直近5年の「1次」で2回も出たのに、言及した人が5%未満、正答できた人になるとほぼゼロに終わったブランドの感覚・観念価値のR6「Ⅱ」第2問。「3代目B社長に共感した」「好感した」との声が続く中、もう一つデッカい仕掛けがありました。
過去問の答をひたすら覚えることがお勉強で、10年分覚えたデジマ施策をマス目のどこに書くかと意気込むふぞろい。そこを見透かすかのように過去問のデジマ一辺倒を脱し、リアル回帰を促す作問でした。

第1問では、課題分析において、SWOTや3C分析に加えて、具体的な状況に応じたフレームワークの活用が求められます。これにより、ケースの本質的な問題を明確にし、解決策を導く基盤を作ります。
従来の関係性マーケティングは、顧客との信頼構築に焦点を当てていましたが、デジタルマーケティング(デジマ)への進化により、オンラインでの顧客接点やデータ活用が重要となり、個別化されたアプローチが加速しています。
解答においては、抽象的な表現を避け、データや事例に基づいた具体的な説明が求められます。これにより、解答の説得力と実務感が増し、評価が高まります。
マーケティング課題は単一ではなく、複数の視点から同時にアプローチし解決策を提案することが求められます。複数の要素をバランス良く組み合わせ、総合的な視野で問題解決を図ります。
【過去問を解かずに分析】事例Ⅱのインサイト / デジマ一辺倒からリアルに回帰
与件の多すぎる根拠を100字に詰めるお勉強ばかりに励むと、事例の進化・難化を見失う。過去問をあえて解かずにNotebook LMに分析させ、新作事例のどこがどう難化したかのインサイトを得ます。
Step-1:R1~R6「Ⅱ」の事例概要
B社は、X市内の商店街に立地する完全予約制のネイルサロンです。社長と社員Yさんの2名で運営しており、共に美術大学出身で、デザインと接客の経験が豊富です。開業当初は顧客が少なかったものの、社長がSNSに投稿した写真が話題となり、技術の高さが評価されて客数が増加、固定客の獲得に成功しました。
顧客の多くは従業員と同世代の女性で、デザイン重視の顧客と近さ重視の顧客が半々です。しかし、近隣に大手チェーンによる低価格ネイルサロンが出店する小型ショッピングモールが開業予定となり、顧客流出の懸念に直面しています
B社は、X島にあるハーブの無農薬栽培、乾燥粉末の一次加工・出荷を行う農業生産法人です。社長は島の活性化を願い、島に自生するハーブYの栽培方法を確立しました。
設立当初は大手製薬メーカーZ社との取引で成長しましたが、Z社からの取引量が減少し、事業の転換期を迎えています。社長は、安眠効果があるとされる別のハーブを使った「眠る前に飲むハーブティー」をOEM企業に生産委託し、自社オンラインサイトで販売したところ、都市圏在住の若年層~中高年女性からの注文を得ることに成功しました。
B社は、清流が流れるX市に所在する豆腐の製造販売業者です。創業以来、地元産大豆と良質な水にこだわった豆腐づくりで評判を得てきました。過去には量販店のプライベート・ブランド(PB)製造で事業拡大しましたが、契約終了を経験。その後、冷蔵販売車による豆腐の移動販売をフランチャイズ方式で開始し、原材料を地元産大豆に戻し、高単価な季節の変わり豆腐なども開発しました。
コロナ禍の影響で売上が3割減少する中、オンライン販売や置き配の導入を検討しており、主婦層の獲得や地元産大豆の魅力を伝える全国向けネット販売という夢を抱いています。
B社は、食肉と食肉加工品の製造・販売業者です。創業時は食肉小売店として始まり、百貨店やスーパーへの卸売で成長しました。1990年代以降はスーパーとの取引減少を受け、ホテル・旅館、飲食店への卸売、自社工場での食肉加工品製造、取引先へのコンサルテーションへと事業を多角化しました。
しかし、コロナ禍で主要取引先のホテル・旅館や飲食店が大打撃を受け、卸売事業の売上が激減しする一方で、直営の食肉小売店での販売が「巣ごもり需要」で急上昇しました。アフターコロナと事業承継を見据え、今後は最終消費者と直接結びつく事業領域を強化したいと考えています。
B社は、スポーツ用品の加工・販売業者です。創業は衣料品店ですが、1970年代にスポーツ用品店に事業転換し、少年野球チームとの取引で成長しました。Jリーグ開幕後はサッカー用品も扱い、取扱商品を拡大しましたが、近年は専門店や大型スポーツ用品量販店の出店により過当競争に直面し、品揃えや価格面で劣勢に立たされています。
