生成AIの新機能 Deep Researchを使うと、あらゆるネットの声を勝手に拾って要約してくれる。そこで「出題の趣旨」を先に読み込ませ、次に「受験側の声」をサーチすると、意外なギャップが見つかりました。
では生成AIの新機能 Deep Researchで、「Ⅳ」の作問採点変化に受験産業がどう右往左往したかの声を拾う。それを「出題の趣旨」と比べ、いかに的外れかをお見せします。
まずR4~R6出題の趣旨を解析させる
①作問の進化とその狙い | ②設問文や計算条件を複雑にする意図 |
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基礎の定着と深化 各年度とも、まずBS・PLから財務指標を算出し、企業の財務状況や問題点を把握する能力が問われています。令和4年度では「財務比率の算出」および「財務的問題点の分析」、令和5年度や令和6年度では同様の能力に加え、同業他社との比較や経営特性の読み取りが重視されています。 | 大量情報の処理能力 問題文が長文化・複雑化することで、受験生には「与件から必要な情報を的確に抜き出し、論点ごとに整理・分析する」能力が求められます。これは実務における多様な情報の中から重要事項を見極める力と直結しており、単なる計算力ではなく、情報処理能力や論理的思考力の向上を狙ったものです。 |
第2~3問は継続難化 (R6はやや易) 第2~3問では単なる計算問題から、複数の制約条件下での最適セールスミックスや、セグメントの存廃、さらにはNPVによる設備投資の評価など、実際の企業経営に即した応用力が問われる傾向にあります。特にR5~R6年では、投資実行タイミングや延期オプションの価値評価など、将来のキャッシュフロー予測に基づく意思決定の側面が強調されています。 | 「Ⅳ」もケーススタディ化 設問条件に複数の制約や変数を盛り込むことで、実際の経営判断における複雑な状況―たとえば、複数のシナリオやリスク要因を同時に考慮する必要性―を反映しています。受験生は、各設問を通じて「理論だけでなく、現実の経営課題を総合的に解決するための判断力」を養うことが狙いです。 |
主に留意点を問う第4問 第4問では、OEM生産の特性や内部振替価格、さらには社長の実質的な意思決定権など、企業の実務上のリスクや管理会計的課題に対する理解と助言能力が問われています。これにより、単なる計算や分析に留まらず、実際の経営現場で直面するリスクマネジメントの視点を持つことが求められています。 | 実務・実戦経験があるほど有利 単純なパターンの暗記・計算ではなく、条件が多岐にわたる中で最適解を導出する過程は、実務においても非常に重要なスキルです。こうした複雑な設問設定は、実務経験や深い理解に裏打ちされた分析力・応用力を有する受験者をより正確に選抜するための工夫であるといえます。 |
【まさかの事例Ⅳ対決】出題の趣旨 vs. 受験側の声
この程度の要約はこれまでのAIでも出来る。Deep Researchの威力は「ネットの声をくまなく拾い集める」ことで、その結果受験産業の反応が全く的外れと判明します。
「出題の趣旨」を与えない前提で、受験側がどう右往左往したかをreseachさせる。
Step-1:「事例Ⅳ」作問進化に対する誤った反応
R2~6年度を通じて出題テーマは一貫していますが、その設定条件のひねり具合や複数論点の統合、計算量の増大は、ペーパーテストで測れる範囲を逸脱しました。
いずれの年度もCVPに関する問題が出ています。例えば令和3年度第3問では「目標利益1,500万円を達成するための年間販売数量」を求めさせる典型的なCVP計算でした。一方、令和4年度第2問では製品ミックス最適化という形でCVPを応用し、労働時間3,600時間という制約下で利益最大となる製品別生産数量と利益額を算出させています。さらに同問設問2ではアルミ材料の上限6,000kgという複数制約を追加し、線形計画法の知識を要する高度な分析へ発展しました。このように単純な損益分岐点計算から、多製品・複数制約下での利益最大化計算へと、CVPのテーマ自体は同じでも要求水準が上がっています。
