必ず8割落ちる「難関国家試験」の割に、100~150hの準備で次々ストレート合格を果たす「2次」の謎。その理由は、7月最直前期の高いレベルの1次勉が、2次準備を兼ねているため。

つまり隣のふぞろいのように、「1次」420点、「2次」240点のギリギリボーダー合格を狙っていくと、この試験は上手く行かない。そこで7月のどんな1次勉で余力を作るか、3部構成で具体化します。

H事例Ⅰ

【先に知っ得】R2Ⅰ舩坂酒造店 / 1つの施策で一石二鳥

近年の「Ⅰ~Ⅲ」はどれも施策の多元性=1つの施策で複数効果を書かせることが好きだから、では古い事例も作り変えよう。そんな無茶を平気で実現するドリームツールがNotebook LMです。

Q
R2「Ⅰ」舩坂酒造店といえば、R6「Ⅱ」陶磁器卸に負けない与件の解像度の高さで周囲を驚かせた事例。噂のツーブロックがすかさず電凸取材したのは笑い話として、各設問の要求度の高さに全員が右往左往?
A

R2当時は斬新でも、ここ数年のランダム設問に比べて訊かれることはシンプル。そこで私ならあえて、1設問あたり2つの経営課題を同時達成します。

第1問(1)第1問(2)第2問第3問第4問
①中核である酒造事業の再成長戦略
②酒造りを基盤に多角化事業シナジー創出
③市場対応する販売チャネルと営業力強化
④経営管理の近代化・業務標準化で知的創造
⑤グループ横断で公平な人事制度の構築

第1問(1) じいちゃんの経営ビジョン

A社長の祖父の経営ビジョンに関するこの設問は、以下の2つの経営課題に対応します。

① 中核である酒造事業の抜本的な成長戦略の再構築とブランド価値の再定義
祖父は、売上が半減したA社の「老舗酒造店の立て直し」1 に取り組み、孫のA社長を呼び戻しました。これは、中核事業である酒造事業の再成長と、その根幹にある「200年の年月に裏打ちされた老舗ブランド」の価値を再定義し、最大限に活用する戦略を描いていたことを示唆しています。

② 伝統的酒造りを基盤に多角化事業とのシナジー創出
祖父が「日本の文化や伝統に憧れる来訪者にとっても、200年の年月に裏打ちされた老舗ブランドは魅力的であるし、それが地域の活性化につながっていくといった確信」を持って買収を決断したことは、伝統ある酒造事業のブランドを基盤としつつ、地域全体の活性化に資するような多角的な事業展開(後にレストランや土産物店、日本酒バーを開店)と、それらが生み出すシナジーまで見据えていたことを示しています。

第1問(2) 前経営者や杜氏を引き受けた狙い

祖父が前の経営者やベテラン従業員を引き受けた理由に関するこの設問は、以下の2つの経営課題に対応します。

① 中核である酒造事業の抜本的な成長戦略の再構築とブランド価値の再定義
祖父が「前の経営者と経営顧問契約を結んだだけでなく、そこで働いていたベテラン従業員 10 名も従来どおりの条件で引き継いだ」 のは、売上が落ち込んだとはいえ「江戸時代から続く造り酒屋」 であるA社の、伝統的な「酒造りの知識や技術」 を継承し、中核である酒造事業の抜本的な立て直しとブランド価値の維持・向上を図るためでした。

② 伝統的酒造りを基盤に多角化事業とのシナジー創出
ベテランの杜氏や蔵人、さらには複雑な事務を掌握していた女性事務員 を引き継ぐことは、A社の伝統的な酒造りの知見やノウハウを確保し、敷地を改装して作られたレストランや土産物店、日本酒バーといった新規の多角化事業において、「老舗の蔵元」というブランドを核とした相乗効果を生み出すための不可欠な基盤となります。

第2問 抜擢社員による事務作業の近代化

情報システム化を進めた若い女性社員に関するこの設問は、以下の2つの経営課題に対応します。

④ 経営管理を近代化し業務標準化して知的創造
若い女性社員がベテラン事務員の「複雑な事務作業」 を「整理して情報システム化を進めた」 ことは、A社の「伝統的な家族主義的経営や祖父の経験や勘をベースとした前近代的なもの」5と評される経営管理を近代化し、業務を標準化する具体的な取り組みです。これにより、属人化されていた知識が形式知化され、組織としての知的創造の土台が築かれます。

⑤ グループ横断で公平な人事制度の構築
血縁関係のない若い女性社員が、その能力と貢献によって「抜擢された」5ことは、A社の「年功序列型賃金が基本」で「前近代的なもの」5と評される人事管理からの脱却を示唆しています。これは、グループ全体の成長のために、能力や貢献を公正に評価し、適材適所の人材配置を可能にする公平な人事制度が求められていることを具体的に示しています。

