さて「情報」を暗記しようとネットを探すと、「意外に手ごわい」「思うように点が伸びない」とネガ情報ばかりヒットしがちに。そこで単純暗記のクセに点が伸びない仕組みを先に知ります。
「1次」の後半「情報」「法務」「中小」は暗記科目ですが、「経営」「運営」を確実に覚えて稼がないと、ここで取り返すのは難しい。悪いことに「ボクは暗記が苦手・・」と思い込むと、「2次」ノウハウ・パターンの暗記を始めて8割ショボンのループにようこそです。

かつての単純4択マークを止め、全選択肢の正誤判定を組み合わる5択に
SQL・クラウド・AIを毎年出す一方で、古い論点の出題頻度が下がりランダム化
以前の統計のような捨て論点がなく、どこからでも得点できるので気が抜けない。
【はじめての情シス】「情報」は単純暗記から / スコアが伸びない3つの仕組み
この仕組みを一言にすると、「テキストの古い知識の暗記では当てさせず」「その場の機転のアドリブで当てさせる」。ここで暗記の方向を勘違いすると隣のふぞろい一直線です。
Step-1:正誤判定型5択(MTF)の増加
正誤判定型5択(MTF)問題では、複数の文(a~dなど)それぞれの真偽を組み合わせて解答群から1つ選ぶ形式である。通常の4択問題と比較して、知識が細分化され正答率を下げやすい。
実際に5択MTF問題(True/Falseを組み合わせる形)の正答率ランク(A高~D低)を調査すれば、4択問題に比べて高ランク(A,B)問題の割合が減少し、低ランク(C,D)問題の割合が増加すると証明できるだろう。
暫定データとして統計を取ると、正誤判定型5択問題では「Aランク(易問)」の占める割合が約19.7%であるのに対し、通常4択では約17.2%とほぼ同等だが、「Bランク」はMTFで19.7%、4択で35.9%と、MTFでは中難度帯で明らかに割合が低い。一方「Cランク(やや難)」はMTFで42.6%、4択で28.1%と高くなっている。
※サンプル数が少なく、上記報告値の精度は未検証です。
MTF形式では難易度の割に得点率を下げる効果が大きいことが確認できる。これは、選択肢が5パターン(組み合わせ)であるため一つでも見落としがあると間違いやすく、受験生の部分点獲得を難しくするためと考えられる。
教育測定の視点からも、MTF型は正解率の均一化を図りやすく、ミスで得点できなくすることで問題全体の信頼性を維持しやすい(同一ランクの問題でも常に同程度の得点率になるよう設計する必要があるため)
「経営」「法務」が文章の言い回しで迷わせるなら、単純暗記の「情報」「運営」はこの出題形式で迷わせる。ここを最初に知ると暗記がぐっと上手になります。
Step-2:毎年出す定番論点とそうでない非定番の組み合わせ
試験では「定番論点」(過去問で頻出の基礎論点)と「準定番論点」(以前は良く出ていたが最近出題が減った論点)を混在させる出題が行われている。
論点の出現頻度を集計すると、「企業経営理論・戦略論」「技術経営」「経営情報管理のマーケティング論」「データベース処理技術」「信頼性」などが6~7回出題されており、これらは典型的な定番論点である。一方、「アジャイル開発」「セキュリティ概論」など出題数4回程度の論点は準定番といえる。
一般に「1次」各科目では5マーク1論点法と言われ、特に「戦略論」「組織論」「運営管理」では毎年どこから1マーク出るかを特定しやすい。
一方で年25マーク出題の「情報」「法務」では、上位の定番論点こそ毎年1問は出題されているが、下位の論点(薄い青)は年度によって出題がバラついてある年には出題されないなど、「覚えた所の知識が出ない」と暗記への自信を失いやすい。
ここで試験委員は、基礎知識の習得度をチェックしつつ、かつて頻出であった旧定番知識をあえて出題しないことで、過去問偏重型学習への警告を発していると考えられる。
また、教育測定上は難易度の幅を持たせた方が受験者の能力分布がよく区別でき、テスト全体の妥当性・信頼性が向上する。論点を複数の難易度層に分散して出題するのは、テスト設計の基本原則でもある
試験全体を通じ合格時短を進めたことで、上位5%層の流入も進む。隣のD社が叫ぶ古いノウハウをうっかり掴むと、「2次」でふぞろいのチョイスしかなくなる点に注意します。
Step-3:同一論点内で易問も出し、捨て論点を作らせない
