試験を終えたらすぐ復習し、口述対策に備えて適度な間を空け、出題知識を時々チェックして長期記憶に定着させる。必ずこの手順を踏まないと、もともと小さなオツムがひたすら固い、応用と機転の利かない同業D社の合格自慢が爆誕します。
新作事例とはヤマを張って当てるのでなく、日頃の知識や関心を【応用や機転を利かせて】アドリブするもの。そこで私が予想した20選を使い、事例Ⅰ~Ⅲのイマドキ度を評価します。
事例Ⅰ | 事例Ⅱ | 事例Ⅲ | |
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第1問 | 2000年の強み弱み | タイパの悪いSWOT | C社の強みを80字 |
第2問 | 地域事業部と後継育成 | 感覚観念価値で返礼品 | 製缶工程の能力向上 |
第3問 | 大手顧客から協業打診 | 愛好家向け新規事業 | 工程管理業務の改善 |
第4問 | 創業者の力で配置転換 | O2Oでオフライン誘客 | コスト増で値上交渉 |
第5問(第4問(2)) | 顧客期待に応える組織 | 自社企画で依存解消 | |
【事例Ⅰ予想】2.社員のデジタルスキルの向上 | ○物流シス自社開発 | ||
3.テレワークによる労働生産性の維持・向上 | × | ||
6.多様な働き方に対応した労務管理 | × | ||
10.人材の確保と育成における競争力の維持 | ◎処遇の不満解決 | ||
14.人材のモチベーション管理とエンゲージメント向上 | × | ||
17.社内コミュニケーションのデジタル化 | △2事業部は仲が悪い | ||
【事例Ⅱ予想】5.デジタルマーケティング戦略の最適化 | ◎O2Oは大きく注目 | ||
7.顧客ニーズの急速な変化への対応 | ○感覚・感性価値出題 | ||
8.グローバル市場への進出と現地適応 | × | ||
15.顧客データの利活用によるパーソナライズ化 | ×購入履歴は言及なし | ||
18.サービスの即応性とフレキシビリティ向上 | ○顔の見える接客 | ||
【事例Ⅲ予想】1.業務プロセスの自動化とデジタルツールの導入 | ○図面情報を部門共有 | ||
11.サプライチェーンの可視化と最適化 | ◎X社依存より自主企画 | ||
12.製品・サービスの品質向上と顧客満足度の向上 | ○C社長の提案力 | ||
13.環境に配慮した持続可能な生産体制の構築 | × | ||
19.多様なサプライヤーとの協働によるリスク分散 | ○クリエーター協業 | ○他社から見たサプライヤー | |
20.ITインフラの拡充と運用コストの最適化 | ×運用より値上げ交渉 |
【AI予想20の的中度】事例Ⅰ~Ⅲのイマドキチェック / 予想はどれだけストライク?
生成AI時代のおっきな変化は、試験委員=主・AI=従でなく、AI予想=主にして試験委員のセンスがどれだけイマドキかをチェックする点。そして誘客・愛顧に代表されるふぞろい10年フレーズが、いかに古臭い印象=イケてないかを明らかにします。
事例Ⅰ:2事業部の仲が極端に悪い運送業者
権限移譲で事業部制を敷くほど部門の壁が高く、仲が悪くなる。特にイマドキ県内地場賃金で首都圏の雇用が成り立つはずもなく、据え置くと首都圏が不満、上げると県内が不満で詰む。部門の壁を越えてここを解決するのが、時流を捉えた診断士への期待です。
加点対象外の重要証拠~2つの事業部はなぜ不仲?