そこで、強みである野球用品の専門化と、子ども一人ひとりに合わせたカスタマイズ提案で差別化を図ろうとしています。ICT企業に勤める長男の事業承継を機に、事業見直しを検討しており、女子軟式野球の市場開拓、データ管理、販売方法の多様化、インターネット活用強化(ホームページ、SNS、アプリ)などを計画しています。
B社は、X市に所在する陶磁器の卸売業者(産地問屋)3代目社長が家業に戻り、デザイナーズホテル向けのオリジナル食器企画で成功を収めました。
コロナ禍で新たな挑戦が阻まれるも、オンライン動画サイトに「盛り付け動画」や「郷土料理とX焼紹介動画」を掲載したところ、大きな反響を呼び、ECサイトも開設する積極経営を展開しています。
「事例Ⅱ」の作問者は~R1までがイワサキクニヒコ、R2~が平木いくみ氏とされることが多い。その真偽は別として、~R1までは正解がほぼ1つに決まってしまうヘタクソ作問、R2~は正解が1つに決まらない「助言」が増える違いがあります。
Step-2:事例6年分×4列マトリクスで進化を評価
①第1問分析フレームワーク | ②関係性マーケがデジマに進化 | ③具体的で解像度の高さを要求 | ④複数のマーケ課題を同時に解決 | |
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R1:ネイルサロン | 第1問では、小型ショッピングモール開業を控えたB社の状況について、SWOT分析が求められました5。現状を多角的に把握する基礎的な分析能力が重視されています。 | B社は、初期の顧客獲得に写真共有アプリ(SNS)の拡散を効果的に活用しています。また、デザインを重視する既存顧客の客単価向上を目指し、インスタント・メッセンジャー(IM)を用いた個別情報発信が課題として挙げられています。 | 第2問ではIMを用いた個別情報発信の具体的な内容、第3問では協業相手の選定とその理由、新規顧客をリピートに繋げるための具体的な接客提案が求められており、単なる抽象的な方策ではなく、実行可能な具体的な施策の「解像度の高さ」が問われています | 大手競合の出店という脅威に対し、顧客数の大幅な減少を防ぎつつ、デザイン重視の既存顧客の客単価向上と、協業による新規顧客の獲得・リピート化という複数の課題を同時に解決する視点が求められています |
R2:ハーブのX島 | 第1問では、B社の現状についてSWOT分析を行うことが求められました。大手取引先からの依存脱却という大きな転換点において、自社の強み・弱み、機会・脅威を客観的に整理する能力が試されています。 | 大手取引先からの依存からの脱却を目指し、自社オンラインサイトでの製品販売に挑戦し、一定の成果を上げています。さらに、第3問(設問2)では、自社オンラインサイト上で「顧客を製品づくりに巻き込む」ためのコミュニケーション施策が問われており、共同で価値を創造するデジタル時代の関係性マーケティングへの明確な進化を示しています。 | ハーブYの新たな取引先として「異なるターゲット層」を獲得するための望ましい取引先構成の方向性、第3問(設問2)ではオンラインサイト上での具体的なコミュニケーション施策、第4問ではX島宿泊訪問ツアーの具体的なプログラム内容が求められており、各施策の「解像度の高さ」が重視されています | Z社との取引縮小という喫緊の課題に対し、新たな取引先開拓、自社ブランドのオンライン販売強化、そしてひいてはX島の活性化とファン獲得という、多岐にわたる経営課題とマーケティング課題を同時に解決する視点が求められています。 |
R3:豆腐業者 | 移動販売の拡大およびネット販売の立ち上げを目的として」という明確な方向性のもと、SWOT分析が求められました。企業の目標達成に向けた現状分析の重要性が強調されています。 | B社がコロナ禍で開発した「手作り豆腐セット」は自社オンラインサイトで販売され、主婦層にも人気を博しました。今後、ネット販売を通じた地元産大豆の全国への魅力発信や、冷蔵ボックスを使った置き配の開始が検討されており、顧客ニーズの変化に対応したデジタルチャネルの導入と、それによる顧客との新たな関係性構築が課題となっています。 | 第2問ではネット販売における「どの商品を、どのように販売すべきか」をターゲットを明確にした上で、第3問では置き配導入時の「フランチャイザー、フランチャイジーがそれぞれどのような取り組みを実施すべきか」、第4問では豆腐・おから菓子類の新規開発における「製品戦略とコミュニケーション戦略」について、具体的な助言が求められています。 | コロナ禍による売上減少という危機に対し、オンライン販売による全国展開、置き配による顧客利便性の向上、菓子類開発による主婦層という新たな顧客層の獲得、地元産大豆のブランド力向上といった、複合的なマーケティング課題を同時に解決する視点が求められています。 |
