「Ⅳ」が少しデキると極端に加点の余地があり、会計士か簿記1級ホルダーなら必ず一度で受かるとされる当試験。弁護士でさえ普通に2回落ちるのに、なぜこれだけ会計重視かの謎に迫ります。
簿記は不要と「1次」の門戸を開きつつ、「Ⅳ」の3年連続出題で明確に簿記・会計優遇を打ち出す試験委員。その狙いを私に訊いていただくと、その遠大な構想と健全な危機感に、おっきく頷くでしょう。
デジタル経済でのニーズ | ニーズを先読む試験の進化 | |
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これからのホワイトカラーの生産性向上に向け、企業はセグメント損益などの会計データ活用に注目しています。営業や製造などの各部門が直接会計情報を扱い、意思決定を迅速化し、生産性を向上させる重要性が増しています。 | ①ホワイトカラーの生産性向上が急務 | 試験では会計データを全社的に活用する問題が増加しています。受験者は部門横断的にデータを活用し、企業全体の生産性向上に貢献する方法を学びます。これにより、実務に即した知識が得られます。 |
これまで経理部だけで使われた会計データを社内全体で活用する動きが進み、各部署が財務データを理解し、活用するスキルが求められています。この動きも、デジタル化されたデータ環境に適応するリスキリングの一環になります。 | ②アナログ→デジタルへのリスキリング | 試験対策においても、経理部門以外の事業部などが直接会計データを使うシナリオが増えています。診断士受験者が近年簿記取得を促されるのは、このリスキリングの一環と考えられます。 |
事業承継やM&Aにおける意思決定を加速するには、売上高やEBITDAといった財務指標を理解し活用するスキルが重要です。会計データが社内の各部署に共有されて初めて、企業はデータドリブンに意思決定を迅速化できるでしょう。 | ③デジタルの入口としての会計スキル | 試験では財務指標を使った意思決定問題が増え、受験者は売上高やEBITDAの意味を理解して意思決定を支援するスキルを身につけます。会計データを部署間で共有し、業務に即したスキルを得ることができます。 |
【2025年ループ問題②】会計強者をなぜ優遇? / 簿記が役立つ4つのビジネス場面
ここまであの手この手で、受験2年目以降の簿記2取得を促す作問姿勢。相変わらずズボラでノロマなふぞろい道場を除き、「診断士に求める会計スキル」がこれまでのBS・PLの理解から、「精算表+決算整理仕訳」にワンステップ上がったことに気づくでしょう。
出来上がったBS・PLだけ眺めてOKだったのがこれまで。これからのファクトベースの意思決定では、BS・PLの出来上がり方(減価償却費計上や決算整理)に一歩踏み込ませるのが、一連の作問変化の真相な。
Step-1:事業部権限移譲とセグメント損益
このとき、セグメント損益出題を「解いて楽しい」と思うと感覚価値。「なぜ頻繁に出題されるか」の題意を知ると観念価値になり、セグ損益やCVPを解くのが「好き」になります。
企業が事業部制を導入し、各事業部に権限を移譲する中で、各セグメントの損益を明確に把握することが重要になりました。セグメント損益分析は、責任を明確化し、各部門のパフォーマンス評価を容易にします。
企業の多角化や新規事業の進展により、異なる事業セグメント間で収益構造に大きな違いが出てきています。これを理解し、適切に分析するために、セグメント損益が重要となっています。
ホワイトカラー部門の共通固定費が増加する中、それをどのセグメントに配分するかを分析することが必要です。セグメント損益分析を通じて、これらのコスト配分を明示し、各事業部の利益貢献度を正確に把握できます。
Step-2:減価償却費の意味を自ら説明
経理部が決算さえすれば良かった時代と異なり、これからの「Ⅳ」は社内プロジェクトの実務で他部門を巻き込む原動力に。よっていい年こいて計算偏重電卓バカでなく、自分の言葉で理論を説明できる力が問われます。
減価償却費は、設備投資にかかる大きな支出を期間にわたって分割し、売上と対応させる役割を担います。これにより、設備投資が生み出す収益と費用が一致し、経営陣は投資の成果を正確に評価することが可能になります。
減価償却費は現金流出を伴わない費用として利益を圧縮し、企業の税負担を軽減する効果があります。結果としてキャッシュフローが改善し、資金繰りに余裕が生まれるため、次の投資資金や運転資金の確保がしやすくなります。
減価償却費を理解することで、EBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)や税引後キャッシュインフロー(CIF)の把握が可能になり、企業の収益力や投資効率の指標として活用できます。これにより、経営陣はより効果的な意思決定ができるようになります。
Step-3:事業承継・M&A熱で注目される企業価値計算
実務的に言えば、その方法が現実でも主流だから。試験的に言えばDCF法企業価値の普及が狙いで、コスト・マーケットアプローチで作問する意味がないため。
DCF法は、企業の将来キャッシュフローの現在価値を算出するため、短期的な利益ではなく、長期的な収益力をもとにした評価が可能です。これにより、企業の将来性を反映した適正な価値が得られます。
DCF法では、割引率に資本コストやリスクプレミアムを組み込み、企業特有のリスクや市場条件を反映した価値評価ができます。これにより、各企業に応じた実態に即した評価が可能です。
DCF法では、将来のキャッシュフローを年度や事業ごとに細かく見積もるため、M&A後の予実管理においても大きな利点があります。具体的には、初期段階で見積もられたキャッシュフローと実際のキャッシュフローの差異を定期的に把握でき、経営陣は計画通りの投資回収が進んでいるかをチェックしやすくなります。
Step-4:生産性指標
2024年に入って一気に政策論点化した「ホワイトカラーの生産性」の課題を、診断士なら2年前の試験出題で知っていた。この時流の先読み感も、当試験の大事な魅力の一つです。
労働生産性の出題により、生産性向上や付加価値経営の重要性が受験者間で強く認識されました。特に、労働生産性は企業全体の効率性と収益力を表す指標であり、これを理解することで、単なる業務効率化にとどまらず、企業の付加価値向上を目的とした業務改革の意義が周知され、現場での改善活動が加速する期待があります。
財務指標と非財務指標の組み合わせにより、受験者は企業を多面的に評価する能力が問われました。財務指標である労働生産性や労働装備率に加え、従業員満足度や業務改善効果などの非財務面も重視することで、受験者が企業の全体像を把握し、企業価値を長期的に高めるための包括的な視点を得る効果があります。これにより、総合的な経営判断力の向上が期待されます。
人口減少に伴い、労働力の減少と市場の縮小が続く社会では、限られた人材とリソースの効率的活用が不可欠です。労働生産性を出題することで、受験者に持続可能な成長を意識させ、リソースの最大限活用を促す狙いがあります。特に、付加価値向上による競争力強化が求められる中、労働生産性の理解は、人口減少社会での企業存続や成長に貢献する重要な知識となります。
今日のまとめ
ベテ専超絶指導で知られるEBAと同業D社の悪い共通点は、「NPVを白紙で出せ」と誤った情報を流すこと。そうでなく簿記2の基本から積み上げると、「Ⅳ」は実務直結のビジネススキルに一変します。