K事例Ⅳ

【1級意思決定の罠(下)】業務&構造的をセットで意思決定 / 計算のウェイトは3割程度

「Ⅳ」がR4~R6の3年連続で1級意思決定会計を出して仕掛けた罠とは、何かに全賭けしないクールな意思決定力を保つかどうか。一例として周囲の迷惑顧みず布教を試みる「EBA信者」「ふぞろい信者」は「Ⅳ」をごく苦手にすると知られます。

Q
具体的には、会計パーソンはどの取引でも常に借方/貸方の2面で捉え、バランス感覚に長け、そのメリット/デメリットを常に同数挙げる。その上で全体像を最初に捉え、複数案に対し持てる経営資源を優先度順に配分していく。
A

「Ⅳ」を苦手にする方の傾向は、「論点を知識でつなげる意識が弱く」「ぶつ切りにされた過去問の答を覚える計算力」が勝負と勘違いしがち。そのウェイトが、試験委員の求めるスキルの3割未満であるとバッサリ行きます。

① 業務的/構造的意思決定はテキストの1/3②計算力は知識力・応用力を含めた1/3③Ⅳのカギは計算力よりも知識と応用
「Ⅳ」では、数値を用いて経営上の意思決定を問う問題が出題され、インパクトがあり受験者の目を引きますが、意思決定会計全体では1/3の範囲に過ぎません。したがって、これに特化した計算練習だけでは全体の力を養うのに全く不十分です。「Ⅳ」が計算力なる痛勘違いを避けるには、それは知識力・応用力と並ぶ1/3の要素と弁えます。試験では計算の正確性に加え、背景にある経営の理論を理解し、その結果を的確に解釈し、周囲に説明するスキルが求められます。「Ⅳ」で稼ぐポイントは、1級意思決定で学んだ知識を計算問題で応用できるかです。今回のR6「Ⅳ」の大ボーナス点で、試験委員が計算力ではなく総合力を重視し、特に応用力の高さを求める姿勢が明らかになりました。

【1級意思決定の罠(下)】業務&構造的をセットで意思決定 / 計算のウェイトは3割程度

「Ⅳ」計算問題における計算力のウェイトは、知識力・応用力を合わせた1/3以下に過ぎない。同時に今日AI解説する業務的/構造的意思決定論点の知識が、第①回第②回と合わせた3割程度の自覚を持てば、R7「Ⅳ」では勝ち確な。

第①回第②回第③回
§1 管理会計のための原価計算
§2 直接原価計算
§3 CVP分析
§4 最適セールス・ミックスの決定
§5 予算編成
§6 事業部の業績評価
§7 予算実績差異分析
§8 業務的意思決定
§9 設備投資の意思決定
§10 戦略的原価計算

しかしテキスト読んだだけでは身に付かず、計算問題に戻って手を動かして初めて納得するのが簿記の特徴。そこで今日のテキスト知識+問題集での計算力を、両面からバランスよく鍛えるあなたが大好きです。

§8 業務的意思決定

Q
ここでいう「意思決定」とは主に、経営上複数の案が持ち上がった時に経理部長がやってきて、数値の上でどちらが有利かを合理的に示すこと。うちCVPの延長上で主に限界利益概念で考えるのが業務的、より大規模になって減価償却費や時間価値を考慮するのが構造的意思決定?
A

それが100%正確な表現ではないですが、まず「自分の言葉で説明してみる」のが大事。そして出題の趣旨で振り返ると、R4第3問(1)で内外製、R5第2問(2)でセグ損益、R6第2問(2)で追加加工が問われたことが分かります。

①経営意思決定

業務的意思決定
 短期的・現場的な判断、たとえば「特別注文の受注可否」「追加加工の要否」など、CVP分析に基づく限界利益の視点からの判断が問われます。
構造的意思決定
 より大規模な意思決定で、長期的視点で減価償却費や資金の時間価値などを考慮し、内製・外製の選択やセグメントの存続判断といった、組織全体の構造変革に近い判断が対象となります。

②経営意思決定における差額原価収益分析 ★重要★

基本概念
 関連原価とは、ある選択肢を選んだ場合に発生する追加的な費用と、同時に得られる追加的な収益を意味します。
出題例と応用
 たとえば、特別注文を検討する際に、その注文による追加収益と、それに伴う直接費や機会費用といった差額原価を比較する問題が出題されます。
★【重要】★
 差額収益-差額費用=増分利益の算出を通じ、どちらの案が経営上有利かを合理的に判断する力が問われ、事例Ⅳで数値計算とその解釈に直結する形で出題されることが予想されます。

