改善

作問採点が前年とガラリ変わるため、全員手も足も出ず対策しようのない「事例Ⅲ」。そこで「Ⅱ」で習った「試験の感覚・観念価値」を「Ⅲ」に応用すると、これからは「気配り答案の時代」と気が付きます。

①基本価値:受験者の知識能力を育成評価

この基本価値とは、中小企業診断士試験が、受験者が持つ経営に関する専門知識、論理的思考力、問題解決能力といった基礎的な能力を公正に評価し、中小企業を診断・助言できる水準に達しているかを育成しつつ見極めるという、その本質的な目的を指します。

②便宜価値:試験を通じビジネススキル向上

便宜価値の定義は、試験の利便性だけでなく、受験プロセスそのものが受験者のビジネススキル向上に寄与する側面を指しています。中小企業診断士試験の事例問題は、複雑な情報の中から核心となる課題を見つけ出し、限られた時間内で論理的な解答を構成する能力を求めます。

③感覚価値:正解を通じ知識が増える心地よさ

感覚価値は、受験者が試験問題に触れ、解答プロセスを進める中で得られる「心地よさ」や「知的満足感」を指します。これは、単に正解に至るだけでなく、問題文の構成が明確で理解しやすく、自身の知識や思考がスムーズに展開されることで得られる感覚的な喜びを意味します。

④観念価値:題意に共感し社会貢献への意欲拡大

観念価値は、試験問題が持つより高次の意味や目的に対する受験者の共感、そしてそれを通じて社会貢献への意欲が高まることを指します。このような共感は、単なる知識の習得を超え、診断士として実務で活躍したいという強い意欲、すなわち社会貢献への動機付けを拡大させることに繋がるのです。

①ノウハウ流布で答案が多数派同質化②試験は新たな付加価値へ③顧客に響く感性×社会貢献度の観念
現状多数派の受験者が共通キーワードや決めつけパターンを用いることで答案の同質化が進み、過去問と同じ出題では深い理解や応用力を測りにくい。従来の試験が基礎知識習得を促す効果は一定程度達成され、現代の複雑なビジネス課題に対応するため、より高度な能力が求められている。機能や価格のみでの差別化が難しい現代において、企業は感性や観念によって競争優位を築く必要性が高まっている。
進化:これからの作問採点はキーワードの有無に加え、知識の全体像を踏まえ、多角的視点からの論理的思考と応用力を評価する方向へ進化します。与件から多元的に問題を抽出し、経営戦略、組織、マーケティング、生産など複数領域を統合した戦略的解決策を立案する能力を評価します。事例Ⅰ~Ⅲを問わず経営理念継承や地域貢献 など、情緒的・理念的価値が問われ、そこの対応度が従来以上に評価されます。

【R6Ⅲ搬送機器製造業】

Q
言われると確かに、「事例Ⅲ」は一見点差をつけない地味事例ながら、原則「事例Ⅰ」そっくりさんで、R2鞄とR3金属加工は商品企画のマーケ寄り、R5~6は前年と全く異なる出題。どう対策すれば良いか全くわかりません。
A

それなら多面&多元性を意識して、キーワード選びの精度を高めると良い。 そこでNotebook LMを使い、C社の経営課題5選と設問への対応付けを調べます。

第1問第2問第3問第4問第5問
①特定顧客X社依存からの脱却
②値上げ実現への実務手順
③工程ボトルネックの発見と工程改善
④工程混乱を収拾し工程管理業務を改善
⑤生産DXによる部門連係と業務の高度化
①特定顧客X社依存からの脱却

C社は年商約14億円の搬送機器製造業ですが、取引先であるX社からの受注が売上全体の6割を超えており。コロナ禍以降のX社の国内生産移管によりC社の受注量は増加傾向にあるものの、特定顧客への過度な依存は、今後の経営において極めて大きなリスクとなり、持続的な成長を阻害する要因となります。

このリスクを分散し、経営基盤を多様化することが全社戦略上の喫緊の課題です。C社社長が検討している「小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大したい」という新しい事業展開3 を成功させ、X社への依存度を低減することが不可欠です。

②値上げ実現への実務手順

C社の顧客企業との契約金額は、最近の材料費や人件費の高騰に対応した見直しが行われているものの、現状のコスト高に十分に対応できていない状況にあります。現在の見積金額は、過去に製造した搬送機器の契約金額を参考に、営業部員が材料費、社内加工費、その他の経費を合計して算出しており、最終契約金額も営業部長が決裁しています。

この属人的かつ過去実績ベースの算出方法では、変動する市場価格や原価高騰を正確に反映することが困難であり、C社の収益性を直接的に圧迫する重大な要因となっています。

③工程ボトルネックの発見と工程改善

C社の製造工程では、製缶工程(製缶課)で頻繁な残業や休日出勤が発生し、納期対応のため週次日程計画表の変更が常態化しています。これは、製缶課が製造部全体のボトルネック工程となっており、製造部全体の生産能力を制約していることを明確に示しています。

