
スクールの機先を制して4事例の答を見通すと、その知識偏重ヘタクソ解答に昨年まで一喜一憂した自分が、愚かに思える。そこでスクール依存おベテがなぜことごとく答を外すのか、今日から4回に分けて振り返ります。

おベテとふぞニ共通するのは、なけなしのオツムで過去問から学んだパターンをそのまま当てはめようとすること。
しかし今年の新作事例も、その決めつけ癖を逆手に取る設計。“覚えたワードを置けば点が入る”時代は終わっていた。
「企業理念の再定義」とは、過去問の暗記こそが全てのベテふぞではとても解けない超難問。
Mission・Vision・Valueの3ステップを頭に置かないと答が乱れ、“出題者は意図的に過去問の延長線を断ち切る”ことを示す良問に。
事例Ⅲ与件に「在庫を持てない」と明記されているのに、つい“マスカスタマイゼーション”と書きたくなるのがおベテの始まり。
どうみてもそう書きたくなるように誘導し、少し離れた別の場所にその答を禁じる制約条件がおかれることにおベテが気づくのは、毎年合格発表の数日後になる。
試験委員の発動スキルが「過去問封じ」であることが徐々に広まり、極端に過去問依存と思えば、全くかけ離れた超絶方向にひた走るスクール指導が、ベテの原因とわかる。
試験委員が問うのは、与件と制約を読み取り、施策と効果を筋道で語る思考の質であり、スクール頼みの量稽古が事故の素になる。
【R7事例総括①】事例別3大トラップ~事前に気づくか、気づかず通過
1人が当たりくじを引くとき、隣の4人が必ず涙にくれるガチャ試験。おベテがどう不合格フラグを立て、自らそれを回収するまでの一部始終を、AIが苦笑いしながら解説します。
事例Ⅰ:事例Ⅰはマーケのように、事例Ⅱは組織のように
事例Ⅰでは、第1問と第2問が一見マーケティング的な問い方をしており、顧客接点や強みの訴求など、事例Ⅱで出題されがちな軸が前面に押し出されていました。このため、長年の学習で染みついた「顧客層を明確にし、差別化の強みを訴求し、リピートを高める」といった定型フレーズで決めつけてしまいがちに。
しかし、事例Ⅰの根幹は組織・人材・理念といった内部マネジメントです。そして既存の主力事業から新規事業(木製知育玩具などのBtoC領域)に踏み出す局面では、営業チャネルだけでなく、部門の役割や意思決定の軸そのものが変わるため、従業員に対する方向付けが問われるのです。
採点者は、顧客視点を並べるだけでなく、そうした組織側の変化を頭に置いた解答を好み、ここが最初のトラップになります。
一方で、受験者側は第1問・第2問に文字数を割きやすく、与件内の根拠を大量に貼り付けることで安心したくなります。ただし、第3問と第4問こそが事例Ⅰの本丸であり、とくに第4問は企業理念の再定義という抽象統合の問いでした。
ここではMVV、すなわちMission(不変の存在意義)、Vision(到達すべき将来像)、Value(届ける価値)の3層で理念を再整理し、組織全体をどこへ向かわせるかを述べることが期待されたと考えられます。こうした問いは、根拠のコピペや短期的な販促策では答えられず、事業転換と人材の方向付けを結びつける言語化が不可欠です。
したがって、冒頭で時間を費やした受験者ほど、肝心の理念再定義が抽象的な「意識共有」「社員教育の徹底」といった画一表現に落ち、独自性に欠ける答案となる危険が高まりました。
採点者から見ると、理念再定義の答案には、経営者視点と従業員視点の両方が滑らかに含まれているかが読みやすさの指標になります。たとえば国産材の活用で地域の子どもの成長に貢献するというMissionを据え、その具体的な到達像として、木育や体験販売を通じて市民にブランドを浸透させるVisionを示し、さらに親子の安心感や長期愛用を実現する製品価値をValueとして明文化する構成は、組織全体に向けた旗印と個々の現場施策がつながっています。
このような答案は、単に「理念の共有が重要です」と書いたものに比べ、なぜそれが必要なのか、従業員が何を基準に判断すべきなのかという因果の筋道が明確です。よって事例Ⅰでは、第1問から解き進む手順をあえて罠に嵌め、後半に本質的な抽象化課題を置くことで、構造的思考と言語化能力をふるいにかける狙いがあると考えられます。
ここ最近AI試験委員が推すのが、メガベンチャーやスタートアップが創業→成長期へと一皮剥ける時に必ず通るMVV。しかし試験合格が目的化した古き良きJTC勤めのおじオバ相手の課金に夢中なベテスクールには、全く未知の知識の様でした。
事例Ⅱ:加点基準はキーワードの量より質へ
事例Ⅱは、サービス事業(スポーツケアやボディメンテナンスのような領域)における顧客獲得と関係維持が主題でしたが、今年は配点と文字数の設計そのものがトラップになっていました。第1問は150字と長い一方で配点が低めに設定され、第4問は100字と短いのに高配点というアンバランスが見られました。
受験者が「字数が多い=高得点だから丁寧にやるべき」という昔の経験で判断すると、前半に時間を費やし、後半の得点源に手が回らなくなります。採点者の立場で見れば、これは優先順位付けの素養を見たいということです。
実務でも、すべての課題に同じ熱量で提案を詰めるのではなく、経営インパクトが大きい論点から時間と説明力を集中投下する必要があります。この姿勢が答案の時間配分として再現できているかが問われたと考えられます。