③特別注文引受可否の意思決定

判断のポイント
 通常の販売価格と異なる条件での注文が持ち上がった場合、追加収益(特別注文価格×数量)と追加費用(原材料費、加工費、機会費用など)を比較して、受注が全体の利益に寄与するかを評価します。
出題例
 過去問では、特別注文の場合に通常の生産ラインのキャパシティや既存顧客への影響も考慮するケースがあり、増分利益がプラスであれば受注すべきとの判断が求められます。

内製か外製かの意思決定

判断のポイント
 内製(自社生産)と外製(委託生産)の各々の費用構造を比較し、直接費だけでなく、管理費用や固定費の変動、さらには品質や納期、技術的側面も含めたトータルコストを評価します。
出題例
 R4第3問(1)で内外製の選択が問われたように、各選択肢の差額原価収益分析を用いて、どちらが経済的に有利かを数値と理論の両面から示す問題が出題されます。

追加加工の要否の意思決定

判断のポイント
 既存製品に対して追加加工を行った場合の追加費用と、追加加工後の販売価格上昇による増収を比較し、追加加工が全体利益をどれだけ改善するかを評価します。
出題例
 R6第2問(2)の出題例のように、追加加工の選択肢が示され、CVP分析の延長として、限界利益の観点から加工前後の収益性を分析する問題が考えられます。

セグメントの継続か廃止かの意思決定

判断のポイント
 各事業部やセグメントごとに、直接原価計算に基づく貢献利益と、共通固定費の負担などを整理し、継続すべきか、廃止すべきかを判断します。
出題例
 R5第2問(2)でのセグメント損益の問題に類似し、各セグメントの差額利益分析により、廃止した場合に全社利益がどのように変動するかを計算・論理的に示す問題となると推測されます。

⑦経済的発注量の計算

基本概念
 EOQは、発注にかかる固定発注費と在庫保管費とのトレードオフから、最適な発注量を算出するための数理モデルです。
出題例
 業務的判断の一環として、在庫管理の効率化やコスト削減を目的に、最小コストを導く発注量を計算する問題が出題されます。具体的には、年間需要、発注費、在庫保管費のデータが与えられ、最適発注量(EOQ)を求める計算問題となります。

§9 設備投資の意思決定

Q
こうして眺めると、同じ論点を2回出すことがまずない「Ⅳ」で、R7に再び業務的意思決定が問われる可能性は低い。その上で差額原価収益分析=少し気を利かせると計算が馬鹿っ早くなる利点に注目したい?
A

「みんなが欲しかった簿記の教科書」では、NPVに関しては既に聞き飽きた説明の繰り返しになる。ここで大事なのはベテ専知識を追いかけるのを避け、ずっと簡単にして他論点の知識とツナげることです。

①設備投資の意思決定

内容: 設備投資とは、企業が長期にわたり使用する固定資産(機械・設備など)を導入する判断です。
ポイント:
 - 初期投資額と導入後の運用コスト、そして減価償却費を考慮します。
 - 構造的意思決定として、将来の事業全体にどれだけ利益が還元されるか、設備の劣化や更新タイミングも含めた長期的視点で評価します。

②貨幣の時間価値とその基本公式

内容: 貨幣の時間価値は「今の1円は将来の1円より価値が高い」という考え方です。
ポイント:
 - 投資判断では、会計上の利益ではなく、実際のキャッシュ・フロー(現金の流入・流出)に注目します。
 - 基本公式としては、たとえば「現在価値(PV)=将来価値(FV)/(1+r)^n」があり、これにより将来のキャッシュインフローを割引いて評価します。

③設備投資の意思決定モデル

内容: 設備投資の採否を判断するために、NPV法・IRR法・PI法などが用いられます。
ポイント:
 - NPV法: 将来のキャッシュ・フローを現在価値に割り引いた総額から初期投資額を引き、プラスなら投資すべきと判断。
 - IRR法: 割引率を調整しNPVがゼロになる率(内部収益率)を求め、目標利率と比較します。
 - PI法: 現在価値の合計と初期投資額の比率を計算し、1を超えれば投資有利とみなします。

④キャッシュ・フローの予測

内容: 設備投資の評価は、会計利益ではなく実際の現金収支に基づいて行います。
ポイント:
 - 減価償却費は会計上の費用ですが、実際の現金流出は伴わないため、キャッシュ・フロー予測では除外または税効果(節税効果)として扱います。
 - 営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フロー、財務キャッシュ・フローに分け、将来の収入と支出を見積もります。

⑤新規大規模投資の意思決定

内容: 企業全体の方向性を左右する大規模な新規設備投資の判断です。
ポイント:
 - 市場の成長性、技術革新、リスクなども踏まえて、長期的な戦略的意義とキャッシュ・フローの観点から評価します。
 - 上記のNPVやIRRなどのモデルを用いて、投資案の採算性を判断します。

