「事例Ⅳ」の超大穴論点といえば、H28を最後に7年連続未出題のCF計算書。試験合格が目的化した隣の間抜けが計算偏重で四苦八苦する姿をからかいながら、「なぜ7年連続未出題?」の謎を解きます。
こらこら、もし事実がそうでも、ふぞろい道場みたいにすぐ決めつけると、リアル試験委員の機嫌が悪くなる。そこで私が代わりに謎を解きます。
未出題の理由 | 当面出ない理由 | |
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CF計算書作成は、受験生にとって非常に時間と労力を要する作業です。また、会計士や税理士といった他の資格が扱うべき専門分野と見なされるようになり、中小企業診断士試験では優先度が低くなりました。 | ①学習負担解消と会計資格との役割分担 | 診断士は、会計資格との役割分担を明確にし、診断士としての独自の強みを発揮することが求められます。実務で求められるのは、会計の専門家としての「作成」よりも、企業経営におけるCFの分析・戦略的利用のスキルです。 |
CF計算書作成問題の代わりに、NPVや企業価値評価、資金繰りなど、CFを扱う他の論点を出題することで、受験者はより多面的な財務分析スキルを習得できるようになりました。 | ②他論点で代替できる | NPVや企業価値の重要性はさらに増し、これらを含むキャッシュフローの分析が、企業価値向上や投資判断における中心的なスキルとして重視されます。これにより、受験者は、より実務に即した知識を持つことが期待されます。 |
かつてはCF計算書を「作る」スキルが試験でも重視されていましたが、上場企業の決算を除くと「作る」のは完全に機械に任せ、「使う」ことが重視されます。これにより、CF計算書の学習ウェイトが徐々に減少していきました。 | ③CF計算書を「作る」から「使う」時代へ | CF計算書は、企業の経営状態を評価し、意思決定に役立てるツールとしてさらに重視されます。今後の試験では、診断士がCFを「どう使って」経営判断や改善提案を行うかに焦点が移り、分析や応用力が求められるでしょう。 |
【事例Ⅳ】CF計算書が7年連続出ない謎 / 万一出題されても慌てないコツ
そこで「CF計算書がどう使われるか」を先にみんなで考える。するともし「Ⅳ」で7年ぶりに出題されても、応用を利かせてなんとか解けます。
Step-1:NPV(税引後CIF)
NPV(正味現在価値)は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、投資やプロジェクトの意思決定に使われます。ここでは、貨幣の時間価値からのCashの理解が重要です。
NPVは貨幣の時間価値の考え方を基盤にしています。これは、将来のキャッシュフローは現在のキャッシュよりも価値が低いことを意味します。理由は、インフレや投資機会による利率、リスクなどが関与し、現金の価値が時間とともに減少するためです。このため、将来得られるキャッシュを現在の価値に割り引くというプロセスが重要となります。受験者はこの時間的価値変動を理解することで、キャッシュの「今」と「将来」を正確に評価する力を身につけます。
NPVでは、キャッシュフローを割り引くために割引率が使われます。この割引率は企業のリスクや資金調達コストなどを反映し、将来のキャッシュフローをどの程度割り引くかを決定します。リスクが高いプロジェクトほど割引率が高く設定され、その結果、将来のキャッシュフローの価値は低くなります。割引率の設定はプロジェクトや投資のリスク評価と深く関連しており、適切な割引率を用いることで、リスクに見合った正しいキャッシュフロー評価が可能になります。
NPVは、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出された総合評価指標であり、投資判断に直結します。NPVがプラスの場合は投資をすべきと判断され、プロジェクトが利益を生むことを意味します。逆に、NPVがマイナスの場合は投資を避けるべきであり、リスクを上回るリターンが期待できないことを示します。受験者は、NPVの計算を通じて、企業の資金を効果的に活用するための投資判断の基準を学びます。
Step-2:企業価値DCF
はい、CF計算書の出題がなくなり、NPVの税引後CIF⇔営業CFがヘタクソ混同されなくなった今こそ。FCFの公式の理解・利用が有効です。
税引後営業利益は、企業の本業から得られる利益から税金を引いたもので、企業の基本的な収益力を示します。これは、企業が事業運営を通じてどれだけキャッシュを生み出せるかを反映するため、企業価値の根幹をなす要素です。税引後営業利益を適切に評価することで、事業の持続的なキャッシュ生成能力が見極められます。この数値は、企業が投資家にどれだけのリターンをもたらせるかの重要な指標となります。
