「事例Ⅳ」には定石セオリー。
何言ってんだよ。「Ⅳ」出題はランダムでルーレット。そう言ったのはオマエだぞ。
いえそうでなく。今日紹介する「セオリー」は、60点を狙う受験側ではなく、出題側の台所事情と持ちネタの話です。
「Ⅳ」を30~80点あたりに正規分布させたい台所事情+持ちネタ
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出題側も大変そう? いえ、例えばH29の様に「論点はセオリー通りでも、計算が煩雑」。会計プロの試験委員にとり、計算量で難度調整する位は朝飯前です。
だから難しい計算で「うぷっ」となる前に、「事例Ⅳ」で聞かれる論点のセオリーを先に押さえる。それに最適なのが、良問「H24」です。
H24「事例Ⅳ」
後継者難の旅館オーナーに、追加投資or事業承継を具体提案。
さてこのH24、初めて挑戦しても解けません。というか、本番受験者5,000人全員にこんな問題、80分で解けるワケない。と思わせた難問。
でもこの難問、「感心した」「何度も解き直した」「早く診断士になりたくなった」との感想が聞こえてくる良問なんです。それはね、
「Ⅳ」で教える解法セオリーを網羅しながら、 そのストーリー仕立てが見事だから。 |
オーナー夫妻から、旧館の・・(後略)。
(設問1)
改修工事の結果として、初年度(a)、2 年目(b)の年間宿泊者数がオーナー夫妻の予想通りに回復した場合の予想損益計算書を作成せよ。なお、この期間、営業外収益は発生しないものとする。
(設問2)
改修工事の結果として年間宿泊者数が 18,000 名に回復した場合に、今年度よりも収益性が改善したか否かを判定するのに最もふさわしいと考えられる財務指標の名称を(a)欄に 3 つあげ、その数値を計算して(b)欄に示せ。なお、貸借対照表は次に示されたものを使用すること。 (BSは省略)
(設問3)
この施設改修に関して、正味現在価値法を用いてこの投資案を評価せよ。ただし、2 年目以降、10 年目まで年間宿泊者数は 18,000 名で推移すると見込まれている。また、税率 40 %、割引率 6 % とする。計算には下記の年金現価係数表を用いよ。なお、運転資本の増減はないと仮定する。 (年金現価係数表は省略)
旧館の改修とは別の改善策として、旧館を閉鎖し、新館のみで営業した場合の収益性について、オーナー夫妻から意見を求められた。この改善策を実施した場合、客単価は変化しないものの、年間宿泊客数は 15,000 名に減少することが予想されている。
これにより、人件費、減価償却費を除く固定費は今年度より 30 % 減少する。
(設問1)
この改善策を実施した場合の損益分岐点比率を求めよ(計算過程も明示すること)。なお、ここでは、営業利益をゼロとする売上高を損益分岐点とする。計算にあたっては、千円未満を四捨五入せよ。
(設問2)
この改善策を実施した後、損益分岐点比率 90 % を目標としたい、とオーナー夫妻からの要望があった。この要望に固定費の削減で応える場合、その削減額を求めよ(計算過程も明示すること。
前述したように、オーナー夫妻には後継者がなく、親族にも経営を任せられる人材が見当たらないという。場合によっては、旅館の売却を伴う事業承継も視野に入れているといい、今年度の状況を前提とした具体的なケースについて説明を求められた。
(設問1)
承継先にかかわらず、売却価格の算定に際しては、客観的な数値が必要となる。そこで、今年度の財務諸表をもとに企業価値を求めることになった。割引キャッシュフロー法を用いて、企業価値を求めよ。
ただし、算定にあたっては、オーナー夫妻に対する給与 16,000 千円は不要となることが分かっている。また、今後の株主資本コストを 5 %、平均的な負債資本コストを 4 %、税率は 40 %、キャッシュフローは今年度の水準が将来にわたって継続するものと仮定する。
(設問2)
事業承継を考える際、承継先としてどのような相手が考えられるか。また、その際の留意点について中小企業診断士の立場から 200 字以内で説明せよ。
今日のまとめ
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ではなぜこんな出題? それはね、計算過程を丁寧に採点すれば実力通りの点差がつく。そして今後5年受験者のお手本になるなら、答案5,000枚の丁寧な採点位は喜んで(?)。
あぁ、なんて教育愛に満ちた試験なんだ! |
おっと、そんな勘違いは禁物。出題セオリーの定石は掴んでも、計算難度は年により難易ブレブレなのが「Ⅳ」。そのブレのリスクをどう管理するか? 明日も「Ⅳ」シリーズです。
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