①目標や優先順位の違い | ②コミュニケ―ション不足 | ③文化や業務プロセスの違い |
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各部門や地域が異なる目標や指標を持っていると、部門間でリソースの取り合いや役割分担の認識にズレが生じ、対立が生まれやすくなります。 | 物理的な距離があると、情報の共有が滞って相互理解が進みにくくなります。その結果、相手部門の活動が不透明になり、不信感が生じやすくなります。 | 地域や部門ごとに業務の進め方や組織文化が異なると、効率的な協力が難しくなることがあります。このような文化の違いが放置されると、軋轢が深まる要因となります。 |
本試験問題では、特に「デジタルスキルの向上」に直接触れる部分はありませんでした。しかし、情報システム部の設立や受注管理・在庫管理システムの高度化に関連する要素はあり、システムの強化が一部的中といえます。
テレワークに関する記述は見られませんでした。したがって、この点は不的中と評価できます。
多様な働き方に対応する労務管理に関連する記述はありませんでした。不的中です。
人材の確保と育成については、長男や長女の採用・抜擢が関連しています。特に情報システム部の設立やプロパーの専門職雇用が競争力維持と関連し、処遇の改善が必要となり、的中と言えます。
この要素は特に記載されておらず、不的中と評価できます。
社内コミュニケーションのデジタル化には直接的な記述が見当たりませんが、情報システムの構築による業務効率化がその一部に該当すると捉えることができ、一部的中です。
事例Ⅱ:誘客・愛顧→感覚&観念価値への転換を促すX焼卸のB社
デジタルマーケ全盛の時代に、誘客して関係性強化の愛顧で顧客生涯価値最大?そんな間抜け答案を書く人類が実在する可能性はゼロ以下ですが、感覚・観念価値(「経営」R5第34問)の出題は想定外でした。
当サイトの当日作成再現答案70枚中、R6Ⅱ第2問で「感覚価値」「感性価値」に全く触れなかった方が9割弱、なんとか加点できる答案が2枚だけ。よってこの後ふぞろいやスクール採点に出現する「この2つをピンポイントで書く」答案は、スクール模範解答に影響された願望モリモリ分としてスルー推奨です。
デジタル施策を活用し顧客接点を拡充し、実店舗への誘導を図るO2O戦略が実際に出題されました。AI予想においても、事例企業がECサイトやSNSを用いて、ターゲット層にアプローチすることで、店舗への集客を促す施策を予測していました。この点で、AI予想は的中しているといえます。
本試験では、コロナ禍での市場の変化に応じ、オンライン発信や若者層・海外視聴者へのリーチなど、急速な環境変化に適応した行動が描かれています。AI予想がニーズの変化に対する柔軟性を挙げた点で、対応の方向性は一致しています。
グローバル市場への進出としては直接的な記述が見られませんが、コロナ禍のオンライン発信によって「海外の人々からの関心を得た」という点で、限定的ながらも海外市場への接触が示されています。ただし、本試験では主として国内でのブランド再構築が焦点であるため、完全には一致しないと言えます。
本試験問題には顧客データを使った個別対応に直接言及はされていませんが、3代目がホテルの料理長と「料理内容に合わせた色や形の食器を提案する」など、顧客ニーズに応じた商品提供を行う点がパーソナライズ化の方向性と類似しています。
3代目がファッション業界の経験を活かし、柔軟にデザイン提案や顧客対応を行っていることは、サービスの即応性やフレキシビリティ向上に関連すると解釈できます。また、オンラインでの情報発信を通じて、顧客からの関心に素早く応答する姿勢も反映されていると言えます。
事例Ⅲ:第2+3問のあいまいな解答指示はどーなのよ?な搬送装置製造C社
今回の第2問では「どのように工程改善=能力向上」、第3問「どのように工程管理業務を改善=混乱の収拾」と似通ったクエストが出され、特に初学者には難解な設問文でした。当試験の初学優遇前提でここで大きな点差がつかないと割り切り、誤って受験2年目に超絶スクールを選ばない賢さが求められます。
ヒトが相手のホワイトカラーより、機械相手の製造業の方がDX・システム化が容易に進む。この試験の狙いがホワイトカラーの生産性向上にあると弁え、「事例Ⅲ」ではムキにならない。
AI予想では、業務プロセスの自動化やデジタルツール導入の重要性が示されており、特に工程管理の混乱や納期短縮への対応としてのIT活用が的中しました。C社の工程管理においてITの利用が検討されている点はAI予想と一致し、適用可能性が高い部分でした。
サプライチェーンの可視化は、特定顧客に依存するリスクを軽減するため、戦略的に重要です。今回のケースでは、X社への売上集中が6割に達しており、受注先が偏るリスクが顕著です。サプライチェーンの可視化により、C社は他社に自主企画品を売り込む際に適切な在庫管理や生産計画を整え、リスク分散が可能となります。
C社では工程管理の混乱や納期対応の問題が品質と顧客満足度に影響する可能性があるため、AI予想の「品質向上と顧客満足度向上」の重要性が高いことが示されていました。本試験問題においても、製缶課の生産負荷増加や不適合品発生に対する品質管理の必要性が暗示されており、AI予想の的中度が高いといえます。
今年の試験問題には直接的な環境配慮の記述はなく、C社の生産体制改善の文脈では持続可能性が今後の成長に向けた重要課題となるとはいえ、今回のAI予想は不適中でした。
本試験問題では、X社からの受注が6割を占めることや、中国からの国内生産回帰の影響が指摘されており、サプライヤー依存度の高さがリスクとして浮き彫りになっています。この点もAI予想が的中したといえます。
今回の本試験では、ITインフラの運用コスト削減よりも、製品の売価引き上げによる収益改善が重視されていました。ITコスト削減を優先するのではなく、価格設定を適切に見直し、利益率を確保する戦略が求められており、不的中と言えます。
今日のまとめ
当試験で大切なのは、知識のヤマを当てるより、日頃の知識や関心から【応用や機転を利かせて】アドリブすること。そしてR6の4事例は全て「予想は当てても」「本番ではとても対応できない」期待以上の良問でした。