
試験の七難八苦を一手に引き受けるベテの隣で、初年度キラキラストレート組は「2次」150h程度でさっさと卒業。その試験の謎を解くピースの一つが、今日紹介する「予算編成・業績評価」です。
予算編成・業績評価とは、2級原価計算で学んだ基礎を「Ⅳ」の応用計算問題に落とし込む「架け橋」の位置付けです。この論点の理解が、「Ⅳ」計算問題の裏で問われる経営ストーリーを読み解く上で要になります。

第①回 | 第②回 | 第③回 |
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§1 管理会計のための原価計算 §2 直接原価計算 §3 CVP分析 §4 最適セールス・ミックスの決定 | §5 予算編成 §6 事業部の業績評価 §7 予算実績差異分析 | §8 業務的意思決定 §9 設備投資の意思決定 §10 戦略的原価計算 |
ここでは、直接原価計算やCVP分析など、企業の原価構造や収益性の把握に必要な基礎技術が問われます。 | 予算の立案から実績との比較、差異分析を通じた業績評価に焦点が当たります。 | 設備投資や戦略的原価計算など、より実践的・戦略的な意思決定を求める問題が中心です。 |
【1級意思決定の罠(中)】このテキストで「Ⅳ」がスラスラ / 企業予算・業績評価も出題範囲
具体的に予算編成・業績評価では、「直接原価計算による変動損益計算書」の他に「標準原価計算による予実差異」の把握が問われる。簿記2を経てからココに進むと、CVP・NPVがどんな突然変異をしても、簿記基礎知識の応用でスラスラ解けるな。
①基礎知識の実践的応用 | ②数字を経営判断の指針に | ③試験における重要性 |
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簿記2級原価計算で習得した標準原価の計算方法や原価の配分の知識は、予算を組む際の出発点となります。実際の企業では、過去の実績や標準原価をもとに、次年度の予算が策定され、その後、実績との比較で差異を分析するという流れが取られます。 | 予算実績の差異分析は、単なる計算問題ではなく、その数値が経営現場でどのような意味を持つかを示す判断材料となります。このプロセスが企業の意思決定に直結するため、日頃のビジネスで触れているか否かが「Ⅳ」計算問題のスコアを左右します。 | 実際に直近3年間の「Ⅳ」第2問では、基礎知識を高度な計算問題に応用することで、他との差が顕著に表れました。つまり簿記2級で学んだ原価計算の基礎を、予算編成や差異分析という実践的な場面にどう活かすかが、試験の得点軸になっているのです。 |
「Ⅳ」試験委員として受験側の過去問&計算問題偏重を改めさせるには、簿記の基本知識をちょいと応用させる1級意思決定会計から作問するのが最適。さらに今日の「予算編成・業績評価」の知識がリンクすると、次の「Ⅳ」応用出題で力を発揮します。
§5 予算編成
企業の2~3月好例の次年度予算編成祭りが、「Ⅳ」スコアUPに直結すると普通は気づかない。そこで以下の私の解説を読めば、目から鱗でしょう。
企業予算は、予め計画した予算と実績の差異を分析することで、業績の振れ幅を管理し、経営精度を高めることを目的としています。これにより、診断士試験「事例Ⅳ」で問われるCVPやNPVの計算問題に必要な基礎的な視点が養われます。具体的には、予算差異分析を通じて、売上や原価の変動が利益に及ぼす影響を把握できるため、利益構造の理解が深まります。
売上高予算を起点として、製造費用予算、営業費予算、営業外費用予算、財務収支の予算を一貫して編成するプロセスは、企業全体を数値で統制するスキルを養います。これにより「Ⅳ」で問われる高度な計算問題において、複数の要素を連動して考える力が身につきます。たとえば、NPVの計算でキャッシュフローを構成する各項目を正確に把握する力や、予算作成で学ぶ論理的な数値の積み上げが、収益性分析や設備投資判断に応用できます。
§6 事業部の業績評価
ここはビジネス実務でも大事な「セグメント損益」として、「Ⅳ」でもR1・R5の2回で出題済。そして隣の合格ボーダー層と、CVPの変動損益計算書の続編として解く上位5%では、応用解答力が桁違いです。
