まさか昨年55点のB答案に、あと1つ2つ根拠を盛ればA答案? ふぞろいのそんな願いが、単に願望に過ぎないファクトを示す時代がやってきます。
ふぞろいが謳うキーワード=第一採点基準は全く賛成ですが、本物試験委員は1枚採点を終えて一息つき、「これで本当にA評価?」「Bじゃなくね?」と加減点することができる。その筆頭が「その答案が採点者に与える第一印象」=答案の出来栄えです。

与件文の該当箇所を明示的に引用し、原因→対策→効果の因果構造を「これにより」「さらに」でつなぐ。読み手が論理を容易に追えるストーリーとし、体言止めや過度な圧縮を避け、字数内に具体性を維持する。
与件文から必要な根拠を取りこぼし、一般知識で補うため具体性に欠ける。原因→対策→効果の因果はあるが浅く、80分制約で書き急いだ印象を与える。構成がばらつき、接続詞も少ないため論理がつながらず、採点側に曖昧さを与えがち。
与件キーワードを羅列し、体言止めや読点省略で100字ギリギリに圧縮。因果構造はなく、並列列挙が主体となり説得力を欠く。根拠を勝手に言い換え与件対応不明瞭、読者に判断を委ねる曖昧さを助長する
そして、普通のB答案を良いA答案にする3つのコツまで、AIが勝手に提案する時代になりました。

単に過去問を解いて書くだけでなく、頻出テーマ・設問形式・求められる論点パターンを一覧化します。
自分で架空の業種・課題設定(B社の新規開拓、C社の業務効率化など)を考え、ChatGPTなどに与件文風に再構築してもらいます。
同じ設問に対して、自分の普通答案と模範(または良い答案例)を並べて比較。この「仮説→検証→差分抽出→再仮説」のサイクルを回すことで、短期間で良い答案の要素を自分の解答プロセスに組み込めます。
【R6事例Ⅰ】良い・悪い・普通の答案 / ABC評価の違いをAI判定(Notebook LM)
ここ数年の新作事例はどう見ても80分では解けず、与件や答案全てを見たら時間が足りない。そこでⅣで学んだ差額法を使い、A答案⇔B答案の違いに絞ってフォーカスします。
初回のお題はR6「Ⅰ」~運送業者のトラブル続きの事業承継~
第1問:強み弱みの各30字で20点
A社の2000年当時における⒜強みと⒝弱みについて、それぞれ30字以内で答えよ。
A:良い答案 | B:普通の答案 | C:悪い答案 |
---|---|---|
強み:地元密着型で高品質輸送と自社倉庫での流通加工・温度管理が可能。(30字) | 自社倉庫を保有し、地元顧客ニーズにきめ細かく対応可能。(27字) | 地域密着高品質輸送自社倉庫流通加工温度管理ニーズ対応。(27字) |
弱み:旧態依然の管理体質で受注管理が非効率、新規開拓力が弱い。(28字) | 紙伝票管理で非効率かつ新規顧客開拓に課題。(21字) | 旧態依然管理非効率紙伝票受注新規顧客開拓力不足。(24字) |
○設問要求への正確な対応:2000年当時のA社の強みと弱みを正確に捉えている | ○主要論点の把握:強みとして「自社倉庫」「地元顧客ニーズ」2、弱みとして「紙伝票管理」「新規顧客開拓」3といった主要な要素は捉えている。 | ×可読性の著しい低下:文章として非常に読みにくく、採点者が内容を理解するために多大な労力を要する。これは採点者の評価軸に反する可能性がある4。 |
○キーワードの網羅性:強みとして「地元密着型」「高品質輸送」「自社倉庫」「流通加工」「温度管理」、弱みとして「旧態依然の管理体質」「受注管理非効率」「新規開拓力弱い」といった重要なキーワードを盛り込んでいる。 | ×キーワードの網羅性不足:強みにおいて「高品質輸送」「流通加工・温度管理」といった重要な機能やサービス内容が一部不足している2。弱みも「旧態依然の管理体質」という包括的な問題提起が不足している2。 | ×キーワード羅列・体言止め多用:文字数を稼ぐために助詞や読点を極端に省略し、体言止めを多用。これにより、各キーワード間の関係性や文脈が不明瞭になり、意味が読みにくくなっている。採点者は、単なるキーワードの羅列から受験生の理解度を判断することが困難になる。 |