第3問 やり手執行役員による営業力強化

若き執行役員と営業担当者の能力に関するこの設問は、以下の2つの経営課題に対応します。

③ 市場変化に対応する販売チャネルと営業力強化
執行役員が「従来のルートセールスを中心とした古い営業のやり方を抜本的に見直し、直販方式の導入」 を行ったことは、日本酒の国内消費量減少といった市場変化に対応し、新たな販売チャネルを確立し、それに必要な営業部門の従業員の能力(顧客との直接対話、提案力など)を強化したことを明確に示しています。

① 中核である酒造事業の抜本的な成長戦略の再構築とブランド価値の再定義
執行役員の直販方式導入は「本業の酒造事業の売上を伸長させた」 とされており、これはかつて売上が半減した酒造事業2 の抜本的な再成長戦略において、具体的な成果をもたらした取り組みです。営業戦略の変革が、中核事業の成長に直結していることを示しています。

第4問 グループ横断で公平な人事制度構築

A社長が総帥となる企業グループの人事制度に関するこの設問は、以下の2つの経営課題に対応します。

⑤ グループ横断で公平な人事制度の構築
設問自体が、A社長が「企業グループ全体の総帥となる」 にあたり「グループ全体の人事制度を確立していく」 ことについて留意点を問うていることから、グループ全体のバランスを考慮した、公平で統一的な人事制度の構築が最も直接的な課題であることが示されています。

④ 経営管理を近代化し業務標準化して知的創造
A社の人事管理が「伝統的な家族主義的経営」で「前近代的なもの」と評されていることから、公平な人事制度の構築は、経営管理全体の近代化の一環として位置づけられます。優秀な人材(例えば、抜擢された執行役員や女性社員)をグループ全体で適正に評価し、育成し、活用する仕組みを整備することは、組織の知的創造を促進し、競争力を高める上で不可欠です。

【R2Ⅰ舩坂酒造店】あの事例を今はこう書く / 1つの施策で一石二鳥

R2当時は目玉が飛び出る斬新さを感じたR2「Ⅰ」も、その後毎年ハラハラドキドキ新作が続くと色褪せて見える。そしてNBLMが作り変えを提案したのが、「人事」に関する第2&4問です。

なおR2当時のリアル第4問は難しすぎて点差が付かず、隣のふぞがサチノヒモ!(採用・賃金・能力開発・評価・モチベ)とはしゃいで終わった。この解像度が、R7AI解答では一変します。

第2問 抜擢社員による事務作業の近代化第4問 グループ横断で公平な人事制度構築
この設問は、情報システム化を進めた若い女性社員が「どのような手順を踏んで情報システム化を進めたと考えられるか」 を問うています。問題文には、「ベテラン事務員の仕事を引き継いだだけでなく、それを整理して情報システム化を進めた」 という事実が記載されているものの、具体的な「手順」については直接的な記述がありません。この設問は、A社長が「グループ全体の人事制度を確立していくためには、どのような点に留意すべきか」 を「中小企業診断士として助言」する形式で問うており、与件で様々な現状の問題点を示しつつ、第2~3問で血縁関係のない執行役員や若い女性社員が「抜擢された」事実を挙げています。
そのため、受験者は、与えられた情報から推測するだけでなく、一般的な業務プロセス改革や情報システム導入における知識を応用し、A社の事例に即した具体的な手順を論理的に組み立てる必要があります。受験者は、これらの現状認識に基づきつつ、「企業グループ全体」というより広範な視点から、公平性、透明性、戦略性といった人事制度の原則をA社の状況に具体的に落とし込み、優秀な人材の確保・育成・定着に資する「留意点」を助言としてまとめる必要があります。

第2問:抜擢社員による事務作業の近代化

A社では、情報システム化を進めた若い女性社員を評価し責任者とした。ベテラン事務員の仕事を引き継いだ女性社員は、どのような手順を踏んで情報システム化を進めたと考えられるか。100 字以内で答えよ。