セグメント別損益計算では、CVPで学んだ限界利益を基に、各セグメントの貢献利益を算出します。この貢献利益は、全社共通費用の回収にどれだけ貢献しているかを示す指標であり、セグメント間の収益性比較や経営資源配分の意思決定に活用されます。「事例Ⅳ」で求められる応用力として、変動損益計算書から得た限界利益をさらに展開し、セグメント単位での収益管理へとつなげる視点を押さえることが重要です。
資本コスト率は、企業が最低限確保すべき利益率を示し、投資の意思決定や業績評価の基準となります。これを理解することで、「事例Ⅳ」のNPV計算や投資採算性分析において、適切な割引率の設定や事業リスクの反映を考慮した応用力が高まります。また、資本コスト率は、資金調達コストと利益のバランスを数値で示すことで、長期的な財務健全性を測る基礎となります。
事業部と事業部長の業績評価は、経営資源の分権化を進める上で重要なテーマです。権限移譲を適切に機能させるためには、評価基準を明確化し、公平性を担保することが必要です。「事例Ⅳ」では、事業部別の財務データを用い、業績評価の結果が全社的な目標達成にどう寄与するかを論理的に示す力が求められます。
業績評価の指標として、ROI(資本利益率)やRI(残余利益)がよく用いられます。これらは、それぞれ異なる意思決定を促す特徴があり、適切な指標選択が事業部の行動に影響を与えます。たとえば、ROIは利益率向上を重視する一方で、RIは資本コストを超える利益創出を目標とします。これを「事例Ⅳ」に応用する際には、企業の財務戦略や事業特性に合わせた指標選択を提案できることが求められます。
内部振替価格は、事業部間取引の評価基準として設定される価格であり、業績評価や意思決定に影響を与えます。利益の上乗せルールを決定する際には、公平性とインセンティブ設計を考慮する必要があります。「事例Ⅳ」では、内部振替価格が全社的な利益最大化にどう寄与するかを分析する力が重要です。適切な価格設定が事業部間での不公平感を排除し、全社最適な意思決定につながる点を理解することが求められます。
§7 予算実績差異分析
試験に夢中で世間知らずの隣のD社の「Ⅳ」自慢は笑われる。そこで1次「財務」でたまに見かける予実差異分析が、ここで活躍すると知る。そして簿記の世界では、このように別の論点で学んだ知識を他論点で応用することを、【知識がツナがる】と呼びます。
予算実績差異分析は、実績と計画との差異を分析し、その原因を特定する手法です。「事例Ⅳ」では、この差異分析を通じて、売上やコストの変動要因を把握し、経営改善策を提案する力が求められます。たとえば、収益性の低下要因を数値的に示すことで、説得力のある改善提案が可能になります。
直接原価計算は、変動費と固定費を分離して管理する手法で、特に限界利益の把握に役立ちます。予算実績差異分析を組み合わせることで、製造効率や生産コストの変動要因を定量的に評価できます。「事例Ⅳ」では、限界利益を基に収益性を評価する際に、差異分析のスキルが計算の精度と提案力を高めます。
標準原価計算では、標準原価と実際原価の差異(原価差異)を分析し、製造プロセスの問題点を特定します。「事例Ⅳ」では、製造コストの管理能力を評価する問題が多く、標準原価計算に基づく差異分析は、効率的な改善案の提案につながります。また、差異の内訳を分解して論理的な分析を示すことで、説得力のある解答が可能となります。
販売数量差異を市場占拠率差異と市場総需要差異に分解する分析手法です。「事例Ⅳ」では、売上の変動要因を具体的に示すことで、販売戦略の妥当性や市場への適応力を評価できます。このスキルは、製品別の収益性を高める提案や市場機会の発見に応用できます。
セールスミックス分析は、販売数量差異をセールスミックス差異と総販売数量差異に分解し、収益性を高める製品構成を把握する手法です。「事例Ⅳ」では、複数製品を扱う企業の収益改善策を提案する際に、セールスミックス分析が役立ちます。適切な製品ポートフォリオ戦略を示すことで、採点者に具体性のある解答を示すことが可能です。
今日のまとめ
その中でもR6「Ⅳ」第4問内部振替価格のように、急な出題があるからやはり簿記1知識を押さえる方が試験で有利。そして今日の論点は1/3に過ぎないが、その中で計算力の比重も1/3で、知識や応用が他の2/3を占める覚悟が大切です。