試験委員がベテから落とす理由は、「受験合格平均年齢引き下げ」と「好ましくないD社ノウハウの拡散防止」。そして落とす技術は、詰め詰めモリモリかつ支離滅裂でわかりにくいオジサン構文が目印です。
この試験には難関資格合格&合格後の特典もあるが、東大出をはじめデキる君の思考手順や仕事の進め方を学べる利点が大きい。そこでなぜ試験の作問採点基準が3~4年サイクルで一変するかの事情を説明します。
H30以前の試験では、企業診断の実務手順を重視し、受験者の実務能力を測ることに重点が置かれていました。しかし、R1事例Ⅰ(ゆで蛙)以降は実際のリアル企業で起きている組織上の問題点を指摘するために、一定レベル以上の知識を問う傾向が強まりました。この変化により、従来型のベテラン専門スクールの解答テクニックが通用しなくなり、趣味を兼ねた試験委員研究と豊富な「1次」指導経験をもとに、周囲が追いつけないような超絶知識指導を看板にする新たなベテ専スクールが人気を集めたのです。
現在の試験では、受験者に対し大量の情報を同時に処理し、優先順位をつけて取捨選択する国語の読み書きスキルが問われています。この能力は、今後生成AIによって補完される可能性があるため、受験者は要点を迅速に把握し、周囲に説明できる課題解決型リーダーシップを養うことが求められています。
2022年度には、例のベテラン専門スクールの受講生がSNSで自らの答案を誇示した結果、試験委員の目に留まり、採点基準が変更されて根こそぎ不合格にされるイベントが発生しました。この事件は、過度な合格自慢を戒め、情報発信における節度を促すとともに、合格者年齢の上昇を抑制する効果をもたらしました。このように、SNSの影響が試験の公正性や受験環境に影響を与え、試験制度が進化する一因となっています。
【目指す答の新旧比較】たった2年で答案激変 / 2023年10月号事例Ⅰ(KEC)
丹念にベテから狙い撃った成果が、2022年の例のSNS自爆イベントで一気に花開く。そして受験技術もベテ専課金→無料の生成AI利用の真反対にシフトします。
Step-1:やめてよかった3大ムダ勉
今ほど初学スト生優遇でなくても、もともとこの試験は「1次」知識+12週間の「2次」準備で2割ガチャに進める設定。そして以下3つのムダ勉の悪い共通点は、「受験2年目以降の暇つぶし」に重きを置くことです。
春秋要約は限られた文字数で本質を捉える技術が求められますが、試験の傾向が変わった現在、余計な情報を省かずに要約することが逆に難しくなっています。特に、ビジネス文章は20字×3センテンスの因果関係である60字を用いることで初めて説得力やビジネス力が上がります。また、春秋の要約は「上から目線感」を強める傾向があり、採点者に好感を持たれにくくなるため、受験者は「訊かれたことに素直に答える」ことが難しくなります。
本来「1次」で培うべき基本知識を「2次」の答案の書き方と同時に訓練することで、不要な知識が硬直化し、逆に受験者の柔軟な思考を妨げるデメリットが生じています。この結果、受験者は必要以上に知識を盛り込みがちで、「訊かれてもいない余計な知識」を記載することで、採点者から評価されにくくなることが懸念されます。
同業D社がEBAから得たノウハウをもとに与件を無視した想定問答集を作成した結果、試験委員の意向に反する形で受験者の与件読解力を高める意図が損なわれました。このように、与件を読み込まずに答えることは、「訊かれたことに素直に答える」姿勢から逸脱し、採点者に対して不快感を与え、評価を下げる要因となります。
Step-2:生成AI普及で技術革新
その添削機能の弱さと、そもそも元カリスマ講師の我流なヘタクソ解答で周囲を呆れさせていたスクール事例。それらの未利用資源が生成AI利用で有効活用と聞き、本物試験委員も喜ぶでしょう。
作問採点基準の変動に伴い、受験者は「訊かれたことに素直に答える」ことが求められるようになりました。この流れは、試験委員の警告を受けて、受験者が過去の知識に頼らず、与件に基づいた具体的な回答を重視するようになったことに起因します。従来のベテラン答案の逆効果を避けるため、素直で簡潔な回答が優先されるようになりました。
受験者は与件文を正確に読み込み、必要な情報を優先順位に従って引用する技術を身につける必要が生まれました。この傾向は、情報の取捨選択を行う国語スキルの重要性が高まったことと関連しています。生成AIの普及により、与件の要点を素早く把握し、関連情報を整理する能力が強化され、受験者はより効率的に答案を作成する手法を学ぶことができました。