同一の論点にもかかわらず年度や出題形式で正答率に大きな差が生じる例も見られる。例えば「情報」における「戦略論」知識は過去5年で7回出題されたが、正答率ランクはA~Dにばらついている(令和2年D、令和3年B、令和4年Cなど)。同様に技術経営や経営情報管理のマーケティングでも高ランクの年と低ランクの年が混在した。これは、試験委員が同一論点でも平易な切り口と難度の高い切り口を織り交ぜることで、基礎理解だけでなく勝手にその難易度を決めつけさせない狙いが考えられる。
このような状況では、「Aランクのみ学習(基礎論点だけ押さえる)」では得点に限界があることがわかる。実際、Aランクの論点だけを完全に押さえた場合でも、過去5年全145問中23問(15.9%)の得点にしかつながらなかった(図3)。これに対し全領域・全論点を網羅学習すれば理想的には満点(100%)を狙える。下図にAランクのみ学習と全層学習の期待得点率を示す。
Aランクの論点のみ学習した場合と、全論点を学習した場合の理論上の得点率比較。Aランク論点だけでは得点率は低く(約16%)抑えられ、全層学習の有効性が示される。
この作問技術①~③が向上し、どこからでも正答率Cランクの作問を可能にしたことで、正解に悩むCランクもある程度当てないと60点は取らせない。この前提で暗記に入ると有利になります。
Step-4:作問進化の狙いと望ましい学習行動
作問進化の狙いを想定 | 望ましい学習行動 |
---|---|
広範な知識範囲の確認:定番論点を基にしつつ、準定番論点の出題で範囲を広げ、現場対応力や情報感度も評価。最新技術(DX、AI等)の知識を試しており、基礎だけでなく実務知識の重要性も問う。 | Retrieval Practice(想起練習):学んだ知識を繰り返し思い出す練習で記憶定着を強化。過去問や模擬テストだけでなく、定期的に学習内容をクイズ形式でセルフテストすることが有効。 |
記憶ではなく理解の評価:MTF形式などで、暗記だけでは正解しにくく、論理的な理解を求める問題設計。例えば、QRコード決済やクラウド、セキュリティの用語の理解が必要で、単なる暗記では対応できない問題が多い。 | 螺旋学習・間隔反復:同じ論点を複数回に分けて復習し、時間を置いた後に知識を深める。新しい年度に再度同じ論点が出題される際、以前の学習から発展的な視点や新知識を上積みする方法が効果的。 |
受験テクニックの排除:MTF形式で「正誤判定」を要求することで、勘で解くことを防ぎ当てずっぽうを抑制。難易度の異なる年の混在により過去問暗記だけでは得点が伸びないように設計。 | 外部情報収集・モニタリング:最新の技術動向やIPAのガイドラインなどを定期的にチェックし、実務直結型の問題設定に対応。試験後もリカレント教育を意識した外部情報を習慣的に収集することが重要。 |
生成AIを使うと大量の最新情報を同時処理して、解像度の高い仮説を立て、それが本当かの検証に一足早く進める。ここで先手を取るか、年単位で周回遅れの隣のノウハウに依存するかの2択が起きます。
Step-5:単純暗記の「情報」で高得点を取る利点
Retrieval Practiceによる学習は、単に知識量を増やすだけでなく「思い出す力」を鍛えるため、実務でアイデアを応用する際にも効果的である。
実例として、中小企業の診断業務では蓄積した知見を場面に応じて引き出す必要があるが、意識的な想起練習を重ねておくことで情報の検索・活用能力が高まる。
螺旋的・間隔的学習や外部情報収集は、試験勉強後も習慣化しやすい学び方である。これにより「新技術や経営環境の変化」に柔軟に対応できる力が養われる。
こうした学習スタイルは社会人として必要なリカレント教育の一部と重なり、自ら学び続ける姿勢(自己調整学習)が身につく。実際、社会人の継続学習は職業能力向上に直結すると指摘されている。
高度な正誤判定問題や応用論点に取り組むことで、曖昧な知識を検証し、論理的に判断する力が鍛えられる。これらのスキルは企業診断業務での「問題分析力」や「提案力」にも直結する。
教育心理学の視点では、間違いを訂正しながら学ぶこと自体が学習効果を高め、将来の新しい問題へも汎化できることが示されている。
試験委員がその作問技術を高め、暗記の「情報」でそう易々と高得点は取らせない。それは一定範囲まで単なる意地悪ですが、そこを超えると教育心理学上のメリットだらけになります。
今日のまとめ
これから4回続く「情報」全145マークの解説では、論点別×古い順から解き進む。そうやって試験委員の作問進化の狙いを知ると、来る「2次」もR2→R6の順に解き進む一択になります。