第2問では「サブスクに続く価格戦略」の意識が促され、需要平準化やピーク帯の混雑解消といった課題を出発点に、価格とサービス設計の工夫を問う形になっていました。
一例として、夜間帯の集中による待ち時間やスタッフ負荷を抑えるために、日中・平日枠の利用を促す価格やコースを設ける提案が考えられます。また、常連の競技選手とライトな新規客では求める価値が異なるため、割引やメニュー構成を分けることで、双方の満足度を高めつつ作業負荷をならす狙いが示せます。
ここで採点者が読みたいのは、単なる「ダイナミックプライシング」という用語ではありません。むしろ、誰にどの時間帯でどういう価値を届け、店に何が起きるのかという流れが、具体的な対象・施策・効果の順で記されているかです。流行語を置くより、需要の山をどこで削り、どの層の満足で売上を下支えするかを、細かい描写で書けた答案が評価されると考えられます。
第3問では、長期的な関係性を築くために蓄積すべき顧客情報が問われました。ここでのポイントは、顧客の年齢や来店履歴といった事務的な属性ではなく、施術時の会話内容や不安の解消プロセスなど、心理面に踏み込んだ接点情報が重視された点です。
競技者であれば大会前のコンディションや痛みの部位、一般顧客であれば慢性的な疲労や睡眠の質に関する悩みなど、心身の状態を聴き取り、担当者間で共有する運用が想定されていました。これにより、次回来店時には前回の感覚・観念的なニーズを踏まえた提案ができ、安心感と継続利用につながります。
採点者側としては、ここを「CRMで管理し、データを活用する」といった無機質な表現だけで済ませる答案は、与件が示した強みである“心のケア”という価値を踏まえていないと判断しやすくなります。言い換えれば、単価を上げる・稼働率を上げるといった数字の工夫よりも、顧客の安心と信頼を積み上げる具体的なプロセスを描くことが、事例Ⅱの採点で読みたい軸だったと考えるべきです。
第1問150字15点⇔第4問100字30点。つまり1字あたり配点ウェイトを3倍に広げたのは、キーワードの量より質への転換が狙い。これまで下手なキーワードを数撃てば当たるクニヒコを引きずる「事例Ⅱ」に、歴史的大転換が訪れます。
事例Ⅲ:ダメダメC社程度のトラップにひっかかるおベテはダメダメ
事例Ⅲでは、ものづくり企業を題材に、生産計画の乱れや技能依存のリスク、品質保証体制などが問われました。今年特に特徴的だったのは、設問の多くが60字といった短い字数で指定され、そこに原因・施策・効果を1文にまとめることが求められた点です。
60字は、長文としては短いものの、1つの課題に対する打ち手と期待効果を詰め込むには十分な長さです。その結果、箇条書きのように複数案を並べる手法は不利になります。なぜなら箇条書きは、因果を深掘りせず手段を羅列する形になりがちで、採点者が読み取れる「なぜそれをやるのか」が薄くなるからです。
採点時には、課題を明確にし、その課題にぴったり合った施策を書き、その施策でどのように改善するかを最後に示す1本の線が、最優先で評価されると考えられます。
さらに、第3問では納期短縮が問われましたが、与件には「製品在庫を持たない」「多品種少量生産」「個別仕様への短納期対応」という制約が明記されていました。
これに対し従来スクールが展開してきたⅢ指導では、従来の大量生産型の解法、たとえば在庫を先行で積み上げてリードタイムを短縮する、マスカスタマイゼーションやデカップリングといった知識で差別化しようとしがち。しかし在庫を積めない環境で在庫前倒し案はそもそも機能しないため、こうした回答は現場の前提を無視していると読まれます。
採点者は、在庫ゼロを前提とした工程管理の見直しや、部材手配のリードタイム短縮、計画精度の向上による手待ち時間の削減といった、現場運用に近い改善を優先して拾いやすくなります。これは「制約条件を守ったうえで、どう短納期化するか」という問いであり、過去に出た生産管理ワードだけでは回答できない設計でした。
第4問では、食品用途や医療用途の顧客を相手にしていく上で、品質保証体制がどのように変わるべきかが問われました。この問いは、品質・コスト・納期のQCDを並列に語る定番スタイルを狙い撃ちしており、特に品質、すなわち安全性や衛生、トレーサビリティの確保が最優先であることを読み取れるかが鍵でした。
繊維くずや異物混入を防ぐ設備管理や、検査記録の保存ルールの厳格化、工程ごとの責任者配置と教育など、品質を保証するための体制をどこまで具体化できるかで評価が分かれたと考えられます。
逆に、コストを引き下げるとか、納期をさらに短縮するといった論点に逃げた答案は、品質要件に正対していないと見なされるリスクが高まります。これは採点者から見ると、用途ごとの要求水準を正しく理解しているかを短い字数で問う巧妙な確認であり、特定用途の制約(たとえば食品なら衛生、医療なら安全性の保証)を拾い、そのうえで自社の工程と結びつけて書けるかが差になりました。
R7の4事例ではⅢとⅣが解きやすいが、いずれも過去問と同じ答をしようとすると所々にトラップが仕掛けられて誤答に誘導されがち。ここは最初から「過去問と同じ答えは避ける」と決めた上位5%のKO勝ちです。
今日のまとめ
今日AIが挙げた事例あたり3つのベテトラップは代表的なもの。まだ他にないかと目を凝らしても、隣のふぞろいのように罠に気づかず通り過ぎても、試験上は同じ「合格」扱いです。