受験技術において、「構文を使って結論を先に決める」アプローチが浸透しました。この手法は、生成AIによる文章生成の影響を受け、構造化された論理展開が求められるようになったためです。AIが提示する明確な論理構造に触れることで、受験者は答案作成においても同様の方法を取り入れるようになり、わかりやすい因果関係を示しながら、採点者に好印象を与える答案作成が進化しました。
Step-3:目指す答の新旧変化 ~2023/10月号事例Ⅰ(KEC)
今回のKEC事例Ⅰは、設問文で「考えられるか」を連発し、類推を練習させる演習事例。よって答案の書きぶりが「類推→引用因果」に変わった違いが、一目でわかります。
Before:スクール解答 | After:生成AI答案 | |
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各問ごとに独自の構成を考えるため、解答骨子作成に悩む時間が長くなりがちです。特に、過去の知識に基づく冗長な表現が見られ、主張が散漫になることがあります。 | ①効率的な文章構成 | 構文を使用することで、文章構成に悩むことなく、一定のフォーマットに従って回答を組み立てることができます。このため、迅速に論理的な回答を提供でき、構成が明確になります。 |
知識に基づいた回答が多く、因果関係が曖昧な場合があります。特に理由や要因が適切に整理されておらず、採点者に意図が伝わりにくい傾向があります。 | ②論理的な因果関係 | 結論を先に決め、そこに向けて明確な因果関係を示すことで、論理が一貫し、読み手にとって理解しやすい文章が作成されます。各要素が整然と配置され、論理的な流れが強化されます。 |
作問者本人が教えたい根拠を過度に詰め込む傾向があり、情報過多によって要点がぼやけることが多いです。このため、読み込み時間が長くなり、採点者にとっても読みづらい答案となる可能性があります。 | ③与件文を上手に引用 | 与件根拠を必要最小限に絞り込むことで、短時間で要点を把握しやすく、採点者にとっても読みやすい答案が作成されます。情報の取捨選択が的確であるため、効果的なアプローチとなります。 |
第1問(配点35点) 戦略 | 理由 | 第2問(20点) |
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現社長が社長に就任後、時間はかかったものの、現在に至るまで比較的順調に成長することができた。現社長のとった戦略とその戦略をとった理由にはどのようなものが考えられるか。それぞれ100字以内で説明せよ。 | 長年、A社の課題であった良品率が、専用の機械導入後、70%にまで向上した。その後、横這い状態が続いたが、近年は90%以上にまで向上している。その要因としてどのようなことが考えられるか、100字以内で説明せよ。 | |
【採点基準】 戦略:多品種少量生産、外部連携5点、その他3点 その説明:3点×3=8点まで ①外部連携で成長 ②ニッチトップ ③高利益率 | 戦略:多品種少量生産、外部連携5点、その他3点 その説明:3点×3=8点まで ①外部連携で成長 ②ニッチトップ ③高利益率 | 要因:3点×4=12点 ①中途入社の製造部長 ②専用製造機械 ③社内教育など ④競技用ビーチボールの高い品質要求 ※別解OK 要因の結果:良品率が90%以上に・・4点 |
【スクール解答】 成長戦略では、経営資源について内部資源以外に広く外部とアライアンスする外部成長戦略、競争戦略面では、製品の市場規模が大きくなくても、進出して圧倒的なシェアを取ることを目指すニッチ戦略を取っている。(98字) | 成長戦略面では、小規模企業単独では獲得に限界のある内部資源を外部資源で合理的に補完するため、競争戦略面では、自社の強みを生かし、大手企業が進出してこない市場で競争そのものを回避するためと考えられる。(99字) | 品質管理に厳しい外部企業から中途採用で入社した現責任者が、従業員に良品率向上に関する技術教育を行うとともに、良品率に関する従業員の意識改革を進めたことにより、組織風土が変化したことが要因と考えられる。(100字) |