減価償却費は、企業の資産を使用することで生じる費用を計上するもので、キャッシュの流出を伴わないため、フリーキャッシュフロー(FCF)を計算する際に加算される要素です。つまり、実際のキャッシュフローは、減価償却費を差し引いた利益よりも高くなるため、企業が手元に保持するキャッシュ量を正確に把握する上で重要です。減価償却費の理解は、企業が将来の投資に向けてどれだけキャッシュを確保できているかを評価するポイントになります。
運転資本の増減は、事業運営に必要な現金や資産の調整を反映します。運転資本が増える場合は、在庫や売掛金の増加などによりキャッシュが一時的に事業に固定され、キャッシュフローが減少します。一方、減少する場合は手元のキャッシュが増えます。また、投資額は成長のための設備投資や資産購入に使われるキャッシュを意味し、これもFCFから差し引かれます。この2つの要素は、事業運営に必要な資金と、企業がどれだけのキャッシュを将来の成長に向けて再投資しているかを示すため、企業の成長力と資金繰りのバランスを評価する上で欠かせません。
Step-3:CF計算書
そこでふぞろい道場のように解けないオーラをこじらせないために。CF計算書の役割を、【DCF法でのBS運転資本増減】→【必ず出る第1問経営分析】の橋渡し役と考えます。
CF計算書は、企業のキャッシュフローの流れを把握し、経営判断や投資判断に活用するための財務情報の基本的なツールです。CF計算書を使うことで、企業がどのようにキャッシュを得て、どのように使っているかを把握できます。特に、営業活動、投資活動、財務活動のそれぞれのフローを理解することで、企業の財務健全性や成長余力を評価することができます。このように、CF計算書は「使う」ことで、企業の状態を明確にし、より良い意思決定をサポートするための重要なツールです。
CF計算書の情報を活用して、企業価値の評価や財務分析を行うことが重要です。特に、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローのバランスを読み解く力が求められます。これにより、企業の成長性や資金繰り、リスクの度合いを評価することが可能です。CF計算書は一から作成することよりも、既存の情報を正しく読み取り、企業の将来価値を評価するスキルが重視される時代となっています。
近年の会計システムや財務ソフトウェアの普及により、CF計算書の作成は自動化される傾向にあります。企業内の会計ソフトや財務データ分析ツールを活用すれば、手動でCF計算書を一から作成する必要はほとんどありません。したがって、CF計算書の作成技術よりも、それを用いた分析力や意思決定能力が重視される時代となっています。つまり、CF計算書を「作る」ことではなく、そのデータを使っていかに企業価値や財務状態を的確に評価できるかが、現代のビジネスパーソンに求められるスキルです。
Step-4:第1問経営分析に戻って「つながる」
出題可能性ほぼゼロなCF計算書を、「もしや出る?」と嫌々解くほど、人生で不幸なことはない。そうでなくCF計算書は2期BS+PLで作る、つまり【経営分析前期比パターン】と一緒に解けば、苦にしません。
貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)**は、CF計算書と密接に関連しています。PLは、企業が一定期間にどれだけ利益を上げたかを示し、BSは期末時点での資産・負債・資本の状況を示します。これら2つの財務諸表の変動をもとに、CF計算書は作成されます。特に、2期分のBSとPLを比較することで、企業のキャッシュフローの発生原因(営業活動、投資活動、財務活動)を明確に理解することができ、企業の資金繰りや健全性を分析する基盤となります。
CF計算書は、BSの項目(資産・負債・資本)の変動に影響を与えるキャッシュの流れを詳細に示します。例えば、資産の増加はキャッシュの減少を意味し、負債の増加は資金調達を示すことがわかります。このように、CF計算書を使うことで、BS上の変動要因を詳細に把握し、どの活動が企業のキャッシュに影響を与えているのかを分析できるため、BSの重要性が浮き彫りになります。CF計算書の読み解きは、資産の健全性や負債のリスクを評価する上で重要なスキルです。
BS(貸借対照表)の重要性は、特に財務健全性と資金繰りの観点から強調されます。PLが収益性に焦点を当てるのに対し、BSは企業の資産構成や負債の状況、自己資本の割合など、企業の財政的な健全性を評価するための重要な指標です。CF計算書を通じて2期のBSの動きを見ることで、資金繰りや財務リスクを的確に分析し、将来の経営戦略に役立てることができます。経営分析においては、BSが企業の財務的な健康状態を直接示すため、その理解が重要です。
今日のまとめ
会計の世界ではアカウンタビリティと呼ばれ、【訊かれたことには答える】責任感が不可欠。そしてNPVでギブアップする情弱より、「CF計算書を出題しない謎」を説明する方が、試験合否の判定上も優遇されます。