○論理的整合性:キーワードが単なる羅列ではなく、A社の実態に即した内容で簡潔にまとまっている。 | ×具体性の欠如:表現がやや抽象的で、「良い答案例」ほどの具体性に欠ける。 | ×論理的破綻:キーワードが並列に羅列されるだけで、論理的なつながりや文章としての構成が失われている。A社が「なぜ」その強みを持つのか、「どのような点で」弱みなのかが不明。 |
第1問SWOTをAにするのは簡単で、ふぞが思いつく程度のことを、あの読みにくさを避けてわかりやすく書く。
第2問:PJTの理由と長女任命の狙い
なぜ、A社は、首都圏の市場を開拓するためにプロジェクトチームを組織したのか。また、長女(後の2代目)をプロジェクトリーダーに任命した狙いは何か。100字以内で答えよ。
A:良い答案 | B:普通の答案 | C:悪い答案 |
---|---|---|
理由は、旧態依然の組織慣性を避け、長女の経験を活かし機動的に首都圏新規市場を開拓するため。狙いは、長女の物流企画・営業経験を活用し、経営能力を育成し円滑な事業承継を図ること。(87字) | 首都圏の物流需要獲得のため、長女の経験を活かし、少人数でリスクを抑えつつ、事業を成長させるため。また、長女の経営者育成のため。(63字) | 県外輸送引合増加首都圏物流需要可能性長女経験活用機動的新市場開拓担わせ。後継者育成事業責任者経験積ませ円滑事業承継狙い。(60字) |
○設問要求の網羅的回答:「組織した理由」と「長女任命の狙い」の両方を明確に答えている。 | ○主要論点の把握:「首都圏市場開拓」「長女の経験活用」「経営者育成」3といった主要な論点は捉えている。 | ×キーワード羅列・読点省略:文字数を詰めるために読点を省き、体言止めを多用することで、文章として非常に不自然に。各要素間の区切りが曖昧で内容が頭に入ってこない。 |
○ケース情報の正確な抽出:組織理由として「県外輸送の引合い増加」「首都圏での物流需要の可能性」、長女の狙いとして「大手物流企業での経験」「人脈活用」といった、ケースに記載された重要な情報を適切に抽出・活用している。 | ×具体性の欠如:「少人数でリスクを抑えつつ、事業を成長させるため」という記述は、ケースに明記された情報(引合い増加、可能性への着眼)や長女の具体的な強み(人脈)に比べて具体性が低い。 | ×論理的つながりの欠如:各キーワードはケースから抽出されているものの、それらがなぜ重要なのか、どのように関連しているのかという説明が不足している。具体的には、「長女経験活用機動的新市場開拓担わせ」は、文章のつながりがなく文意の把握を阻害する。 |
○論理的かつ具体的な記述:単なる情報の抽出だけでなく、「活用し、担わせ、育成するため」という目的語を明確にし、論理的に説明している。 | ×因果関係が曖昧:組織理由と長女の狙いが並列的になり、それぞれの間の深い因果関係(例えば、長女の経験がなぜプロジェクトチームという形態に繋がるのか)が十分に説明されていない。 | ×採点者の負担増大:このような形式の答案は、採点者が内容を正確に読み取り、評価する上で大きな負担となる。 |
A答案は、「理由」「狙い」をそれぞれ端的な因果で示す。逆に市中の勉強会ではC答案目指してまっしぐらの所もあるので、怖い物見たさで覗いてみましょう。
第3問:大手スーパーZ社がA社に受託打診
なぜ、Z社はA社に案件を持ちかけたのか。100字以内で答えよ。
A:良い答案 | B:普通の答案 | C:悪い答案 |