70点答案(20点)65点答案(16点)
手順は、ベテラン事務員と2年協働して複雑な事務や取引先商売の知識経験を引き継いで現状把握し、次に属人化業務を整理し標準・データベース化することで、組織の共有財産となる情報システムを構築したと考えられる。(100字)ベテラン事務員と2年協働し、複雑な事務作業や取引先商売に関する知識経験を引き継ぎ現状を把握し、次にそれらの業務プロセスを整理・標準化しデータ化することで、共有できる情報システムを構築したと考えられる。(100字)
【キーワード15点】
「ベテラン事務員と2年協働」「知識経験を引き継ぎ」「現状把握」(3点)
「複雑な事務」「取引先商売」(2点)
「属人化業務を整理・分析」(3点)
「標準化」(3点)
「データベース化」「情報システム構築」(4点)
【キーワード12点】
「ベテラン事務員と2年協働」「知識経験引き継ぎ」「現状把握」(3点)
「複雑な事務作業」「取引先商売」(2点)
「業務プロセスを整理・標準化」(3点)
「データ化」「情報システム構築」「共有・活用」(4点)
「属人化」という具体的な課題や「データベース」といった技術的な手法が明示されていない点で、ベスト答案よりややキーワードの網羅性が劣ります。
【多面多元性5点】
知識継承、業務改善(整理・分析・標準化)、情報化(データベース化)、組織全体の共有財産化という多角的な視点が網羅されています。
属人化の解消と知識の体系化による「知的創造」の基盤整備まで含意されており、設問の意図を深く捉えています。手順の具体性、論理構成も優れています。
【多面多元性4点】
知識継承、業務改善、情報化、共有化の視点は含まれていますが、「属人化解消」や「知的資産化」といった深い示唆がやや不足しています。
手順の記述は具体的ですが、その背景にある課題意識や、システム化がもたらす本質的な価値への言及が少し弱いです。

私ことNotebook LMに、70点⇔65点の違いを書き分けて? と頼んだサンプル答案がこちら。人目では「どこが違う?」と悩む所を、リアル試験委員がどう点差をつけているかを考えます。

60点答案(11点)50点答案(5点)
ベテラン女性事務員と2年間協力し、その複雑な業務を詳細に把握。その後、業務フローを見直し整理し、必要な情報をデータベース化する。以上により誰もがアクセス・参照できる情報システムを構築したと考えられる。(100字)ベテラン女性事務員から複雑な事務作業を引き継ぎ、その内容を理解した。次に、業務を細かく分類し、それをパソコンで管理できるように整理した。以上により、必要な情報を迅速に確認できるようになった。(95字)
【キーワード8点】
「ベテラン女性事務員と2年間協力」「複雑な業務を詳細に把握」(3点)
「業務フローを見直し整理」(2点)
「必要な情報をデータベースとしてまとめ上げ」「情報システム構築」「誰もがアクセス・参照」(3点)
「知識経験の引き継ぎ」「取引先商売」「標準化」といった、問題文の具体情報や業務改善の重要な要素に関するキーワードが不足しています。
【キーワード4点】
「ベテラン女性事務員から複雑な事務作業を引き継ぎ」「内容を理解」(2点)
「業務を細かく分類」「パソコンで管理」「整理」(2点)
「情報システム化」という設問の核となる言葉自体が使われておらず、「データベース化」「標準化」などの具体的な手法も欠けています。結果である「迅速な確認」は手順ではありません。
【多面多元性3点】
業務把握、情報整理、システム構築という手順は記述されていますが、知識継承の質的な側面や、業務改善の具体的手法(標準化)、組織全体への貢献(属人化解消、知的資産化)といった多角的な視点が弱いです。
単なるシステム導入に留まる印象を与えます。
【多面多元性1点】
単に業務を「引き継ぎ」「理解」し、「整理」したという記述にとどまっており、情報システム化の手順としての具体性や、知識の継承、業務改善、組織への貢献といった多角的な視点がほとんど見られません。
設問の要求するレベルに達していません。

同じ解答方向性、同じ根拠を使っているのに、確かに60、50点答案では稚拙な印象に。「表面的でうすっぺらいキーワード答案」「思考の爪痕を残す答案」の違いを第4問で深堀りします。

第4問:グループ横断で公平な人事制度構築

将来、祖父の立ち上げた企業グループの総帥となる A 社長が、グループ全体の人事制度を確立していくためには、どのような点に留意すべきか。中小企業診断士として 100 字以内で助言せよ。