【AI答案】 戦略は、①同業他社には難しい技術により高難度で高品質な製品を開発し、②多品種小ロットで多様な要望に応えて量産品依存から脱却することで、③市場競争力向上と取引先の増加を通じ安定した収益基盤を確立すること。(100字) | 理由は、①大学や研究機関との連携により技術力を強化し、②量産品ではなく多品種小ロットの高付加価値製品への注力を進め、③規模の経済が働く大企業との価格競争や特定取引先への依存を避けるためと考えられる。(99字) | 要因は、①中途採用した部長が技術教育を行い、②A社専用機械の導入により生産効率が向上し、③もともとの高い製造品質と外部連携を組み合わせた組織学習が進んだことで、良品率が90%以上に向上したと考えられる。(100字) |
【AI改善アドバイス】 ①「外部成長」「ニッチ」といった抽象表現を避け、「高難度で高品質」「多品種小ロット」のように与件を引用する。 ②理解しづらい専門用語(アライアンス)を突然使うことを避け、与件の平易な言葉で書く。 ③戦略の羅列で終えずに、「安定した収益基盤を確立」のように具体的な効果を入れて締める。 | ①100字答案を○○面、××面と切り分けるより、1文3センテンス因果の方が読みやすい。 ②一般知識を書きたがるスクール答案より、大学や研究機関との連携などを与件から引用する方が良い。 ③競争回避を抽象的に語るより、(設問1)の戦略に基づき具体的な記述をする方が良い。 | ①原因を曖昧にせずに具体的な要因を3つ挙げることで、明確な因果関係になる。 ②機械導入や教育などこれも具体的施策を挙げることで、説得力が高まる。 ③良品率の数値を繰り返し使うことで、訊かれたことに答えていることを示せる。 |
第3問(配点40点) (設問1) | (設問2) |
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A社では、中小企業診断士の助言も参考に経営改革を進めている。今後の経営改革についての以下の設問に答えよ。 (設問1) 現在のA社は、比較的順調に営業を続けている。しかし、中小企業診断士の指摘の中にある、将来において、中長期的にどのような問題が起こる可能性が考えられるか、A社における現状の組織体制を考慮して、120字以内で述べよ。 | (設問2) (設問1)で考えられる問題について、どのような対策を取るべきか、100字以内で助言せよ。 |
【採点基準】 根拠:3点×4=10点まで ①社長のトップセールス ②管理しかしない営業 ③多数の新製品 ④研究開発部の強化 問題点:8点 | 対策:4点×3=12点 ①営業部の設置 ②他社にはないコア技術 ③社内外での組織設計の工夫 (=留意点を意識) 効果:今後のさらなる成長4点それ以外2点 |
【スクール解答】 現在のA社は、独立した研究開発部があり、独自に製品開発を担当している。一方、営業は、社長のトップセールスで行われており、営業担当者は管理を担当している。このような組織体制では、消費者のニーズと乖離したシーズ志向の製品開発が行われる危険がある。(120字) | 営業部を設置し、消費者のニーズを把握することができる体制をつくる。そのうえで、研究開発部とのコミュニケーションを確実にし、ニーズに合致した製品開発につなげることのできる組織体制を構築することを助言する。(100字) |
【AI答案】 現在のA社は、①生産を中心とした機能別組織であり、②営業は社長のトップセールスに依存し、③営業担当者は受発注管理に専念している。これにより、④新規顧客開拓や市場ニーズの迅速な把握が難しく、成長が停滞し、競争力が低下する問題の可能性がある。(119字) | A社は、①営業部を新設し専任者を配置することで、②社長のトップセールスから組織的営業に移行し、③研究開発部と連携を強化することにより成長機会を活かし、新規顧客開拓が進まない問題を解消するべき。(100字) |
【AI改善アドバイス】 ①具体的な組織構造の問題点を3つ挙げ、それによる懸念を因果関係で導いていく。 ②「シーズ志向開発」と急に飛躍せずに、「成長停滞、競争力低下」程度にとどめる。 ③「これにより④」の因果を入れることで、トップセールス依存の問題点が明確になる。 | ①「営業部の新設」に「専任者配置」を加え、施策の解像度を上げる。 ②消費者ニーズの把握より、「成長機会活用」「新規顧客開拓」の方がC社にとって具体的。 ③組織的営業への移行を通じて連携につなげる生成AI答案の方が上手。 |
今日のまとめ
そしてこの2023年10月号事例Ⅰはスクール解答こそ全く時流とズレるが、生成AIで作った模範解答+採点基準を使うと見違えるように役に立つ。もし過去問の解き過ぎでベテ化が進むあなたなら、今すぐ公共図書館へGoです。