受注量の増加や顧客からの納期短縮要請が顕著になる中で、ボトルネックの解消と全工程での負荷平準化を図り、製造部全体の生産能力を向上させることが喫緊の課題です。

④工程混乱を収拾し工程管理業務を改善

C社では、受注量の増加や顧客からの納期短縮要請により、大日程計画や週次日程計画などの工程管理に混乱が生じています。現在は何とか納期を確保できていますが、この傾向が顕著になった場合、現在の管理体制では納期遅延が生じる恐れがあります。

安定した生産計画を策定し、納期遅延を未然に防ぐためには、経験に頼る工数見積もりを標準化し、より客観的・定量的なデータに基づいて計画を立案できる体制に改善することが不可欠です。

⑤生産DXによる部門連係と業務の高度化

C社では、受注量の増加や納期短縮要請が工程管理の混乱を招いており、C社自身もIT利用を図りながらその対応を検討している状況です。

混乱を解消し、納期遅延のリスクを回避するためには、デジタル化された情報をさらに活用し、営業部、設計部、製造部間でリアルタイムに情報共有できるシステムを構築することが課題です。

ここ2年作問採点が毎年変わり、「真の魔物」と呼ばれる「事例Ⅲ」。その答をうっかり覚えてしまうとおベテとふぞに一直線なので、専門性の高い第2~4問は前回解説に委ね、「事例Ⅰ」ノリで解ける第1&5問を先に得意化します。

第1問:使い残した根拠を最後に書く「強み」

C社の強みを80字以内で述べよ。

70点答案(20点)65点答案(16点)
強みは、①C社長の工場設備レイアウト設計経験による搬送機能への提案力、②充実したNC加工機や技術者による特注品の受託生産能力、③X社との安定的な取引関係である。(77字)強みは、①社長の工場生産性向上提案力と、②NC加工機等の生産設備や技術者による特注品受託生産能力、③設計から据付までの一貫生産体制である。(67字)
【キーワード15点】
C社長の工場設備レイアウト設計経験:3点
搬送機能レイアウトの提案能力:3点
NC加工機や技術者が充実:3点
特注品の受注生産力を持つ:3点
X社との安定的な取引関係:3点
→C社の強みを簡潔ながら多面的な視点で捉えることにより、後に続く第5問の新事業提案における強み根拠になる。
【キーワード12点】
C社長の工場生産性提案能力:3点
NC加工機や技術者が充実:3点
特注品の受注生産力を持つ:3点
設計から据え付けまでの一貫生産体制:3点
→70点答案に比べ、C社長の経験&提案能力が言い足りていない
【多面・多元性5点】
多面性:+3点
・強みを3つの要素に分けてバランス良く指摘している。
多元性:+2点
・C社の経営課題がX社依存脱却である点を意識し、後で使う強みを明確に記述している。
【多面・多元性4点】
多面性:+3点
・強みを3つの要素に分けてバランス良く指摘している。
多元性:+1点
・X社との安定的な取引体制に言及しないことで、第5問新事業提案へのつながりがやや薄くなる。

上位5%は第5問を先、その使い残した根拠を第1問に使うことが定番で、「X社との安定的な取引関係」を第1問に書くかは微妙。第1問にそこまで気を使わず、与件の根拠引用で満点と割り切ります。

60点答案(16点)50点答案(12点)
強みは、社長の搬送機能に関する有効な提案力、NC加工機等の生産設備、部品構成表デジタル活用による管理体制、国内生産による安定供給力である。(69字)強みは、X社で培った経験に基づく社長の提案力と、特注品受託が可能な技術力、そして国内生産による安定供給力である。(56字)
【キーワード12点】
C社長の搬送機能の提案能力:3点
NC加工機や技術者が充実:3点
部品構成表のデジタル活用:3点
国内生産による安定供給力:3点
→70点答案に比べ、C社長の経験&提案能力が言い足りていないが、他の根拠でも加点がある。
【キーワード9点】
C社長の提案力:3点
特注品の受注生産力を持つ:3点
国内生産による安定供給力:3点
→高得点答案に比べて言及する強みの種類が少ないか、あるいは表現が抽象的である。
【多面・多元性4点】
多面性:+3点
・強みを3つの要素に分けてバランス良く指摘している。
多元性:+1点
・X社との安定的な取引体制に言及しないことで、第5問新事業提案へのつながりがやや薄くなる。
【多面・多元性3点】
多面性:+3点
・強みを3つの要素に分けてバランス良く指摘している。
多元性:±0点
・最低限必要な3点の言及に留まることで、第5問で解決する課題への広がりを欠く。

第1問強みは手あたり次第に列挙・詰め込めばヨシでなく、第5問新規事業の解決に使う強みを特定したい。よって第5問を先に書いて第1問を埋める上位5%の手順が賢明です。

