J事例Ⅲ

【出題の趣旨で振り返り】H30「Ⅲ」は80分では無理ゲー

新進気鋭の試験委員が張り切ったら、5,000人のほぼ全員がドボン。

口述合格発表時、現役診断士ならどの資料を最重視するか。 合格者の番号?人数?統計資料? それも大事ですが「最重視」するなら出題の趣旨一択です。

特にH30「事例Ⅲ」といえば、次年度対策の参考になる点が以下の通りに盛りだくさん。

  • スクール・サークルが苦手な生産管理/業務の切り分けを連続出題。
  • レイヤー切り分けミスを誘う、巧みな第2、4問のコンタミ出題
  • 第2問マン・マシーンは出来の悪さに没問扱い?
  • 前年の生産管理→業務とは逆順に、生産業務→管理(計画)→管理(統制)。
  • 段取長時間→大ロットから、現品管理を経てJITに繋げる気宇壮大さ。
  • 従来問われたQCD論点はほぼスルー。

要するに前年までの経験則が通用せず、80分ではとても解けない事例だった。なぜそうなって、ではどうするか。ここが議論のスタートです。

【出題の趣旨で振り返り】H30「事例Ⅲ」は80分では無理ゲー

1⃣問題点:生産管理⇔業務の切り分けが年々カオス

なぜそうなったか、出題の趣旨を参考に図解でどうぞ。

第2~4問は生産管理⇔業務を深く問い、80分ではとても解けない無理ゲー問題。

レイヤーは、一発合格もくじシートを参照。

80分で解けない出題は、試験がくじ引き化して合格者が多様になる点で歓迎です。しかし、(業界標準たるTACスピテキが本格改訂を10年サボった故に)各スクール・サークルが生産管理⇔業務を好き勝手に切り分け、カオス度がさらに増すのは問題でしょう。

いや、診断士としてそれじゃまずいよ。

そこで受験側は生産管理⇔業務の違いをどう捉えるか。最新「出題の趣旨」3年分に教わります。

2⃣出題の趣旨3年分から見た、生産管理⇔業務の切り分け

H30第2⇔3、4問

第2問:作業方法→IE(生産業務)と類推させるのは初パターン。ミスも止む無し

結果だけ見れば、生産管理(①計画+②統制)+③生産業務の切り分けのお手本になる良問。しかしH28以前と比べ「設問文による解答制約(誘導)」が緩く、第2、4問は解釈ズレが起きやすい難問でもある。

H30第2問(難) H30第3問(並)H30第4問(難)
→生産業務
㉘IE
㉞段取改善の手順
生産管理(計画)
⑫生産計画
⑭ロット生産
生産管理(統制)
⑰生産情報システム(PDM)
⑲在庫(現品)管理
C社の成型加工課の成型加工にかかわる作業内容(図2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を120字以内で述べよ。 C社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図1)を分析して、C社の生産計画上の問題点とその改善策を120字以内で述べよ。C社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を120字以内で述べよ。
【出題の趣旨】
C 社成形加工作業者の一日の作業内容を分析し、作業方法に関する問題点を把握し、その問題を解決する能力を問う問題である。
C 社の生産計画策定方法と製品在庫量の推移を分析し、生産計画上の問題点を把握し、その問題を解決する能力を問う問題である。C 社の生産職場の状況を把握し、生産管理のコンピュータ化を進めるために必要な事前整備内容について、助言する能力を問う問題である。

H29第1⇔2問

第1問は生産管理→計画+統制と類推させる歴史的難問

H29第1問(難)H29第2問(並)
広く計画と統制
⑫生産計画
⑮生産管理の緩衝機能
→生産統制の「余力」
㉙職務設計
㊻余力管理の必要理由
CNC木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題と対応策を140字以内で述べよ C社社長は、現在の生産業務を整備して生産能力を向上させ、それによって生じる余力をCNC木工加工機の生産に充てたいと考えている。それを実現するための課題とその対応策について120字以内で述べよ。
新規事業であるCNC木工加工機の生産販売を進めるために必要な生産管理上課題を把握し、解決する能力を問う問題である。新規事業であるCNC木工加工機の生産について、現在の生産能力の向上によって対応するために必要な生産業務上課題を把握し、解決する能力を問う問題である。

H28第2⇔3問

第2問は「QCDのC」、第3問は「QCDのQ」と明示され、まだ解きやすい。

H28第2問(並)H28第3問(並)
QCDのC
⑯生産体制
⑰材料費の低減
QCDのQ
㉓品質管理
㊽特性要因図
現在 C 社が抱えている最大の経営課題は、収益改善を早急に図ることである。生産管理面での対応策を 160 字以内で述べよ。 C 社では、クレームを削減する改善活動を計画している。このクレーム改善活動を最も効果的に実施するために、着目するクレーム内容、それを解決するための具体的対応策を 120 字以内で述べよ。
【出題の趣旨】
C社が収益改善を図るために必要な生産管理面での対応策を提案する能力を問う問題である。
C社の生産現場の課題を把握し、クレームを削減する改善活動を最も効果的に実施する方法として、着目するクレーム内容その解決策を提案する能力を問う問題である。

今日のまとめ

類推時にレイヤーを外すと、H30第2~4問はひどい点数に。

H29第1問
生産管理上の→【計画+統制】と類推させた。
H30第2問
作業方法に関する→【生産業務(IE)】と類推させた。
H30第4問
生産管理のCPU化→【生産統制(現品管理+PDM)】と〃。

気を付けたいのは、

H29、30の出題ともに「初見の解答要求」であること。

80分間では解けない文章量を処理するために、過去問の出題パターンを研究して備える既存の「2次対策」では対応できず、ぶっちゃけ「その場の出たトコ勝負」にするしかない。

改めて「運営」を勉強するとH30第4問の正解→PDMと類推できますが、ナゾナゾじゃあるまいし、怖くてそんな解答は書けません。

PDMとは

Product Data Managementの略で、「製品データ管理」の意味。製品図面、部品の構成表、技術文書などの製品設計に関連する情報を共有し、一元管理することを指す。生産工程で生じる課題を解決し、効率化を図る手法のこと。PDMを実現するための情報システムを「PDMシステム」と呼ぶ。(後略)

出典:IT用語辞典 大塚商会

よって既存スクール・サークルご自慢の「生産管理⇔業務」切り分けメソッドをうっかり鵜呑みにすると、来年の「Ⅲ」はまた初見問題に出遭ってドボンしそう。そっちより、最新体験記で「どう現場対応したか」の方がよほど役に立つのでは?

そうか、今までの教え方が間違っていたから全員ドボン。
ではH30出題を受けた、新たな捉え方こそ正しいはずだ。

ふぅん。そしてこれが正なら出題者がニヤリとし、来年の「Ⅲ」はもっと点差が開く新作出題をしてくれるはず。ここは大いに期待できそうです。

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