CVPと並び、第2問では製品の取捨選択や外注判断など短期意思決定会計も頻繁に問われます。令和4年度第3問(設問1)では中古車の整備を自社で行うか外注するかの判断について、関連原価を計算し「何円までなら外注すべきか」を求めました。令和5年度第2問(設問2)では赤字製品Xの販売中止による影響を検討し、需要移転がない場合の中止可否判断と、需要が一部移転するならどれだけ売上増が必要かを計算させています。このように製品ラインの撤退判断や内製・外注判断、特別注文受諾など、企業の短期的な意思決定を扱う問題が近年特に重視されています。しかも一部年度ではCVP分析と絡めて同一問内で問うケース(例:令和5年は損益分岐点分析の延長で製品中止判断まで一連で出題)もあり、複数論点の組み合わせによる応用力が試されています。
毎年ほぼ確実にNPVを算出する問題が出題されていますが、その難易度は上昇傾向です。令和2年度第2問では期待値NPVがテーマとなり、効果が出る場合・出ない場合の2通りの投資シナリオと発生確率が与えられました。基本的な論点ながら「効果有無で投資期間や発生CFが異なる」という凝った設定で、解法を思いつけない受験者が続出しています。令和3年度第2問では古い設備を更新する取替投資のNPVを問う問題で、まず初年度の差額キャッシュフローを計算させた上で、NPVを算出し、さらに「1年投資を延期すると有利になる条件(購入価格)」まで求めさせました。令和5年度第3問では販売数量が二通りにブレる不確実性下での投資判断という設定で、販売量10,000個の場合と5,000個の場合のNPVをそれぞれ計算し期待NPVを求めたうえで投資可否を判断させています。さらに初年度に需要の確定を待ってから2年目に投資開始した場合のNPVを算出し、即時投資との比較を述べさせるという、実質的にリアルオプション(投資タイミングの選択権)を考慮した高度な設問でした。近年のNPV問題は減価償却の節税効果、運転資本の増減、途中売却による処分CF、確率シナリオや意思決定の分岐など、一級レベルの知識・応用力が要求される傾向にあります。
第4問などの記述問題では、会計・財務知識の理解やケースへの当てはめが問われます。令和2年度は第3問で「負ののれん」に関する知識説明、第4問でROI(投下資本利益率)の活用に関する設問が出題されました。令和3年度第4問は与件文からの抜き出し要素が強い記述でしたが、令和4年度第4問では「中古車販売事業における財務的リスクとそのマネジメント」を2点挙げさせるなどケース固有の分析力を問う問題になっています。令和5年度第4問ではD社がOEM提供と自社生産を行う場合の財務上の利点についての設問(2問構成)が出され、損益構造や収益性に関する知見が求められました(設問1・2でOEMと自社製造それぞれのメリットを説明する内容)。令和6年度第4問ではさらに専門的で、内部振替価格(事業部間取引価格)の設定方法の問題点や、オーナー社長が投資決定権を握る場合の業績評価の留意点といった管理会計論の論点が問われています。このように知識問題も単なる用語説明に留まらず、経営管理上の制度や仕組みの弊害・留意点を現場目線で論じさせる傾向が強まっています。年度を追うごとに要求される知識の専門性も高くなっており、最新年度では原価計算や責任会計の深い理解まで試されました。
AIがサーチしたネット勢・スクール勢の言い分は間違いではない。でもこの内容をおベテが80分で解ける・理解できるとするのは無理ゲーな。
Step-2:設問文のクソ長文化に対する誤った反応
ところが「NPVは白紙で出せ!」と吼えた超絶スクールが余程癇に障ったのか。計算問題の長文化の勢いはとどまる所を知りません。
問題文を長文化することで、単に計算式を知っているだけでは太刀打ちできず、与えられた情報を取捨選択し構造化する力が試されます。例えば令和2年度第2問(設問2)のNPV問題では、制約条件が丸1ページにわたり箇条書きされており、一見して非常に複雑に見えました。実際この問題は他校解説で「捨て問」と評され、多くの受験生が後回しにしたほどです。しかし設問のヒントが箇条書きで整理されている点に着目し、冷静に読み解けば解法に気付ける構成でした。試験委員はこのようにあえて情報量を増やし、「落ち着いて要点を整理できるか」という能力まで評価しようとしていたと言えます。「NPVの場合、図に描いて視覚化することでCIFとCOFのタイミングが理解しやすくなる」という解説もある通り、複雑な条件を図表やタイムラインに整理できる受験者かどうかが差となりました。