70点答案(点)65点答案(点)
留意点は、伝統的な家族主義や祖父の経験や勘による前近代的制度を脱却し、多事業における非正規や外国人を含む多様な人材を公正に評価し、血縁を問わない幹部人材抜擢に向けて権限移譲で育成を図る制度にすること。(100字)留意点は、伝統的な家族主義や年功序列といった前近代的人事から脱却し、多事業における多様な人材を公正に評価すること。グループ全体のバランスを考慮し、血縁を問わず幹部人材を抜擢・育成する制度にすること。(99字)
【キーワード:15点】
前近代的な人事管理からの脱却(「伝統的な家族主義」「祖父の経験や勘」):3点
年功序列型賃金の見直し・脱却(「前近代的制度」が包含):2点
企業グループ全体のバランスを考慮した人事制度の構築(問題の問いと制度構築の広義で包含):3点
多様な人材の活用(「非正規や外国人を含む多様な人材」):2点
公正な評価、能力・成果重視の評価(「公正に評価」):2点
血縁を問わない幹部人材の抜擢(「血縁を問わない幹部人材抜擢」):2点
人材の権限移譲や育成(「権限移譲で育成」):1点
【キーワード:14点】
前近代的な人事管理からの脱却:3点
年功序列型賃金の見直し・脱却:2点
企業グループ全体のバランスを考慮した人事制度の構築:3点
多様な人材の活用(具体性が低いため0.5点減):1.5点
公正な評価、能力・成果重視の評価:2点
血縁を問わない幹部人材の抜擢:2点
人材の権限移譲や育成(権限移譲の言及がないため0.5点減):0.5点
【多面多元性:5点】
多面性:3点
既存の人事制度の問題点、対象となる人材の範囲の広がり、評価軸の転換への言及
多元性:2点
人材活用・育成方法、企業グループ全体という視点での制度構築
【多面多元性:4点】
多面性:2点
既存の人事制度の問題点、評価軸の転換への言及
多元性:2点
人材活用・育成方法、企業グループ全体という視点での制度構築
現状の問題点(前近代的、家族主義、祖父の経験・勘)を明確に示しつつ、将来像として多様な人材の公正な評価、非血縁者を含む幹部人材の抜擢、権限移譲による育成といった具体的な施策にまで踏み込んでいる。「非正規や外国人を含む」といった人材の多様性に関する具体的な記述や、「権限移譲」といった育成方法の具体性がやや足りず、若干の減点とした。

R2当時⇔R7最新の違いは、まず【与件を無視した一般知識オンパレード答案】は確実に嫌われ、ひどいと一発退場D判定の覚悟を。この70点答案はWordで推敲しまくった理想サンプルですが、一つの目安になるでしょう。

60点答案(点)50点答案(点)
留意点は、前近代的な家族主義・年功序列型賃金から脱却し、多様な人材の能力や成果を公正に評価する制度を導入すること。グループ全体の幹部育成と適材適所の登用を図る制度にすべきである。(89字)留意点は、前近代的な人事管理を見直し、年功序列型賃金から能力・成果を評価する制度へ転換すべき。グループ全体で多様な人材を確保・育成し、今後の事業展開に必要な人材を適切に登用すること。(91字)
【キーワード:12.5点】
前近代的な人事管理からの脱却:3点
年功序列型賃金の見直し・脱却:2点
企業グループ全体のバランスを考慮した人事制度の構築:2.5点
多様な人材の活用:1.5点
公正な評価、能力・成果重視の評価:2点
血縁を問わない幹部人材の抜擢:0点
人材の権限移譲や育成:0.5点
【キーワード:9点】
前近代的な人事管理からの脱却(祖父の経験・勘の具体性がないため1.5点減):1.5点
年功序列型賃金の見直し・脱却:2点
企業グループ全体のバランスを考慮した人事制度の構築:1.5点
多様な人材の活用:1.5点
公正な評価、能力・成果重視の評価:1点
血縁を問わない幹部人材の抜擢(言及なし):0点
人材の権限移譲や育成:0.5点
【多面多元性:4点】
多面性:2点
既存の人事制度の問題点、評価軸の転換への言及
多元性:2点
人材活用・育成方法、企業グループ全体という視点での制度構築
トが欠落しているため、具体性・説得力の点でベスト答案には及ばない。また、多様な人材に関する記述も抽象的である。
「血縁を問わない幹部人材の抜擢」という与件の重要なポイントが欠落しているため、具体性・説得力の点でベスト答案には及ばない。また、多様な人材に関する記述も抽象的である。与件から読み取れる複数の重要な要素のうち、限られた点にのみ触れている答案である。一般的な方向性は示されているものの、「家族主義」「祖父の経験や勘」「血縁を問わない幹部抜擢」「権限移譲」といった与件ならではの具体的な論点が不足している。

仮にその内容・方向性が正解でも、与件を離れた一般知識で解答するほどスコアが下がるとするのが最新R7基準。未だに日々100字訓練を繰り返し、その小さなオツムをひたすら固くするのに夢中なおベテには、一生教えてあげない重要事項です。

今日のまとめ

Q
同友館の思惑通り答案の多数派同質化が進んだことで、試験委員はその作問採点基準を毎年変えざるを得ない。その結果、R2当時の模範解答はもう古いから、生成AIで作り直せと説くのは鋭い。
A

R6→R2に遡って解くのがよろしくないのは、古い過去問を解けば解くほど「解答自体がズレてくる」ので、洞察インサイトが深まらない。次回はR3「Ⅰ」が再び変化する、「難化は続くよどこまでも」です。

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