R4:食肉卸 | 第1問では、B社の現状について3C分析が求められました。卸売主体から最終消費者との直接取引への事業転換期において、顧客、競合、自社の関係性を深く理解する能力が試されています。 | B社はコロナ禍時代の失敗を踏まえ、今後は「オンライン販売事業者との協業」による最終消費者へのオンラインチャネル開拓を考えています。これは、単にデジタルチャネルを持つだけでなく、効果的なパートナーシップを通じて顧客との関係性をオンラインで再構築するという、デジタルマーケティングのより高度な戦略を示唆しています。 | 第2問では新商品コンセプトと販路、第3問では直営小売店の販売力強化における「顧客ターゲットと品揃え」、第4問ではオンライン販売協業相手の選定と「長期的に成功するための具体的な提案内容」具体的な商品やサービスの提案力が問われています。 | コロナ禍からの事業再構築、卸売から最終消費者直接取引への事業構造転換、オンライン販売チャネルの開拓、そしてX県の第一次産業再活性化という、複数の事業課題とマーケティング課題を複合的に解決する視点が強く求められています。 |
R5:野球用具専門店 | 第1問では、B社の現状について3C分析が求められました。激しい競争環境下で自社の強みと顧客・競合の状況を深く理解する能力が問われています。 | B社は、少年野球チームのデータ管理への支援、SNSを用いた募集活動への対応に加え様々なデジタル施策による「顧客との関係性強化」を検討しています。これは、単にデジタルツールを導入するだけでなく、それらを活用して顧客との継続的な関係性を深め、デジタル時代におけるコミュニティマーケティングを展開しようとする姿勢を示しています。 | 第2問では保護者の金銭的負担軽減ニーズに対して「プライシングの新しい流れを考慮した」販売方法を具体的に助言すること、第3問では女子メンバー増員のための具体的なプロモーションやイベント、第4問ではオンライン・コミュニケーション活用における「誰にどのような対応をとるべきか」といった、ターゲットと施策を明確にした「解像度の高さ」が問われています。 | 大手量販店との差別化、価格競争への対応、保護者の金銭的負担軽減、チームのメンバー確保(特に女子)、顧客データ管理、オンラインでの顧客関係性強化といった、多岐にわたるマーケティング課題を同時に解決する視点が求められています。 |
R6:焼物卸 | 第1問では、B社の現状についてSWOT分析が求められました38。伝統産業が直面する課題と、3代目の新しい取り組みによる機会を整理する能力が試されています。 | 3代目社長のデジタルコンテンツによる顧客との新たな接点創出とエンゲージメント構築の成功事例が目を惹きます。この成功を受けてECサイトを開設し、今後は「X市とX焼のファンを増やすような返礼品の企画」や、「店舗とECサイトの両方を利用する顧客を増やす施策」を検討しており、オンラインとオフラインを融合した包括的なデジタルマーケティング戦略への進化を示しています。 | 第2問では、ふるさと納税の返礼品が「感覚価値と観念価値」をどうもたらすか、第3問で「収納スペースがない」と問題を解決する新規事業、第4問では店舗とECサイトの両方を利用する顧客を増やす具体的施策が求められています。抽象的なコンセプトだけでなく、顧客にどのような価値をどう提供するのかの「解像度の高さ」を問う象徴的な作問でした。 | 産地問屋の低迷からの脱却、X焼の地位向上、ふるさと納税返礼品を通じた地域振興とファン獲得、食器愛好家の購買障壁(収納問題)の解決、オンラインとオフライン顧客の連携強化など、多岐にわたる経営課題とマーケティング課題を同時に解決する視点が求められています。 |
2020(R2)年のコロナ禍で購買行動がデジタルシフトしたのと前後し、デジマ技術がおっきく発展し、しばらくそっちの出題が続いた。またラストの助言問題では「自社とX市」「自社と協力社」のような、一石二鳥でWin-Winの施策が喜ばれます。
Step-3:その年どこが一番進化した?