難解な設問は、財務に強い一部の受験者が高得点を独走するのを防ぎ、全体の得点調整を図る狙いもあります。試験委員は毎年、「誰もが解ける基本問題」と「ごく一部しか解けない難問」を織り交ぜています。難問では解答者を限定し、財務に精通した“オリンピック選手”だけが満点を取るのを抑制します。令和2年度第2問のように基本論点であっても毛色を変えて出題する(CVPとNPV期待値を組み合わせ、変則的な条件を付す)のはその典型例です。受験者側から見れば「解法が想起できないと時間をロスし、計算量も多いため手強い問題」と映りました。これはまさに試験委員が意図的に難度を調整した設問であり、対応力・瞬発力を持つ一握りの受験者しか完答できないよう仕組まれていました。こうした難問を設けることで、多くの受験者は部分点獲得に留まり差が付きにくい一方、限られた高能力者だけが突破口を開ける構造になっています。
問題文が長く条件が複雑になると、一見すると解答手順が定型化しません。この状況下で問われるのは理論の本質理解と応用する思考力です。例えば令和6年度第2問では線形計画法を用いた最適生産配分に加え、取引先Y社の最低購入量要求に応じるための価格引き上げ条件を逆算させています。ここでは単純な計算力だけでなく、「制約充足のための価格調整」という経営判断への洞察が必要でした。長文化した設問文にはこうした経営ストーリーが織り込まれており、受験者のビジネスセンスや洞察力まで評価しようとしているのです。さらに令和6年度第4問では内部振替価格やオーナー経営者下での業績評価といった複数の管理会計論点を絡めています。これは現実の企業経営で起こり得る複合的問題を短時間で分析できるかを見る狙いと考えられます。総じて、問題文・条件を複雑化することにより「与件読解力+計算力+応用思考力」を総合的に測定し、単なるパターン暗記型ではない真の実力者を選抜しようとしているといえます。
要するにケーススタディ&問題解決とは、大量のクソ文章から手がかりを探す読解力から始まる。そもそも読解力がないからベテなのに、この長文では逆効果以前と気が付くセンスが問われます。
Step-3:ここから導かれる「Ⅳ」受験主導は是か否か?
計算が難しくなる一方で、ベテになるほど処理能力が衰えるから、そのアンマッチは広がるばかり。そこにヘタレな受験産業が、どんなヘタクソアドバイスをするかを観察します。
本論点(CVP、意思決定会計、投資評価)はもちろん、近年問われた高度論点にも目を通しておきましょう。例えば、セールスミックス最適化や線形計画法、内部振替価格の問題点、ROI・RIによる業績評価の留意点など、簿記1級レベルの論点が出る可能性も視野に入れておくと安心です。実際令和6年度第4問では全部原価ベースの振替価格がもたらす過剰生産誘因について問われており、原価計算の深い理解が求められました。また、NPVでは減価償却の税効果や運転資本調整、確率付き意思決定(意思決定ツリー)など幅広い知識が要求されています。苦手分野を作らず、テキストの隅にある応用論点まで含めて体系的に理解しておけば、初見の設定でも理論に立ち返って解答方針を立てられます。
与件文や設問文から何を問われているのか瞬時に見極める訓練が必要です。試験本番ではまず各設問をざっと眺め、「これはCVPだな」「こちらはNPVの取替投資だな」と出題分類を即座に判断することが重要と指摘されています。実際、設問冒頭や解答用紙の様式から分野が類推できる場合も多く、例えばNPV計算なら割引率や現価係数の記載、CVPなら○○円や○○個を求める指示で察しが付きます。設問ごとに難易度(条件の多さ、計算ステップ数、見慣れない設定の有無)を瞬時に見極め、解答の優先順位を決めることも有効です。例えば「この設問は与件の抜き書き記述だから後回しでも書ける」「この計算問題は配点高いが難解なので飛ばす判断もあり得る」といった取捨選択がポイントになります。過去問演習では、ただ正解を出すだけでなく「設問ごとのアプローチ判断」をシミュレーションしましょう。