⑥取替投資の意思決定 ★重要★

内容: 古くなった設備を新しいものに置き換える際の判断です。
ポイント:
 - 既存設備の維持管理費用と、新規設備の投資額および予想されるキャッシュ・フローを比較します。
 - 取替えにより、効率性の向上やコスト削減が実現できるかを分析します。

⑦リースか購入かの意思決定

内容: 設備を一括購入するか、リースで利用するかの判断です。
ポイント:
 - リース: 初期投資が抑えられるが、長期的には総コストが高くなる可能性。
 - 購入: 資産として計上でき、税制上の優遇や償却効果があるが、初期投資額が大きい。
 - それぞれのキャッシュ・フローの影響を評価し、総合的にどちらが企業にとって有利かを判断します。

⑧耐用年数が異なる投資案の比較

内容: 異なる耐用年数を持つ設備投資案を、どのように比較するかという問題です。
ポイント:
 - 各投資案の総投資額やキャッシュ・フローを、等価年間費用(EAC)年平均現在価値に換算して比較します。
 - これにより、耐用年数が異なっても、どちらが長期的に有利かをシンプルに判断できます。

§10 戦略的原価計算

Q
「事例Ⅳ」が計算問題よりポエムと言われ、第1問経営分析と第4問ポエムのマス目さえ埋めれば、少なくとも40点を大きく超えると言われて久しい。これが、「自分の言葉で説明できるスキル」を試験委員が求める証拠?
A

その通りで、以下のいわゆる巻末論点を計算出題して点差をつける出題は考えにくい。そこで計算に注力するのはほどほどにし、読み物程度に捉えておくのが上位5%の賢さです。

①戦略的原価計算

基本概念
 戦略的原価計算は、企業戦略に沿って原価情報を活用する手法であり、単なる数値計算に留まらず、経営判断に直結するコスト管理の全体像を示します。

解答例
 「戦略的原価計算とは、企業の長期的な競争力を支えるために、製造原価のみならず品質、業務プロセス、ライフサイクル全体を通して原価を管理し、意思決定に結びつける手法です。」

②品質原価計算

基本概念
 適合コスト(品質を保証するための投資)と不適合コスト(品質不良による損失)のトレードオフを評価し、全体最適を目指す考え方です。

解答例
 「品質原価計算では、製品が規定の品質基準を満たすためにかかる適合コストと、品質不良による再作業や顧客クレームなどの不適合コストのバランスを検討します。投資すべきは、後々の不適合コストを大幅に削減できるレベルまでの品質改善です。」

③活動基準原価計算(ABC)

基本概念
 製造間接費などの間接費用を、各活動(作業や工程)に基づいて正確に配分する手法です。

解答例
 「ABCでは、各製造工程で発生する活動をコストドライバーとして捉え、間接費をより精緻に各製品や部門に割り当てます。これにより、無駄なコストの原因が明確になり、改善策が立てやすくなります。」

④ライフサイクル・コスティング

基本概念
 製品の研究開発から廃棄まで、全期間にわたるコスト(ライフサイクルコスト)を評価し、投資判断に反映する手法です。

解答例
 「ライフサイクル・コスティングは、単に製造時のコストだけでなく、開発、販売、アフターサービス、廃棄に至るまでの全コストを考慮するアプローチです。これにより、製品全体の収益性や競争力がより正確に把握できます。」

⑤原価企画・原価維持・原価改善

基本概念
 コスト管理は、工場内の差異分析だけにとどまらず、製品企画段階から目標原価を設定し、実行中の維持・改善活動で差異を埋めるプロセスです。

解答例
 「原価企画は、市場の競争環境や顧客要求に基づいて目標原価を設定し、製品設計段階からコスト低減の工夫を取り入れます。原価維持・改善は、製造現場やサプライチェーン全体で実際のコストと目標との差異を常に検証し、改善策を実施するプロセスです。これにより、持続的な競争優位性が確保されます。」

今日のまとめ

Q
正直ヤル気を出すのはまだこれからの時期に、R4~R6の3年連続意思決定会計を出題した罠が、「何かに全賭けしないクールさ」を求めると知れて良かった。さらにベテふぞでは一生知らない好教材を紹介いただき、本当にありがとうございます。
A

それは「事例Ⅳ」で計算問題と電卓の話題しかできないのはどうよ?との、試験委員の優しい助言に違いない。そこで計算問題集を1冊買ったら知識テキストも1冊とルールを作れば、少なくとも計算偏重のムダ勉に費やすウェイトが5割に下がります。

診断士向け教材にのめり込むからおベテとふぞは視野が狭い。簿記1級の初級テキスト+問題集を使えば視野が広がり、知識と計算のバランスも改善できます。

■■ここからテンプレ■■

-K事例Ⅳ

PAGE TOP