---|---|---|
理由は、Z社が県内進出するにあたり、A社がX社との取引実績で培った保管・流通加工能力と、長男の物流システム提案力、協力会との連携による地元信頼を評価し、物流委託を期待したため。(88字) | A社がスーパーX社との取引実績や、長男の物流システム提案力、地元での信頼があったため。Z社はこれらを活かして県内物流を効率化できると期待した。(71字) | Z社県内進出時A社X社取引実績評価保管流通加工能力。長男物流システム提案力協力会連携地元信頼活用。物流業務委託期待。(58字) |
○与件根拠の適切活用:Z社のニーズ(県内進出)とA社の具体的な強み(X社実績、保管・流通加工能力、長男のシステム提案力、協力会連携、地元信頼)を過不足なく盛り込み、Z社がA社に何を期待したのかを明確に説明している。 | ○主要な強みの把握:「X社実績」「長男のシステム提案力」「地元信頼」といった主要な要素は捉えている。 | ×キーワード羅列・体言止め多用:前置詞や助詞、読点の省略が著しく、文章の構造が崩壊している [会話履歴]。意味の区切りが分かりにくく、非常に読みにくい。 |
○多角的な視点:A社の複数の強みがZ社のニーズに合致したという多角的な視点から理由を説明している。 | ×具体性の欠如:「保管業務や流通加工能力」といった具体的な強みや、「協力会との連携」といった詳細な情報が不足している。 | ×論理的つながりの欠如:各キーワードが独立して並べられており、それらの相互関係やZ社がなぜA社を選んだのかという具体的な「期待」の内容が伝わりにくい。 |
○論理的記述:「評価し、期待したため」という因果関係が明確で、論理的な構成となっている。 | ×期待効果の曖昧さ:「県内物流を効率化できると期待した」という表現は適切だが、「良い答案例」と比較すると、Z社がどのような形でA社にメリットを見出したのかという具体性がやや弱い。 | ×採点者の負担増大:このような表現は、採点者が意図を汲み取るのに時間を要し、本来評価されるべきキーワードが埋もれてしまう可能性がある |
100字マス目の文章を因果で書くと、読みやすく加点されやすい。一方B答案では50字で一度切れて追加で書くため文が「倒置」し、ひどく読みにくくなります。
第4問(設問1):創業者の出番で配置転換
今後、A社が3PL事業者となるための事業展開について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
2024年の創業経営者の助言による配置転換の狙いは何か。80字以内で答えよ。
A:良い答案 | B:普通の答案 | C:悪い答案 |
---|---|---|
狙いは、長男の物流システム知識を県内事業部に展開して受注・在庫管理を高度化し、知見の浅い長男を経営幹部が補佐し、2代目経営者を支えることで組織活性化を図ること。(80字) | 県内事業部の課題である在庫管理等の改善を図るため、長男のシステム知見を活用し、経験ある経営幹部が2代目経営者を支える体制を構築する狙い。(68字) | 独断長男経営幹部補佐体制構築。2代目経営者支援組織活性化狙う。長男物流システム知識県内事業部展開。受注在庫管理高度化。(59字) |
○主な狙いが明確:長男のシステム知識の活用と県内事業部の高度化、長男の独断性を補佐する体制、2代目経営者のサポート、組織活性化という、ケースに明記された複数の狙いを過不足なく抽出している | ○主要な狙いの把握:「県内事業部の課題改善」「長男のシステム知見活用」「経営幹部による2代目支援」といった主要な論点は捉えている。 | ×キーワード羅列・読点省略:80字という字数制限にキーワードを無理やり押し込めるため、助詞や動詞の省略、読点の欠如が顕著であり、非常に読みにくい。 |