第2問で「インスタント・メッセンジャー」というデジタルコミュニケーションツールを用いて、「デザインを重視する既存顧客の客単価を高めるために、個別にどのような情報発信を行うべきか」が問われています。
これは、顧客との関係性をデジタル手段で深化させ、収益向上を図る「関係性マーケティングのデジタル化」に焦点を当てています。従来の基本的なプロモーション(①)に留まらず、個別対応による関係性強化というデジタル時代の特性が明確です。
第3問(設問2)**では、「自社オンラインサイト」を継続的に活用し、「顧客の関与を高めるため、自社オンラインサイト上でどのようなコミュニケーション施策を行っていくべきか」が問われています。また、第4問では、自社オンラインサイトのユーザーに対し、X島宿泊訪問ツアーを通じてB社とX島の「ファンになってほしい」という目標が提示され、プログラム立案が求められています。
これらは、自社オンラインプラットフォームを通じて顧客とのエンゲージメントを深め、ロイヤルティ(ファン化)を育成するという、デジタルを活用した関係性マーケティングの推進を明確に示しています。
「社会全体のオンライン化の流れを踏まえ、ネット販売を通じ、地元産大豆の魅力を全国に伝えたい」という目標に対し、「どの商品を、どのように販売すべきか」が問われています。
これは、単に商品を売るだけでなく、デジタルチャネル(ネット販売)を通じて地域産品の魅力を全国に伝え、顧客との関係性を広げることに重点を置いています。市場拡大をデジタルで実現するという、関係性マーケティングの進化形態を問うています。
第4問では、「最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓に乗り出す」際に、「オンライン販売事業者との協業によって行うことを考えている」B社が、どのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また協業成功のための提案が問われました。
これは、既存の卸売事業(①)からの転換を図り、デジタルチャネル(オンライン販売)を戦略的に開拓することで、最終消費者との直接的な関係性を構築しようとする動きを重視しており、デジタルマーケティング戦略の深化に焦点を当てています。
第4問において、「ホームページ、SNS、スマートフォンアプリの開発などによるオンライン・コミュニケーションを活用し、関係性の強化を図ろうと考えている。誰にどのような対応をとるべきか」という助言が求められています。
これは、複数のデジタルツールを複合的に活用し、顧客との関係性を多角的に強化するという、統合的なデジタルマーケティング戦略の策定を問うものであり、まさに「関係性マーケティングのデジタル化と進化」のテーマに合致します。
第3問では、「食器愛好家のニーズを充足する新規事業」を提案することが求められています。これは、単に既存商品の販売チャネルを増やす(②)のではなく、食器の「収納スペースがない」「今あるものも捨てられない」という顧客の課題(ニーズ)に対し、陶磁器のレンタルやシェアリングなど、全く新しい形のサービスやビジネスモデルを創出する視点が強く求められているためです。既存事業の枠を超えた価値創造と多様化に焦点を当てています。
なお、第4問は「店舗とECサイトの両方を利用する顧客を増やしていきたい」というオムニチャネル戦略を問うものであり、② 関係性マーケティングのデジタル化と進化の高度な形態ですが、第3問の「新規事業」という問いが、より明確なビジネスモデルの転換や多様化を志向しているため、R6の最も強い注力点として③を選択しました。
R5までのオンライン一辺倒を脱し、R6は一転リアルに回帰。それと同時に「Ⅱは今までにないアイデア」をその場で求め、隣のD社が謳う過去問の答え暗記一辺倒にレッドカードを出したのです。
今日のまとめ
R1→R6へと解き進む利点をイマここで確認できたらR7試験は一歩リードに。そしてNBLMをチームで使うと、R7「Ⅱ」がどう作問するか、いくらでも自由に予測できます。