計算問題は途中経過も含めて丁寧に解く習慣を身につけます。特にNPVではタイムラインを描いてキャッシュフローの発生タイミングを整理することが有効です。どの期にどんなCF(営業利益・減価償却・税金・投資・処分・運転資本変動)が発生するかを書き出せば、複雑なケースでも見通しが立ちます。また、CVPでは複数期間の財務データから変動費率と固定費を逆算するようなパターンも見られるため、連立方程式を立てて解く練習もしておきましょう。公式を当てはめるだけでなく、与件に沿って方程式を組み立てる力が大切です。さらに、問題文の指示(単位・桁数・四捨五入など)を見落とさないよう注意します。令和5年の受験者再現では、変動費率を丸めた結果固定費がズレて混乱したという声もありました。本番では指示どおりの精度で計算し直す冷静さを保ち、解答欄に求められる形式((a)欄=答案、(b)欄=計算過程 など)に合わせて途中計算も丁寧に記載しましょう。途中計算を書く設問では、最終答が間違っても道筋が合っていれば部分点が期待できます。
事例IVは計算が多いため時間との戦いです。解く順番の工夫も合否を分けます。ある合格者は「経営分析(第1問)と記述問題は必ず先に取り組んだ」と述べています。財務分析はパターンが確立しており確実に点が取れるので先行し、記述問題も与件抜き出し型なら短時間で書けるため、時間をかけずに埋めてしまう戦略です。計算問題は後回しにしてしまうと焦りでミスが増えるため、自信のある分野から手早く着手し、難問にハマって時間を浪費しないよう注意します。試験委員が意図的に入れている超難問(いわゆる「捨て問」)は思い切って飛ばす決断も必要です。例えば令和2年の第2問は多くの方が手こずり時間を奪われましたが、配点30点中の一部は捨てても他の設問で取り返せるよう配点調整されている可能性があります。全体を俯瞰し、「全員が取れている問題を確実に取り、差がつく難問は捨てる」という割り切りも合格戦略上有効です。実際、近年の試験では満点を狙わずとも60点台を固めれば十分合格ラインに届きます。基本問題を落とさず着実に得点し、難問奇問は周囲も解けていないと割り切って精神的な安定を保ちましょう。
最後は場数がものを言います。令和○年度と年度を追うごとに問題のクセがありますので、最新年度までの過去問を時間制限内で解く訓練を必ず行ってください。解き直しの際は単に答え合わせをするのでなく、設問の意図や与件との対応関係を考察しましょう。「なぜこの条件設定になっているのか?」「設問は何を測ろうとしているのか?」と自問しながら復習することで、未知のケースにも応用できる思考パターンが養われます。加えて、本番同様の様式で答案を書く練習も有効です。計算過程を書き慣れておくと、本番でもケアレスミス防止になります。記述問題についても制限字数内で簡潔に要点を書く訓練をしておきます。与件を引用しつつ自分の知識を織り交ぜる答案構成を練習しておくと、難しい知識問題でも何かしら埋めて部分点を拾えるでしょう。実務の現場では、複雑な数字や条件下で最善策を見出す力が求められます。試験も同じく「落ち着いて分析し、限られた時間でベターな解を導く」プロセスそのものが試されていると心得て、日頃からケース問題に取り組んでください。過去5年分の傾向を踏まえた十分な準備で、本番でも平常心で取り組めるはずです。自信をもって頑張ってください。
ベテ専スクールの言い分はわからなくもないが、このレベルを理解できればそれこそ経理で一生飯が食える。そもそもここが「中小企業相手の資格である」自覚程度は持ちましょう。
今日のまとめ
R2以降の「Ⅳ」の難化ぶりは、既に人類が80分で対応できる範囲をおっきく超えた。そして中小企業が相手の診断士に求められるのは、超絶理論を追いかけるのでなく、「難しいことを簡単にして説明できる」スキルと気が付くセンスが必要です。