○因果が明確:それぞれの狙いが「~を図るため」と明確な目的意識を持って記述されており、論理的なつながりがある。 | ×具体性の不足:「在庫管理等」という表現は「受注・在庫管理」よりやや曖昧。また、「組織活性化」という重要な狙いが抜けており、全体の網羅性が劣る。 | ×論理的つながりの欠如:文脈が断絶しており、各要素間の関係性が不明瞭。例えば、「独断長男経営幹部補佐体制構築」だけでは、その目的や結果が理解しにくい。 |
×冗長な表現:「体制を構築する狙い」は「体制構築」など、もう少し簡潔にできた可能性がある。 | ×採点者の解釈への依存:受験生の意図を採点者側の解釈に委ねる形になっており、正確な評価が難しい。 |
狙い(期待効果)はピタリ正解できるので、100字マス目の構成を先に意識して書く。B答案のようにマス目が余ると文が間延びし、「わかっていない感」が漂います。
第4問(設問2):ラス問助言の期待効果は2つ以上に
(設問2)
A社がZ社との取引関係を強化していくために必要な施策を、100字以内で助言せよ。
A:良い答案 | B:普通の答案 | 悪い答案 |
---|---|---|
A社は、長男主導で県内事業部の在庫管理システムを高度化してZ社が必要とする機動的な商品補充を実現し、多様な専門人材の評価・処遇制度を改革し、人手不足に対応しつつ組織を活性化させる。(90字) | Z社向けに県内事業部で在庫管理システムを導入し、効率的な商品補充を実現。また、専門人材確保のため、人事評価制度を見直し、社員のモチベーションを向上させる。(77字) | 長男主導県内事業部在庫管理システム高度化。機動的商品補充実現。多様専門人材評価処遇制度改革。人手不足対応組織活性化。(58字) |
○具体的な施策の提示:Z社のニーズ(適正在庫管理、機動的商品補充)に対応する具体的な施策(長男主導でのシステム高度化)と、その基盤となる組織・人材面(評価・処遇制度改革、人手不足対応、組織活性化)の両面から施策を提示している。 | ○主要な施策の把握:「在庫管理システム導入」「商品補充の効率化」「専門人材確保」「人事評価制度見直し」といった主要な施策は捉えている。 | ×体言止め・助詞省略の多用:文全体が体言止めで構成されており、助詞や動詞がほとんど省略されている。これにより、文章として成立しておらず、非常に読みにくい。 |
○ケース情報の深い理解:長男の専門性やA社の組織課題といったケース情報を踏まえた、現実的かつ効果的な施策である。 | ×主要な施策の把握:「在庫管理システム導入」「商品補充の効率化」「専門人材確保」「人事評価制度見直し」といった主要な施策は捉えている。 | ×指示語の欠如:「すべきである」といった助言の意図を示す表現が完全に欠落しており、単なる状況説明や事実の列挙に見える |
○論理的な助言:「組織を活性化させる」と明確な助言形式で、論理的な結論を導いている。 | ×論点の網羅性:「組織の活性化」という、より広範な組織課題への対応が明示されていない。 | ×論理構造の破綻:各要素が箇条書きのように並べられるだけで、施策間の関連性や優先順位、期待される効果が全く伝わらない。採点者が受験生の意図を正確に読み取ることは極めて困難である。 |
A答案が素直に読みやすいとすれば、B答案は一言足りず、C答案は一言多い。この100字の助言では、①Z社との取引拡大 ②A社の解決課題(例:評価制度)を一石二鳥で解決するのがコツです。
今日のまとめ
当試験はどんなノウハウでも2割で受かるので、合格ボーダー超え目指してキーワードをあと1つ2つ盛る手口もアリ。しかしAIを使ってその傾向を読み解くと、そこは「具体性の解像度」「根拠の因果」の違いと特定できます。