難易度変化ばかり激しい「Ⅳ」ばかりに夢中になると、NPV・イケカコ辺りで思考停止になってしまう。そこで今の会計業界が競って狙う【FP&A】の姿を紹介します。
イケカコ(イケてないカコの意思決定)の遥か先の先。FP&Aとは?
| ①最初に黒字化(Ⅳ第2問CVP) | ②次に設備投資(Ⅳ第3問NPV) | ③設備投資を資金で支える |
|---|---|---|
| 基礎的なCVP分析から、より高度な管理会計を習得させ、事業の採算性やコスト構造を深く理解する力を養成することにある。 | 次に、資金繰りや設備投資などのファイナンスを意識させ、企業の現在から将来にわたる財務戦略立案能力を問う。 | 最終的な狙いを、将来予測と分析に基づき経営層の意思決定を支援し、企業の成長を牽引するFP&A人材の育成に置く。 |

「財務」に弱い診断士では、値上げや賃上げの根拠を示せず、意思決定を支えられない。
まず限界利益を把握し、原価構造と利益構造を数字で語れることが診断士の入口である。
値上げ・賃上げ・生産性向上の時代では、CVP分析を起点に限界利益管理が突破口となる。
「どこまで売れば黒字か」を即答できる能力こそ、事例Ⅳが最も鍛える本質である。
事業承継・M&Aが一般化する中、DCF法に基づく企業価値評価が重要となる。
企業の未来を引き継ぐため、財務は“過去の数字”ではなく“将来キャッシュフロー”を見る武器となる。
DX時代のKPI経営は、事業部門の「やった感」で終わらせず、財務KPIで効果を測定する。
さらに非財務KPIと結びつけることで、施策の持続性と経営成果を一体化できる。
【業界トップの拡大解釈】事例Ⅳが促す、管理会計→FP&Aへの進化
JTCになればなるほど、経理⇔財務⇔経営企画の組織の壁で素早い意思決定を欠き、その代表例がかつて国内No.2だった大手自動車メーカー。そうでなくイマドキのデジマの如きデータドリブンで、企業成長をリードするのがFP&Aを目指す診断士です。
Step-1:値上げ賃上げ生産性の時代
原材料費や人件費の高騰というコストプッシュ型インフレ下では、中小企業は限界利益率が急激に圧縮される構造的な脆さを抱えてしまうものです 。
CVP分析を、固定費や変動費が増加した場合の感度分析や、目標利益達成に必要な売上高・価格決定に用いることで、戦略的意思決定ツールとして活用できます 。
持続的な賃上げを実現するためには、労働分配率を安定させながら、付加価値生産性、すなわち限界利益率を同時に高めることが前提となります。
TOC(制約条件の理論)に基づき、ボトルネックとなっている工程にDX技術や高性能な設備投資を集中することで、全体の生産スループットを最大化できます。
コストや需要の予測が困難な不確実性の時代には、従来の年次固定予算は策定直後に陳腐化するリスクが高いため、ローリング・フォーキャスト(RF)の導入が必須となります。
予算実績の差異分析を単なる評価で終わらせず、市場予測モデルの誤りなど原因を特定する学習と捉えて計画に反映させ、PDCAサイクルを通じて予測精度を向上させます。
試験が事例Ⅳをこうまで優遇する背景が、値上げ賃上げ生産性の時代に突入したこと。この時、賃上げ=固定費UP、材料高=変動費UPと捉え、であればPrice値上げが必須と社内合意形成するのが、FP&Aの役目です。
Step-2:事業承継・M&Aが普及し企業価値
事業承継の外部化としてのM&Aが常態化しつつあるため、経営者は公正な企業価値を客観的に把握し、M&A交渉を有利に進めることが不可欠となります 。
評価手法にはDCF法、時価純資産法、類似会社比較法という三つのアプローチがありますが、中小企業では計算の複雑さや適切な類似企業の選定に実務的な難しさがあります 。
DCF法は将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を現在価値に割り引くため、企業の無形資産や経済価値を最も忠実に反映し、戦略投資の経済合理性の検証に役立ちます。
割引率であるWACC(加重平均資本コスト)は、負債コストと株主資本コストの構成要素を通じて最適な資金調達構造という経営判断を反映し、CF予測の厳格化と余剰資産・有利子負債の調整が、M&Aの株式価値を決定します 。
財務DDで偶発債務や収益認識基準の相違などの潜在的なリスクを事前に特定できなければ、PMI(統合プロセス)が予期せぬ追加コストにより遅延し、統合失敗の主要因となります。
PMIの成功は、財務・経理機能の早期統合が鍵であり、統一された会計方針の確立や内部統制の強化を通じて、グループ全体のガバナンス体制を速やかに確立することが重要です。
今はやりのM&Aには、買収先の企業価値を見誤ると、買収側本体の経営を揺らがすリスク。身近な例では、隣の一発パクリを札束で買収し、上位5%に毛嫌いされて末路を迎えた同友館です。
Step-3:財務をDX時代のコアKPIに
データ分析能力の向上により、財務分析は記述や診断の段階から、将来の最適行動を提言する予測的・処方箋的ファイナンスへと進化します。
処方箋型ファイナンスは、「価格をX%上げると、運転資本がY%解放される」といった具体的な行動プランを経営に提供し、財務部門を戦略的意思決定支援センターへと転換させます。
経営再建に見事失敗したかつて国内No.2の自動車メーカーのように、企業のバックオフィスが肥大化し官僚制の逆機能を迎えると、社内組織がタコ壺化して正しいリアルが経営上層部に伝わらず、そこそこ悲惨な末路を迎えてします。
そうでなく事業アイデアや売上を伸ばす社長とタッグを組む、優秀なCFOがいる先進企業では、社内意思決定をキャッシュベースに統合し、「稼ぐビジネス」を実現しています 。
近年の「事例Ⅰ」出題に見られるように、かつて掲げた経営理念を現代風に見直し、キャッシュを稼いで企業成長&賃上げを実現。これなら発想が古くてドン臭い中小企業でも、ベンチャー並みの高成長をこれから実現できる気がするでしょう。
そこをFP&A視点でいえば、常に「キャッシュを稼ぐ」ことに社内意思決定を揃えることで、事業部の言いっぱなしがなくなる。つまり「その投資額に対し」「そのプロジェクトはどれだけキャッシュを稼ぐ」に社内目線を揃えると、失敗M&Aのリスクをゼロにできます。
キャッシュの大事さをわかっていないノロマ企業がうっかりKPI経営を始めると、事業部が勝手に作るイカサマ指標が横行し、「儲かっている筈がカネがない」デスバレーを迎えてショボン。そこで診断士の力を借りてでも、キャッシュ裏付けのないなんちゃって経営をマストで避けます。
今日のまとめ
少なくない上場企業が「会計不正」で姿を消すように、終わった結果の集計ばかりする「経理部門」にミライはない。そうでなく「財務・キャッシュ」の視点で将来を描く診断士に、期待の視線が集まる一方です。