第5問:ここで差がつく新規事業~新規の助言は「多元的」~

C社社長は、小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大したいと考えている。この新しい事業展開を成功させるにはどのように推進するべきか、120字以内で助言せよ。

70点答案(19点)65点答案(16点)
C社は、社長の設備レイアウト設計と搬送機能提案力を営業部に承継し、営業部が小規模施設の新設・更新を計画する企業のニーズを収集する。これにより、自社企画製品を自社要員で設計製造からメンテナンスを含む直接契約を推進し、X社への売上依存を回避する。(120字)C社は、社長の工場設備レイアウト設計と搬送機能の提案力を営業部に継承し、小規模施設の新設・更新企業からニーズを収集し、C社の設計・製造体制を活かし自社企画製品を設計・製造することで直接契約を促進し、X社以外の取引先開拓と販路拡大を推進する。(120字)
【キーワード14点】
「社長の設備レイアウト設計と搬送機能提案力の承継」:3点
「小規模施設の新設・更新を計画する企業のニーズを収集」:3点
「自社企画製品を自社要員で設計製造:3点
「メンテナンスを含む直接契約」:3点
「X社への売上依存を回避」:2点
→主要なキーワードがほぼ全て網羅されており、特に「メンテナンスを含む」という点が、与件文の情報を深く読み込む点で優れています。
【キーワード12点】
「社長の設備レイアウト設計と搬送機能提案力の承継」:3点
「小規模施設の新設・更新を計画する企業のニーズを収集」:3点
「自社企画製品を自社要員で設計製造:3点
「X社以外の取引先開拓と販路開拓を推進」:3点
→70点答案に比べて記述の具体性や各要素間の連携の深さがわずかに劣るものの、方向性としては適切であり、合格水準の答案である。
【多面・多元性5点】
多面性:+3点
・第1問で挙げたC社の多面的な強みを、そのまま解答に織り込めています。
多元性:+2点
・120字あるマス目を活かして「推進する」で終わらせず、「X社への売上依存回避」にも気配りしています。
【多面・多元性4点】
多面性:+3点
・第1問で挙げたC社の多面的な強みを、そのまま解答に織り込めています。
多元性:+1点
・設問要求通りの解答ですが、70点答案に比べて多元性を△1点しました。

70⇔65点答案が引用するキーワードはほぼ同じですが、120字以上のマス目は読みやすさを考え2文に分割すると、これだけ読みやすく・加点しやすくなります。

60点答案(14点)50点答案(10点)
C社社長の工場設備レイアウト設計や搬送機能の提案力を営業部に継承し活用する。小規模施設の新設・更新ニーズを収集し、自社企画製品を設計・製造することで直接契約を増やす。X社への高い依存度を減らすため、新規顧客開拓と販路拡大を進めるべきである。(120字)C社社長の搬送機器に関する提案力を活かし、小規模施設の新設・更新企業に対し、工場の生産性を高める自社企画製品を提案する。設計・製造まで一貫して行うことで直接契約を促進し、事業を拡大する。(93字)
【キーワード12点】
「社長の設備レイアウト設計と搬送機能提案力の承継」:3点
「小規模施設の新設・更新を計画する企業のニーズを収集」:3点
「自社企画製品を自社要員で設計製造:3点
「X社以外の取引先開拓と販路開拓を推進」:3点
→キーワードの内容こそ65点答案に準じますが、それぞれの因果関係が不明であり、追加の加点がしづらい答案です。
【キーワード8点】
「搬送機器に関する提案力」:2点
「小規模施設の新設・更新を計画する企業」:2点
「生産性を高める自主企画製品を提案」:3点
「設計・製造まで一貫して行うことで直接契約」:1点
→設問の核となる要素の一部は捉えている設問の核となる要素の一部は捉えているが、全体的に記述が抽象的で、具体的な推進ステップが見えにくい
【多面・多元性2点】
多面性:+2点
・解答要素こそ多面であるが、並列列挙すると因果関係の理解を確かめづらい。
多元性:±0点
・ここでは加点なしにとどめたが、並列列挙答案は今後減点リスクがある。
【多面・多元性2点】
多面性:+2点
・解答要素こそ多面であるが、並列列挙すると因果関係の理解を確かめづらい。
多元性:±0点
・聞かれたことに答える未満の答案になっており、期待感を持ちづらい。

同じキーワードを使う所までは同じでも、マス目を並列列挙にすると加点が下がり、そのキーワードまで落とすと合格ボーダー未満になります。

今日のまとめ

Q
ここ2年の「事例Ⅲ」は本気で初見丸出しになり、同じキーワードを使っても答がバラける。このとき、いい年こいて下手な鉄砲丸出しのキーワードの詰め詰め並列列挙より、読み手に配慮した「気配り答案」に+αの加点があるだろう。
A

本気の「助言」を問えば問うほど、複数の正解が出てきてその答えは一つに決まらない。ありもしない正解を求めてスクールに30万円課金するより、「気配り答案の書き方」をAIに習う方が得策です。

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